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異世界空中活劇!  作者: 八針来夏
第二章『連合編』
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第十七話『本日のおすすめ商品(上)』

 2チーム合同での共同ミッション。

 しかし、レグルスさんもキスカさんもどっちが二つのチームのリーダーを務めるのかで揉めることもなく『じゃ、暫定トップはレグルスで』『ああ』とあっさり決定した。

 陣形は偵察、斥候を努める両チームのメンバーが先行。

 レグルスさんが最前線に、その背後をキスカさんともう一人の軽装の男性が固め、中心に僕ら3人の護衛対象。最後列にレグルスさんの相方である重装騎士の人が抑えている。敵に両側から包囲されても、前後に敵の圧力を受け止める重装甲の人がいるので十分に戦えるだろう。


「想像より、ずっと安定してる」

「だな。さすがギルトの推すチームだ」

「末端がしっかりと仕事をしてくれて喜ばしいですな」


 戦闘が始まると同時に僕はレグルスさんに素早く怪力(マイト)、鋼筋鉄骨(ハードボディ)を掛ける。

 もし負傷すれば即座に治癒(キュア)を掛けようと集中するが、全く必要はなかった。


「おおおぉぉぉ!!」


 大盾を構えたレグルスさんが雄たけびと共に突進し、巨漢の怪物……牛面人身の魔物を殴り付ける。

 石造りの床が軽くめり込むような踏み込みと殴打の一撃。耐えかねたように魔物が後ろへと後ずされば、レグルスさんの背後にいたキスカさんが素早く動いた。中央で陣取るレグルスさんの脇をすり抜け、垂直の壁を駆け抜けるほどの軽翔さで回り込み、素早く剣をふるって両足の後ろ、アキレス腱を斬り付ける。がくりと膝を突く魔獣。

