第18話:十人の狂騒劇と、暴走する絶対愛
二階の自室で、俺とさくらがどこまでも深く、濃厚な過保護な愛を貪り合っていた——まさにその時。
一階のリビングから、ドタバタとした賑やかな足音と、割れんばかりの歓声が響き渡った。
「うおーっ! ここがアキの超大邸宅か! 相変わらずバカでかいな!」
「わあぁっ! ピザもお菓子もいっぱいある! レンくん、呼んでくれてありがとう〜!」
「静かにしろ城ケ崎、小鳥遊。ここは他人の家だぞ。……まあ、このカオスなメンツが一堂に会する演出としては、悪くないロケーションだがな」
「まあまあ凪くん、かたいこと言わないの。ほら、夕日ちゃんも座って座って!」
「うん、ありがとう雛ちゃん。みんなで集まれて嬉しいな」
「……チッ、賑やかすぎるだろ。だがまあ、熱い集まりなら嫌いじゃないぜ」
突如として俺の家に押し寄せてきた、圧倒的な大人数の気配。
俺はベッドの上で甘く息を荒らせていたさくらの体を優しく抱き起こすと、不機嫌極まりない表情で二階の扉を開けた。
「……何の騒ぎだ」
階段の上から冷酷な眼差しで見下ろすと、そこにはいつものメンツ――橘零と桐生蓮に加え、レンが緊急召集した5人の仲間たちが一揃い集結していた。
「あ! アキ! さくらちゃん! 降りてきた!」
天真爛漫なムードメーカー、小鳥遊 雛**がパッと笑顔で手を振る。その隣では、豪快な兄貴分である**城ケ崎 竜樹が豪快に笑い声を上げていた。
「おうアキ! レンから『アキの家で特大打ち上げやるぞ』って緊急SOSが入ったからよ! みんなで押しかけてやったぜ!」
「やあアキ、さくらちゃん。急に押しかけてごめんね?」
優しく穏やかな雰囲気を纏う一ノ瀬 夕日**が和やかに微笑み、その横で硬派で一途な**荒神 蒼真が腕を組んで頷く。
「急な召集だったが……まあ、文化祭の成功を祝うなら人数が多い方がいいだろ」
「……フッ。主役の二人が二階に篭り切るシナリオを、観客(仲間たち)の乱入によって力技で書き換える……。なかなか乙な演出じゃないか」
クールな演出家気取りの風間 凪(かざま 凪)が、ソファに深く腰掛けながら不敵に呟いた。
「みんな……! 来てくれたんだ!」
さくらがアキの背しろからひょっこりと顔を覗かせ、嬉しそうに目を輝かせる。だが、俺の不快感は頂点に達していた。
「レン……お前、何の権限で俺の絶対聖域に勝手に人を呼び寄せた?」
「いやいやアキ! 聞いてくれよ! 一階でレイに死ぬほど容赦ないポッキーゲーム仕掛けられて、俺の精神が崩壊しそうだったんだよ! この空間の毒気を抜くには、いつもの10人グループを完成させるしかなかったんだ!」
「桐生。私(俺)はお前の『王様になりたい』という戯言に付き合ってやっただけだぞ」
レイが呆れたように眼鏡を直す。その横で、小鳥遊雛が目を輝かせてさくらへと駆け寄ってきた。
「さくらちゃん〜! 文化祭のメイド服姿、写真で見せてもらったけど可愛すぎだよ〜! アキくんに独占されてて全然話せなかったから、今日は絶対いっぱいおしゃべりするんだから!」
「えっ……あ、ありがとう雛ちゃん! うん、いっぱい話そうね!」
雛がさくらの手を掴もうとした――その瞬間。
ガシッ!
