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竜の塔に閉じ込められたお姫様、但し英雄は来ない  作者: 渡辺 佐倉


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英雄は今日も来ません

傷物のお姫様を助け出そうとするものは誰もいません。


竜を倒せればいいけれど、そうでない場合、竜が次の真実の愛を求めるかもしれないからです。

お姫様との間に真実の愛は無い?


そんなこと竜やお姫様以外にとってどうでもいい事でした。

自分たちが今まで通りの生活をすることが一番大切だったからです。



だけど、それはお姫様と竜にとっても同じことでした。

お姫様は今の愛する竜との生活が一番大切だったのでそれを壊されることは嫌でした。


魔法使い達に薬草の作り方を教わり、刺繍もできるようになった今、自分の食い扶持位は自分でどうにかできそうでした。


そして竜は勿論、自分が斃されたいと思うことはありませんでした。


* * *


その日は突然来ました。

勿論英雄があらわれた日ではありません。

英雄になりたいと思う人は沢山いても、英雄に実際になれる人はそれほどいません。


夕闇の中お姫様は刺繍をしていました。

魔法のランタンが塔の中を照らしていて刺繍をする分にはまるで問題がありませんでした。


竜は最近人間の姿をとっていることが多いですが、その理由をお姫様は聞いたことがありません。

お姫様は自分のために働いて、服も平民と同じもの皆、彼女がお姫様だということを徐々に忘れていっていました。


彼女がお姫様だときちんと認識しているのは恐らくもう竜だけです。


竜がお姫様の刺繍をしている姿を見て言いました。


「どうやら俺もあなたのことが好きになってしまっていたみたいだ」


お姫様は驚いて顔を上げました。


「それは真実の愛かしら?」

「さあ。まだ俺には分かりかねるね」

「そう。それでは、そうなることを願っていますね」


お姫様は言いました。

お姫様はそう言いながら胸がドキドキしていました。


真実の愛以外についてどう話をしていいのか分からない位には胸が高鳴ってどうしようも無かったのです。


それからもお姫様は竜にとらわれたままでした。

そうして竜とお姫様は国の端っこで静かに暮らし続けました。


真実の愛が見つかったのかは、二人にしか分からない事です。


END

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