番外編:失った少女は
話の時間軸的には二話の後、華ちゃんたちの話です。
今回少し鬱展開と描写は少ないですがグロが入りますので(直接的なものではない)ご注意下さい。
わたしには一番大事なものがあった。
それはずっと遊んでいたくまのぬいぐるみでもなくて。
気に入っていたお花の髪飾りでもなくて。
他の人にソレを言ったら、全員にあり得ないと笑われたけど。
だけど、わたしの一番は昔から変わらず
"ソレ" だった。
ベチャベチャと、不快な音が耳につく。でもそんなことよりも、目の前の彼の方が気になった。
「・・・和、くん・・?」
さっきまであんなに楽しかったのに。ドキドキして、泣きそうなくらい嬉しかったのに。何かを言おうとしてたんじゃないの?ねぇ、だから
「・・起きてよ、和くん・・。もう、こんなとこで寝てたら風邪引いちゃうよ?
まったく、和くんったら・・」
しょうがないなぁ。
乾いた声だ。可愛くない。こんなの、和くんの前では見せたくなかったのに。
周りがだんだんうるさくなって、わたしと和くんの邪魔をする。
ああもう、みんな和くんは見ないでよ。和くんは恥ずかしがり屋さんなんだから、大勢の人の前でなんて話せないんだよ?
あ、でも、もう動かないんだっけ。
「すいません、被害者のお知り合いの方ですか?
申し訳ありませんが、遺体を運ばなければならないので離れてもらえませんか?」
「・・・・ふぇ?」
何を言っているの?なんで、和くんとわたしを引き剥がそうとするの。やめてよ、離して、和くんっ、
「わたしを一人にしないでよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「・・っ!おいっ、お前も彼女を抑えろ!」
「くっ、力が強いっ!落ち着いてくださいっ!!」
その日、わたしの世界から"ソレ"は消えた。
ヒソヒソ
「三浦さんのとこの息子さん、亡くなられたんだって?」
「可哀想に・・・、まだ17才だったのに。」
「トラックの運転手は今も逃走中らしいわよ?」
「やだぁ、怖いわねぇ」
光の届かない閉めきった窓の向こうから聞こえる雑音。止めろ。お前らごときがあの人の名前を口にするな。
ぎゅうっと、自分の膝を抱え込む。あれから、どれくらい時が経った?
葬式も終わって、先生や友達が家に来てわたしに大丈夫?元気だして、って馬鹿の一つ覚えみたいに言って帰って、プリント届けての繰り返し。
数日学校に行かなかっただけなのに、なんでみんなわたしに構うの?なんで、みんな和くんには何も言わないの?
もう和くんには二度と会えないんだよ??
その事実をまた思い出して、再び涙が零れ落ちる。
鼻を啜り上げていると、こんこん、と軽いノック音が部屋に響いた。
「・・・・華ねぇ?あの、・・」
「・・琴乃ちゃんか、うん、どうぞ。入って。」
和くんの年の離れた妹さんである琴乃ちゃん。和くんが一番溺愛していた女の子で、わたしも昔から可愛がっていた。彼女も、態度では示さなかったけど、彼のことが大好きだったからこの件があってかなりショックを受けているんだろう。
だから、わたしは彼の分まで彼女を安心させなきゃ・・そう思ったけれど、彼女の様子がいつもと違った。
「・・琴乃ちゃん?」
「・・・・・あ、・・ぅ、・・あのな、華ねぇ」
聞いてほしいことがあるんだけど。
全てを聞き終える前にわたしは、衝動的に彼女の細い首に手を掛けていた。
「・・・ぐっ、かはっ・・ぐ、るじっ・・」
「うるさいっ!!お前がっ、お前さえいなければ和くんはっ!!!!」
首の肉に指が食い込むほど、彼女の首を絞める。彼女は首からわたしの手を引き剥がそうともがくけれど、所詮は小学生の腕力、しかも普段からパソコンしかいじってないためわたしの敵ではない。
彼女の目から生理的な涙が出てきて、泣き顔があの日のジェットコースターに乗っているときの和くんに似ていた。普段似てないくせにこういうときだけそっくりなもんだから、絞めている手が少し緩まってしまったけれど、彼女がした罪を思い出せば、そんな些細なこと気にするまでもないと再び首を締め上げる。
あと少しで彼女は×ぬはずだったのに、それは第三者の手によって阻まれた。
「・・・っきゃ!!」
「・・・がはっ、・・はぁはぁ、」
「・・・ふぅ、危ないところだったね。大丈夫かい?」
そいつは、わたしが見たこともない知らない男だった。
「・・貴方誰ですか、不法侵入で訴えますよ。」
「あー、それは困るかな。じゃあ僕は正当防衛ってことで。」
「・・・。」
わたしが睨み付けても、その男はただ苦笑するだけだった。それがわたしには馬鹿にされているようでますます苛ついた。
「あと、彼女に当たるのはやめて貰えないかな?