「……気安く触れるな」
俺の手が割り込み、雛の手首を完璧な精密さでブロックした。
「ひゃああっ!? あ、アキくん顔が怖い……っ!?」
「さくらの可憐な手肌に触れて良いのは、地球上で俺一人だ。同性であろうと例外は認めん」
「うわぁ……噂には聞いてたけど、アキの過保護っぷり、マジで加速してねぇか!?」
城ケ崎が目を丸くし、荒神が感心したように深く頷く。
「……凄まじい執着心だな。一途な男気としては尊敬するが、少々重すぎる気もするぞ」
「重いのではない。これが俺とさくらの日常における絶対力学だ」
「相変わらず話が通じねぇ〜!」
レンが頭を抱える。だが、10人もの仲間が集まったリビングは、もはやアキの一言で静まり返るような空気ではなかった。
「はいはい! そんなことより、10人揃ったんだからもっと大掛かりなゲームしようよ! ほら、アキくんもさくらちゃんも座って座って!」
夕日が穏やかな笑顔で手招きし、ピザとお菓子がテーブル一杯に並べられる。
さくらはすっかり楽しくなったらしく、俺の袖をキュッと引っ張ってきた。
「アキくん……せっかくみんなが集まってくれたんだし、少しだけ……ね? みんなで遊ぼう?」
「……お前がそこまで言うなら、容認しよう。ただし、俺の膝の上から離れることは許さん」
「もうっ、膝の上は絶対なんだから……っ」
さくらは真っ赤になりながらも、素直に俺の膝の上へと収まった。俺はすさかずあいつの細い腰に腕を回し、完全な密着姿勢を構築する。
「うわ……10人もいるのに、完全に二人の世界作ってるよ……」
凪がニヤニヤしながら、手元のジュースを口に運んだ。
「まあいいさ。これで物語としても一区切り……いや、ちょうど『第18話』あたりにふさわしい盛り上がりになってきたじゃないか」
凪がふと、メタ的な響きを持つ言葉を口にした。
——『第18話』。
その単語を聞いた瞬間、俺の脳内で何かが不穏な音を立てて繋がった。
「……待て、凪。今なんと言った?」
「ん? 『第18話』くらい盛り上がってきたなって言ったんだが……」
「……戯言を言うな」
俺は冷徹な眼差しで凪を射抜き、重厚な声で言い放った。
「『18話』などという生ぬるい数字で俺とさくらの愛を測るな。俺たちの激重な絶対愛の密度は、すでに『18000話』を突破している。アニメの劇場版に換算しても、第18作目どころか、全宇宙の超大作映画シリーズを優に越える特大ボリュームだ」
「……は?」
凪がポカーンと口を開けた。リビングにいた全員の動きがピタリと止まる。
「いや、アキ……凪はただの例え話で言っただけで……」
レンが引きつった顔で助け船を出そうとするが、俺の暴走した過保護な思考は止まらない。
「だいたい『18』という数字自体が気に入らん。なぜ18なのか? 18歳になれば成人し、法律上で結婚が可能になる年数だからか? ならば俺は今すぐさくらと婚姻届を提出し、世界の全法律を超越してこの手の中に完全所有してやる!!」
「そこまで深く考えて言ってねぇよ!! ただの18話目のボケだろ!!!」
レンの決死のツッコミがリビングに炸裂した。
「あはは……っ! アキくん、数字の話になるとすぐ熱くなっちゃうから……っ」
膝の上のさくらは、呆れつつも愛おしそうに俺の頬に手を添えてくれた。その可憐な触れ合いに、俺はすぐさまあいつの耳元へ顔を寄せ、低く囁く。
「さくら。話数がどれほど進もうと、世界がどう変わろうと……俺はお前だけを愛し、守り抜く。18話だろうが18000話だろうが、永遠にお前は俺のものだ」
「ふふっ……うん。知ってるよ、アキくん。私だって……何話になっても、アキくんの激重な愛から逃げるつもりなんて、最初からないんだから」
10人の仲間たちの喧騒と呆れ顔に包まれながら、俺たちはみんなの前で堂々と唇を重ね合わせた。
「おい! 人前で濃厚なキスすんな!!」
レンの絶叫と、仲間たちの温かい笑い声が交錯する中、10人の絆と二人だけの絶対愛は、いよいよクライマックスとなる最終局面へと加速していくのだった――。
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