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篇外雑記 4  〜 陸島地理概要

大陸編~十八・十九眞紀(しんき)の第二八話「褐剣髯(かっけんぜん)起動」掲載後から本編の小説をしばしお休みして、諸々の設定などをお話しする試みの第四回。


前回は大陸の地理をざっくりお話しましたが、今回は大陸の東の海上に連なる「陸島(りくとう)」を中心とした列島のことを、これもまたザッとご紹介しましょう。本当なら、シリーズ別作の陸島編に載せるべきですが、現段階では分散せずこちらで公開します。


お話致しますのは、前回に引き続き、元祭相(さいしょう)府科学部総監にして大然学(だいぜんがく)の創始者、数銃(すうじゅう)先生です。それでは先生お願いします。



――――――――――――――――――――――――――――




 ご紹介頂きました数銃でございます。

 こんな婆さんが一度ならず二度までも、皺だらけの顔を晒して皆さんも我慢の限界でございますでしょう。御不興察しますが、何卒御容赦、本日限りでお付き合い下さいませ。


 さて、今回のお題、陸島とその周辺の島嶼ですけども。


 これまでお出ししてきた中で、陸島を舞台にした短編は、シリーズ別作でわずかに三つを発表しただけです。作者の適当館(てきとうかん)殿はこの後もしばらく大陸編だけを書いていくようです。なので、今回陸島のことを話してもあまり意味が無いように思いますが、とはいえ海ひとつ隔てて隣のこと、今までの大陸編にも陸島人が何回か登場してますし、ちょっとお耳に入れさせて貰えれば、と存じます。


 では、南から話を始めましょうか。


 大陸の東南端に轍(てつ)州がありますが、その東の海上に、南北二〇〇km程の大きな島がぽっかり浮かんでおります。これが蝶佳(ちょうか)です。轍州や網(もう)州、熱方(ねっぽう)などと同様に年中暑気で満たされている島です。

 そして、蝶佳より北へ大小無数の島々が連なっていきます。その多くが火山島で、海中の火山帯が活動した痕跡が列島となって残っているわけです。


 蝶佳島の北方で主な島は、泪恋(るいれん)島、安弓(あゆみ)島の2つです。泪恋には独自の王朝があり、卿(きょう)氏が世襲して王位に就いています。その他の小さな島々は数えていたらキリがございません。


 更に北へ、海流に乗って波濤を越えますれば、やがて陸島の南端に辿り着きます。ここは武界(ぶかい)国という行政区域で、本篇でも名前の出た活火山、黄翼山(きつばさやま)のある所ですが、ここでまず、大きな陸島という地域単位について、ご説明致しましょう。


 陸島は島国ですが、最南端の武界国から最北端の白媛(しらひめ)国まで、南北二〇〇〇kmもあり、小国とは言えません。

 西南半分は「穂嶋(ほしま)」、東北半分は「美陸(みおか)」と呼ばれ、東西で大きく様相が異っています。陸島は長い間、「陽皇(ようおう)」という万世一系の王が治めて来ましたが、過去に「劇営(げきえい)」という政治体が美陸を中心に盤踞したり、一度はその劇営に陸島を追われ、陽皇家が大陸に潜伏したこともあります。「深戒屍月(しんかいしげつ)」という事件が起こった背景には、この陽皇家潜伏がありますが、当時の大姚(とう)帝国でも、その猟奇性から耳目集中の事件になったものです。

  参照 >> 大陸編第十六話「水都幽柱」


 ともかく時として政権が分かれる程だから、美陸と穂嶋はある意味、別の国家と言ってもいいほど異なる顔を持っています。気候、植生、生態、地形、人心、文化、産業、様々な点で異質なのです。

 穂嶋は全体に温暖で、大地の高低はなだらか、河川湖沼多く舟運盛ん、人は雅やかで、闘争は兵馬より謀計を好みます。かたや美陸は、冬季に寒風降雪吹きすさび、峨々とした山岳が多く、流通は馬を専らとして、剽悍な者多く、争えばすなわち野山に馬蹄と叫喚がこだまする、といった具合。まったく、違うんですね。


 大きく二つに割れば美陸・穂嶋ですけども、もう少し細かく十州の区切りもございます。南から、果(か)州、寄(き)州。この二つはそれぞれ独立した島です。先ほど言及した武界国は果州に属してますね。あとは全て陸島本島に有り、空(くう)州、帆(はん)州、央(おう)州、ここまでが穂嶋の範疇。一方の美陸の領域にはまず、海に南面する観州、北面する超州。そしてその間の山国である嶺(れい)州、広大な流野(ながれの)平野を擁する流(りゅう)州、最後に北国の陸州といった州が並びます。十州ごとに際立った特徴が有りますが、その仔細はまた改めて触れることがございましょう。


 更に細かい行政単位で「国」というのが有り、陸島全土で七五ヶ国、ひしめいてございます。随分細かく、沢山ございますが、いずれ陸島の物語が始まります時は、この七五ヶ国を舞台に治乱興亡、麻のごとく紊れたる天下の風景が展開するそうで。

 以上が陸島のだいたいの地理概要となります。


 さて、寒冷厳しき陸島最北の陸州の、そのまた北に大きな島がございます。これなん白(はく)州と言い、夏短く、長い冬の殆どが豪雪に閉ざされる地域です。島内は複数の部族長によって統治され、南に陸島、北に渤方(ぼっぽう)、海峡を境に交易が盛んでございます。


 ここまで陸地の話をしてきましたが、これらが浮かぶ海についても、お話ししましょう。

 陸島の周りには大きく三つの海がございます。大陸〜蝶佳〜泪恋〜果州に囲まれるのが環泪海(かんるいかい)で、南国の陽光煌めき、海賊も横行する賑やかな海です。大陸の楽河(がくが)はこの海に注ぎます。一方の穣河(じょうが)が河口を持つのは、陸島海と言い、陸島の西側の海となります。三つ目に陸島の東にあるのが日海(ひうみ)で、この海は斐界でもっとも大きく、陸島からひたすら東方に船を漕げば銀罵蘭(ギンバラーン)国に着くはずですが、そこは果てなき大海原、いまだその大航海を成功させた人間はおりません。


 さてさて、話も長くなりました。

 何やら異界の地名を羅列され、皆様、面食らわれたかもしれませぬ。私自身、大陸の人間であって陸島へは参ったことがなく、浅薄な知識で誠に申し訳なく存じます。

 大陸篇が落ち着き次第、陸島の物語が始まりますので、その際に本日の老婆の話を少しでも思い出して下すったら、望外の幸せでございます。


 それではお話しを終了いたします。ご静聴ありがとうございました。



――――――――――――――――――――――――――――



はい、先生ありがとうございました。

いやあ、失言無く、脱線無く、ほっとしております。

さて、次回のお題ですが、民族や文明について語れればと思います。講師は、炎州交相代(こうしょうだい)の滎胴巡(えいどうじゅん)様に頼んであります。

宜しければまた、皆様のお耳を拝借できれば、と存じます。




************************



環泪海


挿絵(By みてみん)



陸島全図 /穂嶋


挿絵(By みてみん)



陸島全図 /美陸


挿絵(By みてみん)



白州


挿絵(By みてみん)



大陸全図


挿絵(By みてみん)



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