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27.改変・刀剣乱舞

 各本丸へ通達が送られたようすを広間の大型モニターで見届けた審神者は、こんのすけを抱いて執務室に戻った。こんのすけは主の胸でニコニコしていた。

 狐ヶ崎為次はじきにこの本丸にもやってくるだろう。

 広間に集まっていた皆は三々五々解散した。当番がある者は業務に戻り、取り立てて用事がない者は自室へ帰り、あるいは体を動かし足りないと言って鍛錬場へと向かった。

 刀剣男士たちは、三日月宗近の肩や背中を励ますように軽く叩いてから去っていく。

 三日月宗近は浮かない顔で、されるがまままに立ち尽くしていた。

 広間から出ようとしていた加州清光は引き返した。三日月宗近がひとり広間に残ったまま、肩を落としてうなだれているのに気づいたからだ。

 蜂須賀虎徹も、山姥切国広も、歌仙兼定も、陸奥守吉行も、加州清光と同じように三日月宗近のようすに気づいて戻ってきた。

「……どうしたの、三日月」

 加州清光はそっと三日月宗近の肩に手を添え、うつむいている顔を覗きこんだ。

「なぜ、俺のことを誰も怒らない?」

 三日月宗近の声は今にも消え入りそうだ。

「円環を抜けられなかったのは、未来へ進めなかったのは俺の迷いのせいだ。俺がすべてを黙っていたのはこれ以上苦しみたくなかったからだ。それなのに……」

「はぁ? 俺が一発殴ったでしょ! まだ足りないの?」

 加州清光はあきれて言った。

 蜂須賀虎徹が、笑いながら言った。

「円環はあなたのせいではないよ。もう、事情はすべて話してくれたじゃないか」

 山姥切国広が蜂須賀虎徹の隣に来て、言った。

「俺たちは仲間の誰かが独りで悲しんだり、苦しんだままでいてほしくない。それだけだ」

「そうとも。僕たちは一緒に漕ぎ出すために月を待っていたんだよ」

 そう言いながら歌仙兼定は加州清光の隣に立ち、おだやかに微笑んだ。

 陸奥守吉行は広間から見える外の空に向かって、うれしそうに両手を広げた。

「円環は終わったんじゃ。この先どうなるかは三日月にも分からん。楽しみじゃのう」

 加州清光はまっすぐに三日月宗近に向き合った。

「三日月。未来へ通じるのなら、どれも結局は正しい道だった。俺はそう思う。円環を何度繰り返しても、虚しく見えても、それは全部必要なことだった。それが無かったら、俺たちは今、ここに立っていないよ」

「うむ……」

 三日月宗近は目頭が熱くなった。何もかも無駄ではなかったと、必要なことだったと。この俺のあやまちを含めて、そう言ってくれるのか。 

「じゃあ、始めよっか。改変・刀剣乱舞!」

 加州清光は力強く言い、三日月宗近に向かって左の手のひらを差し出した。

 三日月宗近はそれを、数多くの虚しい犠牲の中からようやく目の前に這い出してきた、たったひとつの手のように感じた。


 果てしなくめぐる円環の中で犠牲になった、星の数ほどの刀剣男士たちが。かつてともに日々を駆け、その先で時間遡行軍や検非違使に成り果ててしまった者たちが。その無数の手で、濁流で暗くよどんだ水底からやっと探り当て、混沌とした泥を丹念にかきわけて、慎重にすくい上げてきた、か細い一条の光。


 加州清光の左手と、その先で待っている蜂須賀虎徹、山姥切国広、歌仙兼定、陸奥守吉行に引かれるように、三日月宗近は右手をゆっくりと伸ばした。




    《終》



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