ありがとう
真っ白だ
眩しいように白く霞んで何も見えない。
ああ。でもなんか、落ちつくなぁ。
どれくらいそうしていたのか、何かが香った。
寝てしまっていた?
夢だったの?
「起こしてしまったか?」
離れたところから、グレンの声がする。
この香りは、あの花?
なんだか身体がすっきり軽い、でも声をだそうとするとはりついたような違和感。
水を飲んで一息、水を持ってきてくれたグレンが濡れタオルで顔を拭いてくれた。
「、、ありがとう」
お姫様みたい、っていうか、病気みたい。
私がめぐらせた視線に気づき、グレンがいう。
「コリの茶だ」
「うん、いい匂いだね」
「飲むか?」
卓の上には、先ほどのパウンドケーキがみえる。
もう食べたのかな、口に合ったかな。
「ピピンがこの茶がケーキに合うと勧めてくれた。とても美味かったそうだ。」
「あ、良かった!食べてくれる?切るよ」
寝かせるのは諦めよう。
私も食べたいな、でも夕飯かなぁ。
「私が一番ではないのは残念だが」
聞かなかったことにしよう。
「食事の後にする?今食べて大丈夫?」
「何か持ってこさせるか?良く寝ていたので起こさなかったが、もう夜中だ」
あらら。
最近中途覚醒気味だな、心労かしら。いや、昼間から寝たせいだね、きっと。
「何かあったのか」
お茶とお菓子を前にしても、単刀直入ですね。
「う、、ン。ケーキがね、このケーキ、パウンドケーキっていうんだけど。」
グレンは黙って促す。
「おんなじだったの。覚えてる味とおんなじで」
抱き寄せてくれた胸、すっかり馴染んだ体温と匂い。
「それが、なんか、、ああ、おんなじなんだって思って。」
私は本当に居たんだ。
私が私を忘れてしまったら。
私だけは忘れてはいけないんじゃなかったの?
「なんか、私、幸せで、すっかり私のことを忘れてたの。」
ごめんなさい。
「覚えてても、何の意味もないかもしれないけれど、でもっ」
我慢するな。
その言葉は優しくて、込み上げる涙が、ずっと胸の奥にあった重たい何かを溶かしていく。
ありがとう
私が言った言葉は、ちゃんとグレンに届いただろうか。




