番外編① 農民上がりのギルド長。その名もパーシヴァル。〜僕…冒険者になりたいんです〜
外伝です。ずっと出てきていないパーシヴァルの話になります。楽しんでいただければ幸いです。
おぎゃあ。おぎゃあ。
ある夏の日の朝。その暑さを切り裂くような産声が上がった。子供は一軒の小さな農家の家で生まれた。
母親は生まれたばかりの子供を愛おしそうに見て言った。
「あなたの名前はパーシヴァル。これからすくすく育ちなさい。」
赤子は母の言葉に答えるようにしばらく大きな声で泣き、疲れで眠ってしまった。それを父母は優しく見守った。
そう、これは身分に厳しい時代に農家に生まれたパーシヴァルが十二人の騎士の第八席になるまでの物語。
―――――――――――――――――――――――
「父さん。母さん。話があります。」
パーシヴァルの誕生から15年の月日が経過した。彼は母の言葉通りすくすくと育ち、立派な青年になっていた。そして、彼は今一世一代の決心を伝えようとしていた。
「なんだ?言ってみろパーシヴァル。」
父が、剣の手入れをしながら応えた。パーシヴァルの父は昔、冒険者をしていたのだが足に怪我をして冒険者を諦めたのだ。その怪我は、あまり酷いものではなく、農業が通常通りできるほどのものだが、少しの状況が生死を分ける冒険者業では大きな怪我だった。
「父さん。本当に真剣な話だからよく聞いてほしいんです。」
彼はテーブルにつき、再び父親に言った。
パーシヴァルの真剣さが通じたのか、父は手を止めて少しパーシヴァルの顔を見た。
「…わかった。少し待ってろ。母さんも来い。」
父は、手にしていた剣を丁寧に袋にしまい。壁に立て掛けた。その後すぐにテーブルにつき、先ほど以上に真剣な顔でパーシヴァルの言葉に応えた。
「もう、話していいぞ。」
彼は、母と父の顔を交互に見た後に切り出した。
「僕…、冒険者になりたいです。」
一瞬音が消えたような静寂が訪れた。その静寂を破ったのはやはり父だった。
「本気なのか?冒険者はお前が思っている以上に過酷な職業だぞ。それでもやっていけるのか?」
父の経験を踏まえた、厳しいコメントだった。
しかしパーシヴァルは、動じなかった。
「はい。どんな困難にぶつかっても乗り越えられます。俺は本気です。本気で冒険者になりたいんです。この世界にはまだ見ぬ様々なものがあるはずです。俺はその全てを見たいんです。」
「そう…。だから毎日剣を振ったりしてトレーニングしていたのね。それもとてもたくさん…。」
母は、そこまで言って目を伏せた。
「母さん…。」
「私は、私のパーシヴァルに危険な目にあって欲しくない。でも…、やはり血は争えないのかしらね…。」
母はそう言って元冒険者である父を見た。父は、目をそらし、こう言った。
「行ってこい。」
その他の言葉はもう必要なかった。母も頷いてこちらを見ている。
「ありがとう…。最高の…最高の冒険者になって来るから!」
彼はそう応えた。
“翌日”
パーシヴァルは、もう出立の準備を整えて冒険に出ようとしていた。彼が住む街には冒険者ギルドが存在せず。冒険者になるためには、隣の街まで行かなければならないのだった。
「父さん。母さん。僕はもう行きます。今まで育ててくれて本当にありがとう。」
彼はそう言って、背を向けた。
「待て。お前に…これをやる。」
「父さん?」
父は物を渡すとすぐに家の中に入って言ってしまった。
そして、彼の手には一振りの剣があった。磨き抜かれたその剣ならばどんなものでも切れそうだった。
「父さん…ありがとう。」
彼は、今度こそ背を向けて冒険に出た。
書いてたらどんどん話が膨らんでいったので、今後もちょくちょく外伝だしていきます。