彼女はただお兄さんを助けたかっただけで、本当に悪いのは実験に失敗した僕なんだ。」
「・・実、験・・?」
嫌な予感がした。
「そう、あのときトラックに乗っていたの
─────────実は僕なんだよね。」
一気に駆け出して、無造作に机に置いてあった鋏を掴んで男の首もとを狙う。しかし、男はそれをひらりとかわしてわたしの両腕を自身の手で一つに縛り上げた。
「おっと、二度も同じ手は食わさせないよって・・自業自得か。」
「×ねっ!×ね×ね×ね×ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「ごめんねぇ、君のためにもそうしてあげたいのは山々なんだけど、まだ僕にはやらなきゃいけないことが沢山残ってるからね、
ほんとはあんまこの手は使いたくなかったんだけど・・・
あっ、琴乃ちゃんさっき渡したやつ、使ってくれる?・・・・・大丈夫、それはちゃんと成功したやつだから。・・うん、お願いね。」
「・・・っっっ!!?」
バチチっと静電気のような音とともに首筋に痛みを感じて、わたしの意識はブラックアウトした。
視界が明るくなって、視界に入ったのはあの忌々しい男だった。
「あ、目覚めた?大丈夫?どこか他に痛みとか感じてない??」
「・・・・ここはどこなの。」
「んー、その様子だと大丈夫そうだね。あ、気絶している間、勝手にで悪いけど君の体を軽く拘束させてもらったよ。
あのままだと暴れて話を聞いてもらえなさそうだったからさ。」
見ると、わたしの体は磔のように手足を金具で止められていた。
「・・・。」
「そんな目で見ないでよ。仕方なかったんだって。」
「・・人殺しが何を・・、」
「うーん、このままだと本題に入れなさそうだからねぇ、
・・・琴乃ちゃーん?例のアレの電源着けてくれる?」
カチリと何かのスイッチが入り、目の前に置いてある色々な機械やコードなどががゴチャゴチャとついたパソコンのようなものの画面から光が着き、そして明らかにこの場には場違いな陽気な音楽が流れ始めた。
「・・馬鹿にしてるわけ?」
「違う違う、話すより見てもらった方が早いかなって思っただけさ。
ねぇ、琴乃ちゃん?」
「・・・。」
「ありゃ、黙りこんじゃった。まぁ仕方ないよね、あんなことがあったわけじゃあ。
でも、こっちも時間がないからさぁ。
まぁ簡単に説明させてもらうと、今、このゲームの中にはね、
今回の事件の被害者、"三浦和也"くんの魂が入ってるんだ。」
画面には、二人の男が見つめあっている絵が映っていた。
鬱展開やグロは一旦ここで終わります。最近bl小説としての行き先が不安になってきた方、大丈夫です。これはちゃんとblです。これからもよろしくお願いします!




