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虹の彼方と異世界クロスオーバー 〜アニメの勇者+αと共同生活はじめました〜  作者: 高橋聖
第七章 クリスマス編

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7-3 帰れるかもしれない

 何が完成したのかは知らないが、こんなに声高に宣言するということは、何か大きなものが完成したのだろう。そう思ったカナタは、チハヤの相手を両親に任せ、セルアたち四人にタカトもプラスして、計六人でリゲルの地下室を訪れた。

 地下室は以前と比べて、実験道具とメモ用紙だらけでごちゃついてはいるものの、かなり美しくなっていた。最後にカナタが入ったのが、去年の大掃除。その時は段ボールとホコリとクモの巣と、茶色くて素早いアイツだらけで「二度と入るか」となっていたが、それがまぁ、なんという変わりよう。


「……で、何が完成したんだ?」


 全員が地下室に入りきり、出入口の床ハッチを閉めたところでセルアが尋ねる。


「これだ」


 とリゲルは皆の前に完成した『鍵』を差し出した。


「これって……」


「mr.タカトの『key』が役に立ったよ。これで俺らは、もといたthe worldにcan go home」


 彼らの長きにわたる悲願が、ようやく叶えられることになりそうだ。

 科学先進都市『地下都市』製の『鍵』のプロトタイプと、偶然にも出会った世界間を渡るという性質を持ったタカトの『鍵』をかけ合わせることによって、完全版ともいえる『鍵』を生み出したのだ。地下都市が何年、何百人と科学者を動員しても中々完成にはたどり着けなかったことを、一人で成し遂げてしまったのだ。


 ハロウィンの数日前にこの世界に到着して、別世界の自分からの手紙を読んで、初対面の機械人間と接触し、ハロウィンで仲間たちが楽しそうに遊びに出かける時でさえ地下室に籠って開発を続けていたのは、全部この瞬間のためだった。彼らの顔に灯る喜びの光を見て、彼は思う。


 ――――俺の研究で誰かをsmileにする。really、happyなことだ。


「あ、待って」


 マキナのその何か気づいたような呟きに、六人は注目する。


「その鍵って、一つしかないの?」


「まぁ、 that's true」


「じゃあ、タカトはどうするの? 私たちとは出身の世界が違うわけだし…… 使い回しができるなら別だけど……」


 心配そうに、マキナはタカトの顔を上目で見つめる。だが彼は、


「心配ない。ワタシは先日、処刑人協会を、追放された。世界〇八三三に、ワタシの居場所など、もう無い」


 まさか、そんなことになっていたとはと、誰もが驚いた。それと同時に自分たちだけ帰る申し訳なさと、行き場を失った彼を心配する気持ちがより一層高まったかのように感じられた。


「まあ、気にするな。しばらくは、この家に住める、という話になっている、からな」


 実際、タカトは機械人間であるので食事は必要ないし、バッテリーも半永久的に稼働し続けるものなので、電気を食うこともない。そんなこともあってか、春晴家はもう一人の子供的なポジションで迎え入れるつもりだった。


「そういうことなら、私たちは一旦向こうの世界に帰りましょう。……また、戻って来れるんですよね?」


「一度the underground cityに戻って、mass productionができるか試してみる」


 カナタはいつの間にか、持っていた単語帳の索引で「mass production」を調べていた。


「量産……やっぱり、時間はかかるよね」


「that might be the case。だが言うてone……two weekもあればできるだろう」


 それを聞いて、マキナは少し心配になった。


 ――――二週間か……文化祭までに帰って来れるといいけど。


「じゃあ、各自着替えて、必要なものだけ持って三〇分後にここに集まろう」


 セルアのその言葉で、彼らは一度解散した。各々自分の部屋に戻った。

 いつぶりかの「本来の衣装」。いつも共に戦った杖、グローブ、剣。ブレスレット、イヤリング、ペンダント、指輪にはめ込まれた魔法石。それと、この世界で手に入れたお気に入りの物。

 もう一つ、セルアにはやることがあった。バイト先の店長へ、しばらく出勤できない旨を一報いれておかねばならない。



 **********



 五人の準備が整った。再び地下室に集合したら、リゲルは『鍵』を片手に口を開く。


「『世界〇〇〇〇 惑星テルス リングル大陸 シラ王国 キュージ』解錠」


 『鍵』を空に差した。確かに、『鍵』は空に差さった。だが、反応がおかしかった。普通ならバチチと音を立てて『扉』が生成されるはずだが、今回は違う。電気の稲妻が発生し、『鍵』は粉々に砕け散った。


「……え?」


「whats?! そんなはずは……why……? a week agoにはconnectedだったのに……」


 その時だった。ラーシャの右目に、とてつもない痛みが走った。彼女は思わず手を当ててうずくまる。


「ラーシャ、大丈夫か?!」


 ゴルダンが聞いても、彼女は荒く息を吐くだけで、全く動けそうもないし口を利くこともできなかった。

 だが、瞳の奥で見える。毒々しく渦巻く、エネルギーの塊を。それが何か分かったとき、ラーシャは痛みから解放された。


「これっ……黒魔法石由来の……魔力……」


 息も途切れ途切れに、感じ取ったことをそのまま口にした。やっと体が動かせそうだったので、這ってすぐそばのソファに、彼女は横になる。


「く、黒魔法石って……」


「あぁ。明らかに、魔王軍が介入している」


 黒魔法石、約七ヶ月前にラーシャが説明した「色によって特性の異なる魔法石」のうちの一つ。他の魔法石より手軽に扱える上に強力な反面、人の欲望や悪意を異常なまでにに増幅させる能力を持っている。それ故に黒魔法石は厳しく取り締まられており、市場に出回っているのは非認可のもののみ。魔王軍をはじめとする反社会勢力御用達の魔法石でもある。


 それを耳にして速攻、リゲルはスーパーAI搭載のスーパー虫眼鏡で原因を探り始めた。意外にも、それはすぐに分かった。


「probably、魔王軍が世界〇〇〇〇にblock magicをuseしたのだろう」


 そう言われても、ブロック魔術とは何なのか、カナタたちはよく分かっていなかった。疑問符を頭の上に浮かべる彼らを見かねて、リゲルは解説を深堀る。


「つまりだ。世界〇〇〇〇へheading toするためのroadが封鎖されて通れない、ってワケ」


 それがあってようやく、彼らは納得げだった。


「いよいよ本格的にアイツら倒さなきゃだね」


「そうね」


「俺はもうちょい『the key』のImprovementに努めることにさせてもらう。perhaps、抜け道があるかも」


「その方針で頼む。じゃあ、今日はここで解散にしよう」


 やはり、セルアが一番まとめ役に適しているように思える。

 彼の言葉でこの場は締めくくられ、彼らは順番に地下室を出て、そのまま寝室へ、リビングへそれぞれ向かった。


 カナタがリビングに戻った時には、チハヤはすでにソファで寝ていた。


 「…………。明日一日でどうにかなるかな……」


 彼女への対応に、カナタはまた、頭を悩ませるのだった。

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