若隠居と発見(1)
エルゼの冒険者ギルドに行くと明けの星がいたので声をかけたが、あまり機嫌がよくないようだった。
「どうした?」
幹彦が訊くと、エスタが肩をヒョイとすくめて答えた。
「参ったぜ。例の、家畜を襲うやつ。まだ犯人が見つからねえんだ」
エインがギリギリと奥歯をかみしめ、グレイが続けて説明する。
「高い塀を作って囲ってみたが、それでも襲われた。それに郊外の牧場を見張る冒険者が増えたら、今度は森での被害に変わってな。両方に人を割くと見張りがおろそかになって、どこかが襲われる。どうしていいやら」
僕たちも一緒に、ううむと唸った。
「被害は夜なのかな?」
「わからん。でも、昼間だと流石に誰かに見られるんじゃないか?」
グレイが答えるのに、エインはくそっと声をあげた。
「今に見ていろよ。どんなやつか知らないが、家畜はこれ以上襲わせねえ」
そう言って、彼らは門の方へと歩いて行った。
見送っていると、ジラールが来た。
「あいつら、よほど頭にきてるみてえだな。夜中に張り込んでみたり、どんどん高い塀を作ってみたりしてるぜ」
言いながら、エスタたちの背中を見やる。
「でも、どんなやつなんだろうなあ。高い塀でも乗り越えるんだろ? それに、ヒトは襲われないのかな」
そう言うと、全員が考え込む。
「まあ、どこで鉢合わせするかわからねえから、気を付けるしかねえな」
そう言ってジラールはヒラヒラと手を振って歩いて行った。
「俺たちも行くか」
冒険者たちはこれに関わる依頼を受ける者が多いので、薬草が不足気味らしい。それで、薬草採取の依頼が出ており、僕たちはそれを受けたのだ。
「うむ。気を付けて行くとしよう。なあに。出て来れば捕まえてやるぞ」
チビが言って、僕たちは森に向けて歩き出した。
依頼の薬草を集め終え、少し早いがダンジョンへ行くのも中途半端なので、エルゼに戻ろうかと歩き出した。
そのときだ。視界にそれが入った。
「ん? あんな穴ってあったか?」
そこは人通りの少ない森の端を通る道で、運がよければ天ぷらにしたら美味しい野草の新芽が見つかるので寄り道をしたのだが、以前にはなかったはずの洞穴が山の岩肌にぽっかりと空いているのを見つけたのだ。
そこをしげしげと覗き込む。
「いや、無かったと思うぜ」
「何だろう。濃い魔素は感じない──というか、薄いか?」
チビが鼻先を入れてそう言う。
「どうする?」
僕は皆に訊いてみた。
「そりゃあ……なあ」
「うむ。気になるな」
「入ってみようぜ」
「さんせー」
「気を付けなければの」
「合点でやんす」
「じゃあ、行こうか」
僕たちはそろそろと、幹彦がギリギリ身をかがめないで入れるくらいの穴へ入って行った。




