SS(11α) 奥手にも程がある
SSです。
GLに見せかけた他要素もあります。
11α
[初穂視点]
酷く…… イライラしてる。
私には、男の子が分からない。
だから、彼らの告白で使われているこの時間が勿体なく思えて仕方ない。
「僕は、昔っから気になってたんだ、これから、お付き合いを考えてくれないかな?」
「俺、自分に自信がついてさ、今なら胸を…… 胸を張って言えるから」
「今、誰かと付き合ったりはしてないよね?」
この人達とは目線が合わない。
いつも胸ばっかり見てるから…… バカみたい。
男の子が、分からない。
だって、胸とかお尻とか下着とかに反応するバカにしか思えないもの。
「……ごめんなさい、お付き合いできません」
「はっ、ちょ、ちょっと待てよ、初穂ちゃん」
「そうだよ、笠木と付き合っているワケでもないんだろ」
「僕たちのどっちかにしておきなよ、試しにでも、さ」
「俺、空手部入ってさ、今は体力作りばっかだけど、アイツより頼りになるしさぁ、どうかな、考えてくれよ」
「僕もテニス部で、活躍するし、なぁ、はっちゃん?」
一番、言われたくない名前を出した……。
この馴れ馴れしい背の低い人は、無視しよう。
早く教室に戻りたい……。
無駄な時間…… ホントに胸しか見てない。
「嫌です…… もういいですか、胸ばかり見られて不愉快です」
「何だって……? 誰が胸しか見てないんだよ」
「そうだ、ちゃんと話をきいてくれよ」
「もう、やめてください」
「どっちかを選んでくれたらいいだけじゃないか」
「僕は、一緒にいて楽しいと思うよ?」
背の低い人が、左腕を掴みながら胸に触ってきた。
……気持ち悪いっ。
「あっ、俺だって楽しませるのは得意だぞ?」
背の高い人が右手を掴むフリをして、私の胸に手を押し付けてきた。
そこまでが、我慢の、限界だった。
☆
先生に呼び出されて、状況をもう一度説明するのは苦痛だったけど、伽耶ちゃんが一緒に来てくれたので耐えられた。
「……とりあえず、分かった」
「いや困りますよ、こんな暴力沙汰を起こされて!」
「……はぁ、コトを荒立てて困るのは、そちらの男子の方でしょうに」
間釣先生は珍しくバカじゃない男性だ。
隣のクラスの先生はバカだ。
チラチラ見るバカだ。
……結局、私に治療費の請求をするけれど、内訳とかは親同士で話してもらうってコトで、私自身の咎めはなしになった。
でも、イライラは消えなかった。
「……やっぱり行かなきゃ良かった」
いつもみたいに無視して…… 避けられなかったら我慢して、直ぐに忘れてたら、もっとイライラしないで済んだのかも。
だけど、さっきの…… 伽耶ちゃんが私のために怒ってくれた顔は、忘れたくないな。
「初穂ちゃん、平気?」
「伽耶ちゃんこそ平気?」
「うーん…… 平気は平気だけど…… 気分転換したくない?」
「そうね…… カラオケとか…… カラオケとか…… カラオケ行こう」
「良いね。桂くんと笠木くんは今日はやめとく?」
「ん、そうね」
にこやかに、伽耶ちゃんが笑ってくれる。
やっといつもの時間。
私が好きな時間。
☆
『伽耶ちゃんの乙女心を見守りたい』
何でこう思うようになったのか、実はあんまり覚えていない。
私は別に同性愛でもない…… と思う。
何しろ、伽耶ちゃんが初めての友人だ。
他には友人なんて居なかった、居ない居ない。
私は自他共に認めるボッチだもの。
伸君はご近所さんだから姉弟みたいな?
