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異世界空中活劇!  作者: 八針来夏
第三章『陰謀編』
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第十一話『長い手の敵』

『速度合わせ。格納庫を開く。……メーコ、ワイヤーを伸ばせ。シオンが掴むと同時に巻き上げを始めろ』

『はぁい。どうぞいらっしゃい、シオンくん。エクエス様も、もう中やよぉ』


 僕はギュスの指示通りにザスモーの速度を縦横無尽(フラーヴィ)号に合わせると、前方から垂れ下がってくるワイヤーを腕で掴む。

 そのまま起重機の巻上げを受けて、飛行中の船の中へと着艦。


「ただいま」

「お帰りなさぁい」


 僕のザスモーはそのまま船の中へと着地。脚部に発生させた帯磁(マグネイト)の魔術で床と吸着させる。

 メーコちゃんがほわほわと可愛い笑顔を浮かべながら差し出してくれる飲み物を口にしながら……僕は、10名近くの冒険者チームで一杯になった格納庫を歩き、道を譲ってもらいながら、ザスモーを専用の機材に固定させて、鋼の四肢と翼から両手足を引き抜いた。

  

『よし、ハッチを閉じる。いい機会だ。ここでエンジンの加速性能もテストしよう。ルコッチャ、場所を教えてくれ』

『そろそろご飯の時間』

『なるほど……飯の準備の炊煙はいい目印になりそうだ』


 全員の脳裏に響くギュスの念話の声に耳を傾ければ、加速Gが僕たち全員の体に圧し掛かる。

 臨時の乗客となった冒険者の皆は、あまり感じた経験のない加速Gを面白がっている。小柄な女性陣は何もしてないのに転がりそうになる自分の体の感覚を楽しんでさえいるようだった。

 さて。

 そうしていると……以前出会った冒険者パーティー……『傷だらけの鎧(スカーメイル)』と『猛攻(ラッシュ)』のリーダーであるレグルスさんとキスカさんが、なにやらエクエスと話をしているようだった。

 僕が近づくのに気づくと、レグルスさんとキスカさんの二人は立ち上がって頭を下げる。


「……君か。今回は本当に助かった」

「危ないところを助けてもらってホントに悪いね。命の借りができた。あたいらでよけりゃいつでも手伝うよ」

「気にしないでください、と言っても無理か。それじゃ、僕らが困っているのに気づいたら手助けしてください」


 僕の言葉に、リーダー二人……のみならず、彼らパーティーのメンバー全員が神妙な顔で頷いてくる。

 こういう場合『別に気にしなくていいよ』というのは彼らの命を軽視していることになりかねない。こういう縁が巡り巡って僕の窮地を救ってくれるかもしれないし。情けは人のためならず、だ。

 ……それにしても先ほどから、メーコちゃんはちょこちょことこまめに動いて、冒険者の人々にお茶を配ったり、野営用の荷物から毛布を取り出したりと細々働いてくれている。こういう気配りしてもらえるのはありがたい。


「ありがとう、メーコちゃん」

「ええんよぉ、ウチはシオンくんやエクエス様みたいに戦うこともできひん。ギュス叔父さんみたいに操縦できるわけやあらへんもん」


 そんな風に言っていると、同様に飲み物に口をつけていたレグルスさんとキスカさんがコップを掲げて言う。


「……いや、戦闘直後の暖かな飲み物は、心と体に染み入る」

「あたいも感謝するよ、お嬢ちゃん。あんたに幸運がありますように。……これで酒があれば完璧ってところだね」


 そのあと冒険者の人々から口々に掛けられる感謝の言葉にメーコちゃんは少し照れくさそうにしつつも、嬉しそうにはにかんだ。

 戦場で戦うだけが能じゃない。こんな風に暖かなお茶一杯が、僕の戦場帰りで荒ぶっている心身を落ち着けていくかのようだった。




「ところでエクエス。このままルコッチャの故郷の、高地人(ハイランダー)の里に向かうのか?」

「ええ。今しがたお二人とも相談しました。怪我人はいますが、命の危険がある重傷者はいないそうです。……申し訳ありませんが、こちらも急ぎなので」


 エクエスの言葉にキスカさんが頷く。


「あたいら冒険者が死地から生還した事を思えば、この程度怪我のうちにも入らないねぇ。

 あんたたちが連合の危機を解決しようとしているんなら、行動の妨げにはなりたかないのさ」

「……ま、どっちみち俺達も高地人(ハイランダー)の里には向かうつもりだった。渡りに船なんだ」


 ふぅむ、と僕は頷きつつ、格納庫の床に腰を落とした。

 

「ところで……ワイバーンはああも積極的に人を襲うものなんですか?」

「今日はとっても変」


 そう思っていると――操縦席に続くクソ狭い通路からルコッチャの長身がとても狭苦しそうにしながらやってくる。

 彼女はなぜか僕の傍に座った。僕の頭の上に頬を載せようとする。距離感近すぎるだろ?! 一歩後ずさる僕にまた一歩詰めながら言う。


「獣たち、みな血に飢えておかしくなってた」

「……タイミングができ過ぎている。……エクエス。高地人(ハイランダー)の人々が、時折岩塩を持ってくることは知られていたんだっけ?」

「ええ。獲物が余り取れず、換金するものがない場合は岩塩を持ってきたこともあるそうです。

 ルコッチャが見つけた岩塩鉱床は新しいものですが、それ以外でも細々とは取引があったそうですね」


 バルロフ卿が警告し、そして連合を苦しめる商人、カマス(バラグーダ)のラゴン。

 その男が連合の塩取引を独占し、経済的に困窮させる事が目的なら……塩の自給を可能とする、岩塩鉱床の発掘を邪魔することはありえそうだ。

 

「用意周到な相手なのは、間違いなさそうだな」

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