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Tokyo Dusk  作者: 藤宮 柊
2章 『姉弟』
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『2章 姉弟』【Scene01:沈黙の王の声】



薄暗い室内で、戦術マップの光だけが淡く卓上を満たしていた。

沈黙の間(Grave Room)──**The Echo(記憶の残響)**の最奥、中枢。


重い金属扉を、ウィステリアはためらいなく蹴り開けた。

閉じたカーテン、最小の照明。音が吸い込まれるような静けさの中央に、かつて映写機が置かれていた台座を転用した分厚いガラス卓がある。そこへ、一枚の任務ファイルが無言で滑らされた。


内容は、情報収集と潜入。

ウィステリアは鼻で笑い、小言を吐こうとして──


「次の任務、お前と《ヨル》で行け」


咥えた煙草の火が、かすかに揺れた。

ウィステリアは視線を上げず、低く呟く。


「……本気?」


「任務だ。拒否は許さない」


「……あいつは、まだ“殺してない”」


沈黙。

ファイルを取る手に、わずかな力がこもる。


「覚悟も未熟。足を引っ張るだけだ」


硬質の椅子に身を預けたまま、グレイヴは答えない。

ただ、一言だけ。


「“牙”に未熟は不要だ。行かせるからには、命令として受けろ」


舌打ちが、薄闇に短く落ちた。


「──命令ね。了解、“ボス”」


ウィステリアはファイルを乱暴に掴み、踵を返す。

そして入ってきた時と同じように、重たい扉を蹴り開けて出ていった。


「……あいつはこの部屋の扉をなんだと思っているんだ」


眉間に皺を寄せ、グレイヴが独りごちる。

残ったのは、淡々と脈打つマップの光と、沈黙の王の影だけだった。



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