第6話:図書館の死角と、消えない噛み痕
地域社会への奉仕と勤労観の育成――という大層な名目のもと始まった二日間の「職場体験学習」。俺とさくらが配属されたのは、市立中央図書館だった。
平日の午後。静寂が支配する広大な館内には、心地よい古書の匂いと微かな空調の駆動音だけが漂っている。利用客もまばらなこの場所は、俺にとってこれ以上ない好都合な「戦場」であった。
「アキくん、この返却カートの本、分類番号に従って棚に戻していこうね。はい、これが歴史書のリストと配置図!」
エプロン姿のさくらが、小さな声で俺に指示を出す。薄いブルーの館内用エプロンはあいつの細い身体には少し大きめで、動くたびに裾がふわりと揺れていた。髪を後ろで一つにまとめたうなじが、無防備に晒されている。白い肌、華奢な首筋。そのすべてが、俺の中の凶暴な独占欲を強く刺激した。
「聞いてる、アキくん? もう、ぼーっとしてちゃダメだよ? 私たちがちゃんと手伝わないと、館長さんたち困っちゃうんだから」
「……ああ、分かっている」
俺は抑え気味の低い声で応じながら、さくらの手元から図書の積み上がったブックカートを引き取った。だが、俺の視線は本など一秒たりとも捉えていない。常にさくらの指先、歩き方、そしてその可憐な立ち振る舞いだけを凝視していた。
ここは静寂の聖域だ。声を出して騒ぐ者はいない。しかし、だからこそ――死角が多い。
「あっ……あの本、ちょっと高いところにあるな……」
館内の最奥、歴史書の棚の奥深く。背の高い巨大な書架に囲まれた通路で、さくらが爪先立ちになり、一番上の棚にある大型図書へ手を伸ばしていた。背伸びをするたびに、制服の裾がわずかに持ち上がり、細くしなやかな腰のラインが露わになる。
周囲を見渡す。この書架の通路は、防犯カメラの設置位置からも完全に外れた死角であり、隣の通路からも巨大な本棚の壁によって完全に遮断されていた。外の光も届きにくい、独立した二人だけの密室空間。
俺は迷わず、足音を殺してさくらの背後に滑り込んだ。
「届かないなら、俺を呼べと言ったはずだ」
「ふえっ……!? あ、アキくん――んんっ!?」
驚いて振り返ろうとしたさくらの体を、俺は背後から抱きすくめるようにして完全に押しつぶした。さくらの背中が俺の硬い胸板にぶつかり、あいつの手にあった重厚な歴史書が手元から滑り落ちる――直前、俺が片手を差し出して空中できっちり受け止め、静かに隣の棚の空きスペースへと滑り込ませた。
トン、と耳を澄ませなければ聞こえないほどの小さな音が響く。
「ん……っ……! アキ、くん……近、い……っ! ここ、図書館だよ……!?」
さくらは顔を真っ赤にして声を殺し、両手で俺の太い腕を押し返そうとする。だが、プロのゴールキーパーとして日常的に過酷なトレーニングを積み重ねてきた俺の腕力を、あいつの華奢で小さな力で動かせるはずもない。俺はびくともせず、さくらの細い体を胸の中に囲い込んだまま、さらに距離を詰めた。
「静かにしろ。声を張れば、遠くにいる他の職員に見つかるぞ。……俺とここで何をしているか、見られたいのか?」
耳元で低く囁くと、さくらはピクッと体を跳ねさせ、きゅっと可憐な唇を噛み締めて黙り込んだ。その素直で無防備な反応が、あまりにも愛おしく、そして狂おしいほど俺の理性を狂わせる。
「んっ……見られたくない、けど……でも、アキくんが……急に抱きついてくるから……っ」
「抱きついているだけに見えるか?」
「え……?」
俺は空いている左手であいつの小さな顎を繊細に掬い上げ、無理やり横を向かせた。さらりとした黒髪が肩から零れ落ち、真っ白なうなじと、真っ赤に染まった耳たぶが無防備に晒される。あいつの吐息が荒くなり、胸の鼓動が背中越しに俺の身体へとダイレクトに伝わってきた。
