転
体が弱くて、なかなか学校に通えなかった私は、友達が少なかった。
恥ずかしがり屋と内気なこともあって、ほとんど人と話すことなく過ごしていた私に、1人の女の子が話しかけてきてくれました。
名前は愛理。
明るくて屈託無い笑顔を向けてくれる。
最初、天使かなって、そう思えてしまうくらい可愛らしくて。
私から仲良くなりたいって思ったら、愛理は私の思いに応えてくれた。
だから、すぐに仲良くなれた。
愛理と仲良くなってからは友達が多くなった。
紗耶香ちゃんに璃子ちゃん。それ以外にも何人か。
これまでと比べたらたくさんの友達が出来た。
そう、それからは早かった。
何もかもが一瞬だった。
愛理と一緒に行ったあの場所。
時々、互いの家に止まっては離れまいとくっついて。
おはようとおやすみにはキスをして。
たくさん遊んで。
「ねぇ、結花って、愛理のことどう思ってるの?」
ある時、璃子ちゃんが私に訪ねてきた。
「どうって?」
「好きなの?」
「す、好きって・・・。もちろん。友達だもん」
「面倒くさいって思わないの?」
「思ってないよ」
それは本心だった。
たしかに最初は馴れ馴れしい子だなと思ったけど、そのおかげで私は愛理と仲良くなれた。
「私は、愛理が好きだよ」
「そう。ごめん、変なこと聞いて」
「ううん。どうしたの?」
そのあと聞いた話は、まぁ、やきもちだった。
「そう。璃子ちゃんも愛理のこと・・・」
璃子ちゃんは私と同様、愛理に救われた身だった。
どこか危なかっしくて、でも、愛らしくて。
「言うなよ。愛理、絶対困るから・・・」
恥ずかしそうにしている璃子ちゃんに私は言った。
「困るなんてことないよ。愛理なら喜んでくれる」
「そうか。そうだな」
「だから」
「ん?だから?」
「私が愛理の前からいなくなったら、愛理のことお願いね」
「なに言ってるんだ?ふふ。おかしなやつだな」
その時、私は親から転勤の話を聞いていた。
遠い、ここからは遠い場所だ。
会おうと思えば、週に一度くらいなら会えると思う。
でも、怖かった。二人の関係が壊れてしまう気がして。
だから言えずにいた。
何も言わず、立ち去ろうとしていた。
でも、
「聞いたよ。私の前からいなくなるってどういうこと?」
どうやら、璃子が話したらしい。
恨みはしてない。むしろ、話せる機会を作ってくれたんだと思う。
「私、引っ越すことが決まったの」
「っ!いつ?」
「来月には」
「どうして?どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」
「私も少し前に聞いたばかりだったから」
「だったら聞いてすぐにいえば・・・よかった・・・のに」
愛理は走っていってしまった。
その目に涙を浮かべながら。
あぁ、私は何てことをしてしまったのだろう。
あんなにも好きだった、笑顔だった子を泣かせてしまった。
すぐに追いかけた。走って、走って、自分が体が弱いなんて分からないくらい全力で走って、
追いついて、抱きついた。
ごめんなさい。そう何度も繰り返して。
二人で泣きながら、そう繰り返して。
なのに、世界は残酷だ。
横を通ったバイクが十字路を曲がり損ねて塀に激突した。
それを避けようとした自動車がハンドルを右にきり、
私たちの方へと突っ込んできた。
私は、愛理の体を突き飛ばした。
泣きながら、手を伸ばす愛理に私は。
いろんな音が聞こえる
サイレン 大人の声 悲鳴
あと 愛理の声
あれ?どうして泣いてるの?
また いつもみたいに笑ってよ
なんどもすくってくれた笑顔 また みせてよ
あれ ぜんぜん体がうごかないな
これじゃあ だきしめられないじゃん
あぁそうか、これは罰だ。
恋人を泣かした人に神様が罰を与えたんだ。
にしては、ちょっと、重すぎないかな。
せめて、最後に。
一言、言わせてよ。
愛理には、笑顔が一番なんだから。