 痛みに対する悲鳴と小癪な敵に対する激怒。双方を意味する魔獣の絶叫。

 だがそれを黙らせるように、レグルスさんの両肩を足場に軽装の男性と双剣士が跳躍、頭に飛びかかり斬撃を加えていく。


「グモオオオオオオォォ!!」


 冷酷にも狙いは両目。腱を斬られ、目を潰され視界も封じられて、最早怒りと生存本能のまま両手に抱えた戦斧を振り回すだけの相手など敵ではない。

 弓使いの女性が、あからさまに『猛毒です』と言わんばかりの毒々しい液体にまみれた鏃の矢を弓につがえて放つ。


 手馴れている。


 そう評するのが一番相応しいだろう。まさに手順の決まったやり方で獲物を処理するような無駄の無さだ。

 暴れる魔獣に一気にトドメを刺すのではなく、体力が尽きるのを待つ。その間も彼らチームは魔獣の増援が来る事を警戒していた。

 無駄に暴れることで体力を失っていき、力の弱まった魔獣の脳天へと矢が突き刺さる。じつに、あっさりと仕留める。


「よし、周辺に敵影はなし。お疲れさん」

「治癒(キュア)をかけます。怪我した方は?」


 レグルスさんの言葉と共に、僕は宣言するがキスカさんが大丈夫、と言うように手を振る。


「大丈夫大丈夫。安全を取って比較的難度の低い、浅い階層を探索しているからさ」

「本来はもっと深い階層を?」

「うんそう。それに坊やの支援魔術も適切だったし。……ねぇ坊や、やっぱりあたいらのチームに入る気はないかい?」

「そういうのはまたの機会にしろ、キスカ」


 レグルスさんがそう言いつつ、鎧の面頬を跳ね上げる。

 僕に向け、無骨な顔立ちに浮かべる表情はことの他穏やかだった。


「とはいえ。先ほどの支援は助かった。この仕事は長いが、頼れる護衛対象など正直初めてでな。キスカの気持ちも分からなくもない」

「チームに参加したくなったらいつでも歓迎だよ、あたいのような綺麗なお姉さんが一から教えてあげよう」

「個人的には実に興味がありますけど、やらなきゃならない仕事が沢山ありまして」


 僕の言葉にキスカさんは『ありゃりゃ、振られちゃった』と舌を出して笑ってみせた。

 さて。そろそろ良いかなと思い、僕は全員に振り向いた。少し広めの場所でなら、そろそろ仕事にうってつけだろう。


「ギュス」

「やっとか」


 僕の言葉に、ギュスは背負っていた荷物を降ろす。


「皆さんは周辺警戒をお願いします」

「ああ。了解だ」

「任せときな」


 こくりと頷くレグルスさんとキスカさん、二人は仲間に指示を飛ばして周辺の警戒を開始する。

 さて、今回のプレゼンテーションはバルロフ卿が相手だが、しかし後で現役の冒険者である彼らの意見も聞きたいな……。


「で、この……骨組みで出来た球が、貴方のいう『冒険者を支援するアイテム』ですかな?」

「ええ」


 あ、周りを固めてくれている人たちが興味深そうにこっち見てる。

 とりあえずコントローラーを手に取る。デザインは某携帯ゲーム機を参考にした。左側にスティック。右側にスイッチ。真ん中が液晶になるアレだ。


「マーカードローン、アクティブ。操作方法はダイレクトコントロール。……まずは一機を起動させます」


 音声入力で起動をさせれば、ぶぅん……と静粛性に富んだローター音と共に空中へとドローンが舞い上がる。


「おお。飛行しておる。これは大気属性の魔術ですかな?」

「後で竹とんぼあげるので遊んでみてください。それで大体分かりますよ」


 そして空中で微動だにせず静止。僕は手元のコントローラーに表示されたカメラに視線を落とした。


「まず。コレをご覧ください。このドローンは遠隔で起動可能な偵察機械です」

「遠隔で……偵察、ですかな」

「ええ。ま、実際に動かしてみましょ」


 僕がスティックを倒せば、その方向にドローンがゆっくりと起動を開始する。

 

「○ボタンは小型化された魔術機関が作動します。僕はこれを光学迷彩(クローク)と名づけました」


 ○ボタンを押すと同時に、光を屈折させ、視覚から消失するドローン。


「き、消えた?」「マジかよスゲェ!!」

「もう一度○ボタンを押せば解除されます。ただし内臓された魔石燃料の消耗が激しくなるのであんまり多用はできません。敵に見つかりそうになったら即使ったほうがいいですね」


 バルロフ卿は髭をしごきながら軽く頷く。


「ふむ。これで魔獣の視線から逃れるのですな」

「もっとも音や熱で獲物を確認する魔獣もいるそうですから、過信は禁物でしょう。では、偵察を行います」


 そのままスティックを倒せば、人が走る程度の速度でドローンが空中を滑るように移動する。

 

「×ボタンは操縦を自動で行うオートモードへの切り替え。

 このボタンを押した場合、自動で前進。もし分かれ道があった場合は一時停止を行い操縦者の指示に従います」

「ほほう。面白い……わしもやってみて構いませんか?」

「ええ。最初からそのつもりです」


 頷いてコントローラーを渡せば、バルロフ卿は目をキラキラさせながらコントローラーを手に取る。


「おや。右下になにやら自動で地図が表示されておりますぞ?

 これは……自動で進んだ場所の地図を記録しておるのか?!」

「マッピング機能を搭載しています。言葉通り進んだ場所のデータをコントローラーの画像に表示させることも可能です。

 一応3D……立体映像として投影する機能もつけています」

 

 ボタンを押せば、空中に記録されたダンジョンの地図が表示され、自分達の現在位置とドローンの現在位置が表示される。

 なんだかチラチラと視線を感じるなぁ、と思えば冒険者の皆さんが興味深そうにこっちに視線を向けてくる。


「む、モンスターを発見しましたぞ、シオン殿!! 牛型の魔獣。先ほどと同型ですな」

「了解、一時停止しましょう。ちょっと返してくださいね。……皆さん、これから敵を誘引します。前の通路から敵が来るので奇襲の準備を」

「マジかよ」「まー依頼人の指示だ。やってみようぜ」


 僕はなんだかちょっと名残惜しげな様子のバルロフ卿からコントローラーを返してもらうと……今度は□ボタンを押す。

 そうすればまばゆい光が、ちかちかと点灯し相手への刺激を始める。ミノタウロスと呼ばれる魔獣は大口を開けて威嚇し、ドローンを追いかけ始めてくる。僕は画像からマップを呼び出しここに戻ってくるように指示。×ボタンを押してオート操縦に任せる。


「よし、釣れた。皆さん、道の両側へ身を隠してください」

「……うわ、ホントだ。やつ等が走ってくる音がするぞ」

「マジかよマジかよマジかよ」


 レグルスさんは戦斧をがっしりと握り締め、キスカさんは掌の中の火球に魔力を込めて大きく育てていく。他の冒険者達も緊張の面持ちでその瞬間を待った。

 

「う、うう、うわああぁぁぁぁ!」

「レーヴェ、まだ早いぞ!!」


 だが、如何に場慣れした冒険者であっても、じわじわと接近しつつある魔獣の疾走音が与える重圧は相当なものだったのだろう。

 レグルスさんのチームに属する魔術師の女性が、恐慌に駆られてその腕に貯めていた炎を解き放つ。


「ええい、撃て!!」


 レグルスさんの判断はこの場正しかった。未だに完全にひきつけていない魔獣に対して、一斉に攻撃を命じる。

 一撃を加えて怯んだところを武装した人々が一斉に攻撃して片をつける。その予定が完全に狂った形だ。

 それでもキスカさんの放つ魔術と弓兵の射撃が敵へと突き刺さる――が。後ろから二体、更に来る。咄嗟に叫んだ。


「バルロフ卿は右の手前、僕は左奥!!」

「心得た!」

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