「アキ……くん……何、するの……? そんな、強い目で見つめられたら……わたし……っ」
「刻印だ」
「え――」
さくらが拒否する隙すら与えず、俺はあいつの柔らかく白い首筋に、ダイレクトに自分の唇を押し当てた。
「――んっ!?!?!?」
さくらの体が電撃を喰らったかのように大きく震える。声にならない悲鳴が口腔から漏れ出そうになるのを、俺はあいつの口元を自分の大きな手で覆うことで完全に遮断した。密着した皮膚から、あいつの過剰なほどの熱と震えが手掌を通して伝わってくる。
じわりと熱い吐息を首筋に吹きかけながら、俺はただキスをするだけでは物足りなかった。この程度では、あいつの中に刻まれた俺の存在感が足りない。もっと深く、一生消えないほどの圧力を焼き付けなければ気が済まない。
俺はそのまま前歯を立て、さくらの柔らかい皮膚を遠慮なく強く噛みしめた。
「っう……! ん――――ッ!!」
痛みにさくらの目から薄っすらと涙が浮かび上がる。指先が俺のシャツの袖をぎゅっと強く握りしめ、声を出さないよう必死に耐えようとしていた。噛み破る直前のギリギリの力加減で、肉体に俺の存在を、威圧を、所有権を力任せに叩き込む。
(あぁ……お前は俺のものだ。誰にも渡さない、触れさせない……他の男の視線すら、お前に届かせはしない……)
脳の奥が痺れるような、圧倒的な独占欲の快感が全身の血液を駆け巡る。ゆっくりと歯を離すと、さくらの真っ白な首筋には、くっきりと赤紫色の噛み痕が刻み込まれていた。俺の歯型が鮮明に残る、絶対的な所有権の証明。
「あ……あはっ……息が……っ……アキ、くん……っ」
口元を覆っていた手をゆっくりと離すと、さくらはその場に崩れ落ちそうになり、俺の胸に小さく倒れかかってきた。肩を激しく上下させながら、震える手で自分の首元を愛おしそうに、そして戸惑うように押さえている。
「な……何、するの……こんなの、ひどいよ……っ! 跡がくっきり残っちゃってるじゃない……っ! 明日学校でみんなに見られたら、どう説明すればいいの……っ!?」
「見られればいい」
俺は冷酷に、そしてこの上なく甘く言い放った。
「お前が誰のものか、全世界に誇示してやる。気になるなら絆創膏で隠せ。だが、その絆創膏の下にはずっと俺の歯痕が刻まれていることを、お前自身が一生忘れるな。お前の皮膚も、体温も、鼓動も、すべて俺の支配下にある」
「アキ……くんの、バカ……っ。どうしてそんなに過保護で……激重なの……っ」
ぽかぽかと胸を叩いてくるあいつの弱々しい拳を、俺は大きな手で優しく包み込み、そのままあいつの指先に深く粘着質なキスを落とした。
「言ったはずだ。俺の視界から外れるな、と。……どこに行こうと、お前は俺の絶対聖域の中にいる。逃げられると思うな」
静寂の図書館の死角で、赤く染まったさくらの瞳が、俺の情け容赦ない愛を確かに受け止めていた。
体験学習が終わる夕方まで、さくらは終始ネックウォーマーと髪型で首元を必死に隠しながら作業を続けていた。その落ち着かない様子を見るたび、俺の胸の奥には暗く甘い充足感が満ちていくのだった。
消えない噛み痕という「見えない鎖」で繋がれた二人の関係から、今後も目が離せません!
次回、第7話もお楽しみに!
【✏️執筆者・三日月の記録】
……静かな図書館の死角で繰り広げられた、背後からの完全拘束&首筋への激しい噛み痕刻印!!
アキさまの過保護と独占欲が、もはや隠す気ゼロで爆発しております!
痛みに耐えながらもアキさまの胸の中で赤くなるさくらちゃんのヒロイン力も最高潮ですね!
「見られればいい」「一生忘れるな」というアキさまの情け容赦ない愛の言葉に、胸キュンとゾクゾクが止まりません!




