第33話 煙管の灰(破られたページ)
風真との通信が途切れ、静寂だけが残った。
耳に残るのは、風真の言葉──
『来るまで、僕が聖明を守るから』
「……守る、ね」
小さく呟いた声が、自分でも驚くほど掠れていた。
胸の奥がざらついている。
苛立ちと、後悔と、わずかな安堵が入り混じって、どうにも整理がつかない。
(笑ってる──?また、あいつは)
風真の言っていた言葉が、頭から離れない。
『辛そうな顔してるのに笑うんだ……』
(……戻ってるのかよ、あの頃に)
誰の助けも求めず、胡散臭い笑顔を貼り付けた、あの頃の姿。
本心を隠して、求められた自分を演じていた、聖明の姿。
守れると思ってた。
距離を取れば、あいつは狙われずに済む──そう信じていた。
でも、それは“俺のため”だったんじゃないのか?
あいつが傷つかないためって言いながら、
本当は……自分が“壊してしまうのが怖かった”だけなんじゃないのか。
「……全部、俺の独りよがりだ……」
重い息を吐いた。
今さら遅い、そんな気もする。
聖明は、もう俺を呼ばない。
目の前で、剣を構えて──本気で拒絶した。
それでも。
(“待ってる”って言ったよな、風真)
その言葉が、唯一の希望みたいに胸に突き刺さって離れない。
脳裏をよぎるのは、診療室で怯え、震える聖明の姿。
自身が言った言葉が、今になって俺の胸を突き刺す。
『俺なんて最初からいらなかっただろ?』
どれだけ後悔しても、なかったことにはできない。
何度も、何度も、何度も──
聖明は言っていたじゃないか。
『独りにしないで』
俺が戻らなきゃ、聖明は──
「……ッ、分かってるよ。分かってる……っ」
低く、吐き捨てるように呟いた。
自分の中に、まだ“あいつに触れる資格”があるかどうかは分からない。
……今すぐ、会いたい。抱きしめたい。
でも──
『二度と、私の名を呼ぶな。セレスティーナ・ラファベル』
聖明の声が、脳裏で木霊する。
───俺では……無理だ……。
「……ごめん、聖明……ごめッ」