だから、友達としては、なんだか薄っぺらい。
伸君は気配りとかするけど…… 姉弟みたいなもの、友人じゃない。
伽耶ちゃんの仮の恋人の大幡君は、バカじゃない気がする…… けど、友人じゃない。
彼には気配りを確かに感じるけど。
バスケットボールを投げて笑う彼女の気持ちを、私が守りたい。
パスはカットされずに私に届いた。
ムカムカしながら、何だか焦っている気持ちに蓋をして、シュート。
ゴールリングに弾かれて、入らない。
イラつく。
☆
更衣室でベンチに足を投げ出し、やりきった感の伽耶ちゃんに宣言しておく。
「彼の、伽耶ちゃんへの気持ちを確認をしたいから、大幡君にちょっと火磨をかけてみます」
「……え?」
不思議そうな顔の伽耶ちゃん。
あ、カマがわかんないのね、可愛い。
「……答えを聞き出すテクニック…… つまり、誘導尋問みたいな」
「ぇえ、スゴイね初穂ちゃん」
「そんなコト、ないわ……」
伽耶ちゃんに誉められると、嬉しさで耳が熱くなる。
「どうやるの? そのカマかけって」
「……ミスリード…… ちょっとしたウソをつくのよ」
「ウソはダメよ」
伽耶ちゃんがキッパリと言うのを聞いて、私には絶望感が降りてきた。
嫌だ、死んじゃう。
伽耶ちゃんに嫌われたくない。
嘘が嫌だとしても、大幡君から真意を聞き出すには多少荒っぽくしないと言わないという予感がある。
「……でも、そうでもしないとあの人はハッキリ言ってくれなさそうじゃない?」
「桂くんね…… あんだけボディータッチしても馴れてくれないし……」
「そうよ、本当ならもう押し倒されていたハズなのに」
「……何て?」
正直で初心な伽耶ちゃんにアドバイスして、本格的な恋人になってもらおうと画策してみたのはつい最近だけれど。
「伽耶ちゃんが体格差に耐えられるのかなんて心配までしていたのにそれも肩透かしで」
「はつほちゃん……?」
「奥手にも程があるでしょうに、今となっては良かったのだけど」
「初穂、ちゃん……?」
「ゴメンなさい…… ちょっと苛立ってしまって」
ムカムカが消えない…… さっきの絶望感が、波を立てている気もする。
「……男の子、だもの。いつ欲にまかせて乱暴になるか分からないわ。本気でもないのに伽耶ちゃんを傷付けるなら、もう彼氏役は辞めてもらいましょう」
「ねぇ、今まで体を張って迫っていた私としては、とっても申し訳ない気持ちがいっぱいなんですが……」
それでも私は伽耶ちゃんの乙女心を守りたい。
「大幡君からの連絡に、答えちゃダメよ」
☆
伽「あ、もうこんな時間」
初「私もそろそろ寝ます」
桂「二人とも、今日はありがとう。良い買い物ができたよ」
挨拶文もそこそこに伽耶ちゃんへと電話する。
『もしもし』
「伽耶ちゃん、これから大幡君を問い詰めるから」
『ホントにやるの?』
「任せて、上手くやるから」
本当は伽耶ちゃんに気があるくせに。
私の胸をたまに見たりして。
伽耶ちゃんのうなじをガン見してるのも知ってるわ。
ハッキリしないのは、そこらのバカと同じくらい質が悪い。
『でも…… その後、初穂ちゃんは居づらくならない?』
「伽耶ちゃんが友達としていてくれるなら何でもないわ」
『……やっぱり止めよう? 急ぐ必要なくない?』
「ダメ、私は伽耶ちゃんの保護を優先したいの」
『無理ッポかったら、すぐにやめてね?』
「うん、じゃあ、また後で」
☆
「そろそろ大幡くんからメッセージが来たんじゃない?」
『スゴイね、丁度今来たよ』
「返事しちゃダメよ?」
ふっふっふっ、観念してもらうわ、大幡君。
さぁ、ハッキリしないなら、伽耶ちゃんにコレ以上触れさせてあげるものですか。
「大幡君の想い人は誰ですかってハッキリ書いてみたけど……」
『もういいんじゃない……?』
☆
「あっ、やったわ! 伽耶ちゃんよ!」
『えっはえっ? 何がどうなったの』
「大幡くん、想い人を私に言うんだったら本人に告白をするって」
このままなら、告白でハッピーエンドよね、伽耶ちゃんがヒロインのパラダイスだわ。
……まだ何かムカムカするけど。
伽耶ちゃんが幸せになるなら、大丈夫。
『……本人って、私、いっ!?』
「落ち着いて、大幡くんの気持ちを聞くのよ?」
『こっ、こっ、こくはくはくはく……』
「気を確かに、最初はとぼけて」
『はひゃい………… あっれ、どしたのって打ったぁ……』
「よしよし、良いわよ、頑張って」
『はひゃいぃ』
「何て返ってきたの?」
『……あ、ゴメン、間違えた……?』
間違えた…… あ?
「何ですってぇ!?」
伽耶ちゃんに告白しないで誰を選ぶっていうのよ!
伽耶ちゃん以上の乙女がいるわけないのに!!
「続きは! 何を言っているの?」
『えーと、なんでもないよ? ……何かあったのかな?』
「告白するって話でしょう! 一体誰に告白する気だったのよ!」
イライラがまた増えていく……。
『これ、桂くんが分かってないんじゃないの?』
「じゃあ、ログ見て、メッセージをコピーして貼り付けるかリプライしてやって…… 何なのコイツ……」
……もうヤダ…… ハッキリしないこんなヤツ、伽耶ちゃんに相応しくなんかない。
『……え、個チャ間違いだよ、ゴメンね?』
「キャアアア!?」
ああもうやだあぁあ、何してんのコイツ、バカなの?
頭おかしいの?
「誰に告白するつもりよおっ!? 伽耶ちゃんに絶賛片想いのくせにぃ!?」
『は、はつほちゃんん?』
「告白イベントはよ!?」
『告白イベントは…… あ、ひっ?』
アイツ、告白する度胸がないからってスッ惚けてお茶を濁すつもりだ!
