第13話:狂騒の文化祭と、秘めやかな密室の情事
文化祭当日の藍青高校は、校門の開門と同時に押し寄せた一般客と生徒たちの熱気で溢れかえっていた。
校内中に響き渡る喧騒、色とりどりの装飾、あちこちから聞こえる呼び込みの声。祭り特有の狂騒が最高潮に達する中、2年B組が企画した「図書委員風クラシカルブックカフェ」は、開店直後から長蛇の列ができるほどの超満員となっていた。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
可憐なロング丈のクラシカルメイドドレスに身を包んださくらが、上品にお辞儀をして客を案内する。
普段の制服姿とは一味違う、清楚でありながらどこか艶やかなその姿に、訪れた男子生徒や一般の客たちから次々と溜息や感嘆の声が漏れ聞こえていた。
「おい見ろよ、あの子めちゃくちゃ可愛くないか……?」
「白石さんだろ? まじで天使すぎる……写真撮らせてもらえないかな……」
客席のあちこちからさくらへ向けられる、熱を帯びた欲望の視線。
――だが、それらの不届きな視線は、すべて教室の入り口近くに『絶対守護神』として君臨する俺によって、氷のように冷徹な殺気で一蹴されていた。
「ひっ……あの男、なんだよあの殺気……っ」
「アキだろ……あいつが四六時中マークしてるから、白石さんには誰も手を出せないんだよ……」
ヒソヒソと囁き合いながら縮こまる男どもを横目に、俺は冷酷に目を細めた。
さくらがまとうクラシカルドレス。一見すると露出が少なく上品な装いだが、俺だけは知っている。その分厚い生地と白いエプロンの下――昨夜の美術準備室で俺が刻みつけた、濃密な噛み痕と、俺の所有権の印が、あいつの柔らかい肌に鮮烈に残っていることを。
「あ……アキくん……」
客の注文を取り終えたさくらが、トレイを胸元で抱えながら、おずおずと俺の元へ歩み寄ってきた。上気した頬と、潤んだ瞳。周囲の男どもには見せない、俺だけに向けられる無防備で甘い表情。
「あまり無理をするな。シフトの交代時間はまだか」
「う、うん……あと十分くらいで、私の前半の休憩時間になるよ。でも……アキくん、そんなに怖い顔で周囲を威嚇しないで……客さんが怯えちゃってるよ……っ」
「不必要な害虫を払っているだけだ。お前を好奇の目で見る奴らは、全員俺の敵だ」
「もう……激重なんだから……」
さくらは困ったように微笑みながらも、スカートの裾をギュッと握りしめ、声のトーンをひそめて俺の耳元へ顔を近づけてきた。
「……でもね。服の下……アキくんがつけてくれた『痕』が、動くたびにチクチクして……私、ずっとアキくんのことばかり考えちゃうんだよ……?」
「っ……!」
耳元で囁かれた挑発的とも言える可憐な吐息。熱い欲望が背筋を駆け抜け、俺の中の理性の糸がぶちりと音を立てて千切れそうになった。
「……交代時間になった瞬間、俺について来い」
「え……あ、アキくん……っ!?」
◇
前半のシフトが終了した直後。
俺はさくらの細い手首を掴み、人目のつかない裏階段を一気に駆け上がった。向かった先は、旧校舎の最上階にある鍵のかかった資料保管庫――昨日、俺が事前に予備の鍵を手配しておいた、完璧な完全密室だ。
ガチャリ、と重い南京錠を施錠する音が部屋中に響く。
「んあっ……!? あ、アキくん……こんなところに鍵をかけて……なにを――」
言葉の途中で、俺はさくらの華奢な身体を抱き上げ、積み上げられた古い資料用の大型ソファの上へと押し倒した。
「あっ……んっ……! 重いよ、アキくんっ……!」
「黙れ。お前が俺を煽ったのが悪い」
俺は両手であいつの可憐な手首をソファに押さえつけ、完全に関節と自由を奪う拘束の体勢をとった。スカートの裾が乱れ、白いレースのエプロンがカサリと音を立てる。
「ア……アキくん、ダメだよ……っ! ここは学校だし……下にみんながいるのに……っ!」
「下に誰がいようと関係ない。いま、ここには俺とお前しかいない」
俺は顔を下げ、さくらの白く細いうなじへ、容赦なく唇を吸い付けた。
「んあぁぁっ……!? あ……んッ……ふあッ……!」
一際深い甘い悲鳴が、防音性の高い密室内に響き渡る。熱い舌先であいつの柔らかい皮膚を舐めずり、昨夜刻んだ噛み痕の上から、さらに強く、深く、皮膚がうっすらと赤紫に鬱血するほどの圧力を加えて噛みついた。
「ひっ……! あっ……噛んじゃ……噛んじゃダメぇっ……! 跡が……もっと深くなっちゃうぅ……ッ!」
「深くするためだ。お前が外で他の男どもに笑顔を振りまくたび、この肌の奥に刻まれた俺の愛を思い出せ」
「んぁっ……ふ……ッ……あ、アキくんの……アキくんのバカ……激重……愛が重すぎるよぉ……ッ!」
さくらは背中を弓なりにしならせ、俺の胸元に顔を押し当てて体を震わせた。逃げ出そうとする足取りは力なく、むしろ俺の身体へと自分から擦り寄ってくる。
俺はあいつの手首を解放すると、その手を自分の首元へ回させ、開いた手であいつのドレスの背中——ファスナーをゆっくりと引き下げた。
ジジジ……と静かな部屋に衣類の滑る音が響く。
露わになる、真っ白で滑らかなさくらの背中。夕日のように赤い光が差し込む中で、あいつの可憐な肌はまるで熟した果実のように熱を帯びていた。
「あ……見ちゃ……見ちゃダメぇ……っ、恥ずかしい……っ」
「隠すな。お前のすべては俺の所有物だ。一ミリたりとも隠すことは許さん」
俺はあいつの背中、肩甲骨のくぼみ、そして可憐な腰のラインへと、粘着質に舌を這わせていった。
「んんっ……あぁっ……! アキ……くんっ……あたたかいの……入ってくる……っ」
「さくら……俺以外の男を見るな。俺以外の声を聞くな。俺だけのさくらでいろ」
「……っ、言われなくても……! 私……私、アキくん以外の人なんて……最初から見えてないよぉ……ッ!」
さくらは目元に溢れた涙を拭いもせず、俺の首元に強くしがみついてきた。その小さく柔らかな唇が、お返しとばかりに俺の首筋へと吸い付いてくる。チリッと微かな痛みが走り、あいつなりの小さな「所有権の主張」が刻まれる。
「アキくんも……私だけのものになって……っ! どこにも行かないで……私をずっと、閉じ込めておいて……っ!」
「当然だ。俺の魂も、肉体も、すべてお前だけのものだ」
俺たちは乱れた衣類もそのままに、ソファの上で深く、密着するように抱き合い、互いの口内に舌を絡め合わせた。何度離しても、吸い寄せるように再び重なり合う唇。舌と舌が絡み合い、甘い唾液の音が途切れることなく部屋を満たしていく。
「んむ……ッ……ふぁ……っ……アキ……くん……大好き……っ」
「俺もお前を愛している。死んでも離さん」
下階からかすかに聞こえる文化祭の狂騒すら、二人だけの絶対聖域を彩るBGMに過ぎなかった。15禁ギリギリの濃密で熱い愛の鎖で結ばれた俺たちは、放課後のチャイムが鳴り響くまで、密室の中で甘く狂おしい時間を貪り続けるのだった――。
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