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篇外雑記 3  〜 大陸地理概要

第二八篇「褐剣髯(かっけんぜん)起動」掲載後から本編の小説をしばしお休みして、諸々の設定などをお話しする試みの第三回。


第一回と二回は、歴代王朝が演題でございました。今回は地理のお話。この物語は、大きくは大陸と陸島(りくとう)という2つの世界のことを描いています。今のところ、大陸篇を中心に二八篇を上梓しており、陸島篇はわずかに三篇、陸島の三つは顔見せ程度で掲載した訳でございますが(シリーズ別作です)、いずれタップリと発表する積りです。とにかく、大陸とはどういう所なのか、陸島とはどこにあるのか、という基本的な地理感覚をお話したいと思います。


お話くださるのは、元祭相(さいしょう)府科学部総監で大然学(だいぜんがく)の創始者、数銃(すうじゅう)先生でございます。総監在職中、『当惑星大観』という百科事典の編纂事業を統括されるなど、帝国の発展に多大な貢献をなさいました。大陸編~十八・十九眞紀の第十五話「大然学誕生の小機」にご登場されてます。宜しければご高覧を。



しかし、ま、同じ祭相府高官の女性でこうも人品が違うのかと、前回、前々回の方と比べますとね、感心するやら、呆れるやら。失礼、また前説が長うなり申した、それでは数銃先生よろしくお願いします。



――――――――――――――――――――――――――――




 ご紹介にあずかりました、姓は数、名は銃、(てつ)輪多凡(りんたぼん)の産の老婆でございます。


 大(とう)帝国祭相府にて長く禄を食みましたが、眞暦(しんれき)1803年1月、思う所ありて下野させて頂きました。以来、徒手空拳、風来坊。このような講壇に立つなど恐縮で仕方ありませんが、人生の長さは一丁前、この耳で聞きかじったことを知ったかぶりでご披露致しましょう。


 さてお題は大陸と陸島。でしたか。え?そんな基本的なことも話してない?

 三十一州以外の諸方もありますが。え?それも?


 なんとまあ、不親切な作者ですこと。

 皆様に話の舞台のご説明もせず、そのままダラダラと三十余篇を垂れ流してきたのですか。いや、地図を添付してからって、あなた。あんな汚いgif画像で何が分かりますか。地理は、地図だけでなくやはり注釈もお付けしなければ、理解はできませんよ。

 読者様。

 この怠惰な作者、適当館剛(てきとうかんつよし)めに代わって私よりお詫び申し上げます。本当に申し訳ありません。


 では早速、一番大きな所からお話しして参りましょう。

 まず、この世界全体を斐界(ひかい)と申します。

 ここに、どん、と大きな大陸が鎮座しているのですが、お話が展開している「大陸」というのはその東端になります。西方には、迎度(ゲード)国や銀罵蘭(ギンバラーン)国という大帝国がありますが、あまりに遠うございますので、本作では今後も登場しないでしょう。


 ですので、大陸におけるこの物語の舞台は、東側と南側が広い海になっています。西側は天を衝く山脈が、北側は茫漠とした高原や砂漠、ざっと言えば、そんな地形なんですね。


 そして中心には、三十一州を擁する大姚帝国が広がっています。豊人(ほうじん)民族によるいわゆる中華国家です。東西二〇〇〇km、南北二五〇〇kmという広大な国土を持っています。今までの小説の多くが、この三十一州のいずこかのお話だったかと思います。


 本篇をご覧下さった方は、その中で折に触れてお聞きかもしれませんが、一応この国の地勢をお話しておきましょう。この大姚三十一州は二本の河によって形成されたと言って良いのです。北の穣河(じょうが)、南の楽河(がくが)、いずれも海の如き大河でございます。

 穣河は、はるか西北の乾燥した原方(げんぽう)漠方(ばくほう)境界あたりに水源を発し、多量の黄土を削って東流、その水は黄色く濁ったまま、因定両州の境で海に注ぎます。その流域は穣界(じょうかい)と呼ばれ、最も古い文明を胚胎するなど、この大河は史上の中原を育んできた偉大な河なのです。

 一方の楽河は、遠く雲方(うんぽう)に湧き出て、温暖湿潤な沃土を東流し、こちらは滋養豊かな翠色に染まって、懦炎両州を切り裂くが如く大きな河口を広げ、大海に流入します。流域は楽界(がっかい)と呼ばれ、文明の萌芽こそ穣界に遅れましたが、気候温暖で豊かな大地はどんどんと生産力を高め、誡の末期にあたる眞暦1514年には、ついに総生産が穣界を追い抜きます。この年は「穣遼年(じょうりょうねん)」と言われ、斐界の経済史上、非常に重要な転換点となりました。

 なお、この二大河川に挟まれる地域は穣界でも楽界でもなく、東から附類(ふるい)明證(めいしょう)三籠(さんろう)と呼ばれています。


 この姚の周辺に、さきほど「諸方」と呼びましたが、いくつかの地方があります。

 西北の砂漠地帯を漠方、真北の草原地帯を原方。この辺りは、オアシスを拠点にする商業や、遊牧民族による狩猟生活が営まれている地域です。東北には、渤方(ぼっぽう)があります。ここには大(ぼつ)帝国という姚と並立する帝政国家が成立しています。

 西には光方(こうほう)があります。大陸でもっとも内陸にある山岳地帯で、六〇〇〇m級の山脈が波打ち、その狭間で人々が暮らします。山の頂には万年雪が積もり、冬は酷寒の地となります。その南には雲方。ここも同じく内陸ですが、光方とは逆に気候は亜熱帯で、熱帯雨林に覆われています。

 なお、もっとも暑い地域は大陸最南端の熱方(ねっぽう)。常夏の地帯です。


 諸方と言われる地域は以上ですが、今少し補足を。

 大姚三十一州の最東端に剣州があります。ここは(かい)の時代まで、「剣国」という独立国家でした。しかし誡末姚初の動乱に巻き込まれ、姚の一州として併呑されます。ただし王家である烈風(れっぷう)家は「永代州王」としてある程度の自治を認められています。


 さて、以上が大陸にまつわるお話。


 目を東の海上に向けようと思いましたが、ちょっと一息いれますか?

 そうですわね。では、次回改めて陸島と呼ばれる列島を中心に、海に連なる島々のご紹介を致しましょう。



――――――――――――――――――――――――――――




ありがとうございます。いやあ、やはり酔っ払いと違って、大先生のお話は聞いてて安心ですねっ。

では、次回も数銃先生にお出まし頂きましょう。




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大陸全図


挿絵(By みてみん)




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