許さない、そんな…… そんな…… 伽耶ちゃんが片想いのままだなんて。
……うっ、うぅっ、伽耶ちゃん……。
『もしもし、初穂ちゃん』
伽耶ちゃん…… もうほっとこうよ。
「……何よ、今度は何て言ってきたのッ」
『いま、一緒にいるわけじゃないのか、って』
「えっ……」
アイツ、惚けていたわけじゃ、なく?
うそ、見抜かれて、逆に嵌められた?
『桂くん、もう分かっているみたい』
「……えっ?」
『聞いてみるね……………… たぶん、二人で通話してるんでしょ、って』
「ぅうっ…… もう見破られたのね……」
じゃあ、さっきの告白するって流れから…… 全部、演技だったの?
何だ…… スゴイじゃない?
私が、振り回されたんだ。
『ゴメンなさい…… ほんっとーにゴメン…… お詫びはちゃんとするから…… っと』
「彼、何て?」
『……後でねっ、て』
「じゃあ、私の方に聞きに来るのね……」
何か、ドキドキする。
これはアレよね、私に何かさせる、償わせる…… そんなシチュエーションよね。
……えっ、コレにドキドキするってコトは、私は□なんだ。
……□だったんだ……。
『初穂ちゃん、どうするの』
「……全部話して、お詫びしなくちゃいけないわ」
……よね?
何を言われるのか分からないコトにドキドキが大きくなる。
伽耶ちゃんに誉められた時より顔が熱い。
「最悪は、私の体で…… 償わなくちゃかしら……?」
何か、それで良い気がしてきた。
『ダメダメ、それは、なし~っ!』
うん、伽耶ちゃんが言うなら、それは避けなきゃ。
「でも、正直に話すわ…… 伽耶ちゃんを守りたいコトとか、男の子への不信感とか、胸を見られてたコトとか」
彼に、全てを明かしてしまう、そんな想像にもドキドキする。
赤裸々って、ファンシーな響きだけど字面が卑猥。
『……見られてたコトは良くない?』
「伽耶ちゃんにはなかったんでしょ?」
『近距離ですら』
伽耶ちゃんに大幡君の目の前で胸元を広げさせるのは、確か5回はやってたのに。
……私の胸を見たのはもっとあったわよね?
「それはギルティー。伽耶ちゃんにこそ向けてくれなくちゃ……」
…… ポコン♪
桂「何でこんなコトを?」
「あ、メッセージが来たわ、話してくる」
何を、させられるのだろう…… いや、彼はしないと思うけれど。
しないかも、するかも、という状況、ドキドキする。
『初穂ちゃん』
「え?」
『ゴメンね』
伽耶ちゃんのこの言葉は、私が伽耶ちゃんへの思いからした行動が裏目ったコトへの謝罪だろう。
……ううん、そんな、私が短絡的に自爆しただけ。
「……私こそゴメンなさい、鬱憤晴らしの、口実にして」
『明日の朝イチで、抱き締めるからネッ』
「うんっ、期待してる」
自分の性癖を理解したからかな、伽耶ちゃんのアレについても、何となく拘る意味が分かる気がする。
私は私の、性癖を噛みしめた。
☆
桂「何となくだけど、平さん僕のコト好きではないでしょ?」
……大幡君は、頭が悪いのかしら。
きっと、ヒラメキだけが凄いのね。
初「まず、謝らなくちゃ。ごめんなさい。伽耶ちゃんは悪くないの、私が一方的に……」
まず、対等の立場に戻さなきゃ。
話はそれから。
桂「何でそんなコトしたの」
初「大幡君、私の、胸見てましたよね?」
私、それに関しては超敏感です。
誤魔化せませんから。
初「なるべく見ないようにしてたみたいだけどじっと見てたよね」
初「伽耶ちゃんのは完全に見てなかったのに」
初「そんなエッチな人に伽耶ちゃんを任せられないので試させてもらったんです」
……本当はイライラしてたから。
その理由も今なら分かる。
幼稚な男の子にはムカつくだけ、だけど…… 理性や知性を感じられる男性に上から来られると、確かにドキドキ、ムラムラする。
直近で言うなら、間釣先生か、大幡君。
……なんてね、エッチなのは、私もだわ。
桂「平さん僕こそゴメン、とても失礼してました」
……そういう所はマイナスだわ……。
直ぐに頭を下げるなんて、雄らしくない。
初「私のコトは一度捨て置いてください。大幡君が割りと意識して伽耶ちゃんを見ているのは分かってますから」
だけど、私の気持ちは。
私自身が知らない。
私もまだ、見えていないこの気持ち。
あなたに恋してるかも知れないんですよ?
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ヨロシクお願いします☆(°▽°)
平さんを主人公にしたらノクターン送りになりそうなので、しません。
……しませんよ?(°▽°)☆




