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竜の塔に閉じ込められたお姫様、但し英雄は来ない  作者: 渡辺 佐倉


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魔法使いの集まり2

集会(サバト)は薄暗くて、不気味でそしてひそひそと囁き声が聞こえる。


お姫様はそういう雰囲気が嫌いじゃなかった。

勿論クローバーからするお日様の匂いも好きだけれど、こういう陰鬱で何か沢山のものを混ぜ込んだ雰囲気も好きだと気が付いた。


竜とお姫様が集会(サバト)に到着する。


森の中にぽっかりとできた大きな広場の様な場所だった。

だから竜がきても誰も踏みつけなかった。


「竜だ。」

「めずらしい……」


魔法使い達は口々にそう言った。


「アイシャ。彼女は、今日ここにきているかい?」


竜はそう言った。

アイシャは女性の名だとお姫様はちゃんと知っている。

真実の愛という言葉が頭をよぎる。


呼ばれた人はこの場にいたようで竜をうかがう様にみながら一歩二歩歩み寄る。


「もしかしてお前――」


竜が前足をあげた。


「名を呼んじゃいけないよ。

あなたも呪われてしまう」


竜は言った。

ゴクリと唾を飲み込む。


「じゃあ、“茨の魔法使い”とでも呼ばせてもらおうか」


アイシャと呼ばれた女性は御伽噺に出てくる魔女を絵にした様なくしゃくしゃのおばあちゃんだった。


「それで、茨は何故ここに」

「皆の研究対象になってやろうと思って」

「ふうん。それは愁傷な心がけだね。

それで?」

「竜になった経過をなるべく詳細に文字に起こしておきたい。

記憶が失われても誰かが研究を引き継げるように。

それから――」


竜はお姫様を見た。


「このお嬢さんは何だい?」

「竜の【真実の愛】の相手らしい。

国が置いていってしまった可哀そうなお姫様だ」

「ふうん。それで?」


竜は身もだえる様に震えた。


「少しずつ教育は与えてやれる。

こんな俺でもまだ話せはするからね。

だけどものが足りない。

略奪も考えたんだけど、教育上あまりよろしくない。

彼女に姫君としてふさわしい教養とそしてそれを飾るものを贈りたい」


周りがざわつく。


「いままでそういうことを考えた竜がいたって話は聞かないね。

お前が変わり者なのかそれとも……」


アイシャという魔法使いは言った。


「竜の研究はお互いを守るためのものだ。

だけどこっちは俺個人からの依頼だ。

対価は……。

俺の研究室その中にあるすべてを」


周りのざわつきが一層大きくなった。


「茨さん、あんたあの天才と言われた魔法使いだろう。

その研究資産を全てって」

「どのみちこの体だと壊すのがオチだ」

「手伝うだけでも分け前があるって事か!?

俺は研究資産より、竜のうろこを確認したい。

一体呪いがどう変質するのか研究をしたい」

「あまりに傷つけられると、呪いが進行する可能性があるけどその程度なら大丈夫だろう。

たまに生え変わるし、木に引っかかって取れることもある」


それを聞いた魔法使いは先ほどまでのひそやかさを取り払い、がやがやと話し始めた。


「最終目的は?」


アイシャだけが冷静に聞いた。


「勿論魔法使いに戻ることだけれど、そうだな。

体の形だけでもなんとかなれば随分と楽にはなりそうなんだけどね。

どうせ人間には外から見える姿かたち以外のことはわからないから」


お姫様はその言い方が何故か悲しくなってしまい。

竜に駆け寄って竜をぎゅっと抱きしめた。

そして固い固い鱗をそっと撫でた。

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