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16.対大侵寇『政府防衛作戦』

 時の政府から再び敵に大侵寇の動きが現れたとの連絡が入った。

「政府からの入電を確認しました。読み上げます。……これは……なんと……」

 こんのすけは緊張したようすで審神者に告げた。

「敵に、再び大きな動きあり。前回の大侵寇を上回る規模。敵数の測定は不可能……時の政府を多方面から侵食する、かつてない動き。検非違使と時間遡行軍の連合軍です。時の政府を壊滅するために、第三勢力と歴史修正主義者が一時的に連合を組んだと思われます。政府はこれを、大侵寇の一環として認識。今後の状況次第では、各位に援軍派遣を要請する。それに備え戦力を拡充、配備せよ。以上」

 検非違使と時間遡行軍が連合を組んだと聞いて、加州清光と審神者は目を見合わせた。検非違使が来ることはあらかじめ予想していたが、まさか連合軍とは。

「来たね……」

 加州清光が緊張しながら言うと、同じく緊張したようすで審神者は「うん」とうなずいた。



 今回の対大侵寇は時の政府により『政府防衛作戦』と名づけられた。

 それに備えての強化プログラムが始まったが、数日もしないうちに時の政府から緊急入電があった。

「政府の緊急防衛システム、崩壊寸前。早急の援軍を乞う。政府が潰えれば、諸君らの本丸も敵に蹂躙されよう」

 再びモニターに現れたクダ屋からは、相変わらず感情が読み取れなかった。

 こんのすけは非常事態を宣言し、こんのすけからの情報と指示は再び本丸全体に即時共有されることになった。

 どの本丸にも動揺が広がった。強化プログラムの進行はまだ不十分だ。

 入電と同時に、本丸を取り囲む景趣はがらりと変化した。花も緑も、暗くよどんだ紫色の空に沈んでいる。

 三日月宗近はそのまがまがしい色の空を見上げながら

「……再び、黒き月が訪れる」

 と独り言ちていた。

 こんのすけの号令で政府防衛作戦の展開が始まった。

 防衛ラインは防人作戦と同じく、前線・中央・最終の三重に配置された。この作戦フィールドの状況は広間のモニターでも共有された。戦況不利を示すレッドラインが三重の円になっている。その一番内側には、時の政府らしき建造物のシルエットが見える。

 加州清光は執務室で専用モニターを見ながら言った。

「うん、見込み通りだね」

 審神者は不安になって胸元をつかみ、加州清光を見た。モニターを見つめる加州清光の横顔は静かで、落ち着いている。審神者はやがて覚悟を決めた。

「加州……必ず帰ってきて」

 加州清光は微笑んだ。

「うん。任せて」

 正直、加州清光も内心では不安だったが、自信のある振りをした。それが自分の責任だと思った。加州清光が政府への潜入調査を提案し、そのために審神者と何度も話し合いを重ねてきたのだから。



 政府への援軍として早急に部隊が編制された。援軍は近侍を編成できない。近侍を厚藤四郎と交代し、加州清光は第一部隊長となった。

 出陣する直前、加州清光は三日月宗近の居室を訪れた。

「三日月、頼みがある」

 加州清光は言った。

「今度の大侵寇では本丸にとどまってほしい。俺は、時の政府の本部に潜入する」

 加州清光の言葉は三日月宗近をひどく驚かせた。

「潜入だと?! 一体、どうやってだ」

「防衛ラインは前の大侵寇と同じで、三重になってる。最終防衛ラインの内側に時の政府がある。そこへ行ってみて、跳躍経路の入り口を探す。敵が政府を攻撃するどさくさにまぎれて入り込む」

「……なんという……危険すぎるぞ」

 三日月宗近はあきれかえった。

 加州清光は軽い調子で言った。

「まぁ、なんとかなるでしょ」

「なるわけがないだろう。やめておけ」

 三日月宗近は加州清光の肩に手をかけて真剣に言った。

「けど、時の政府が一体なにをやってるのか、知らないと未来に進めない。あんたは何も話してくれないし」

「………」

 それを言われてしまうと、三日月宗近は何も言いかえせなかった。

 加州清光は言った。

「三日月、俺の代わりに最後まで本丸を守ってほしい。それでもし、俺が無事に戻れたら、今まで隠してたことを全部話してよ。一緒にどうしたらいいか考えよう。今度こそ、円環を抜け出すために」

「………」

 加州清光を正門まで送り届け、その出陣を見送ったあと、三日月宗近は正門の内側に立ち尽くしていた。

「またこの時が来てしまったか……」

 強い風が三日月宗近の髪を乱し、装束のすそをはためかせる。

「だが、この流れはまだ知らぬ。はたして、新たな月となるか。それとも……」

 三日月宗近は腰の刀にそっと手を添え、暗くまがまがしい紫に染まった空の向こうを見た。

「……またしても混沌を招くのか」




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