2-4 試験対策勉強会
高校に面談に行った次の日の夜、夕食を済ませた春晴家のリビングは電気が消えていた。そこに突如ロック調の音楽が鳴り響く。
「これより、講師陣の入場を行います!」
タイチのアナウンスでリビングのドアが開いた。ドアの向こうからは廊下の光が差す。
「中学2年生にして中学校と高一の全ての範囲を網羅、最近高二の範囲に手をつけ始めた秀才! 春晴カナターーー!!!」
プロレスラーの入場のようなタイチの掛け声でカナタが部屋に入った。
「気恥ずかしいからやめて」
「続きまして、異世界において教師経験あり、僧侶! ラーシャ・マグナーーー!!!」
「僧侶ではなく司教なのですが」
またもやプロレスラーの入場のような掛け声で、にこやかな顔をしたラーシャが部屋に入った。
その後すぐさま音楽が止まり、部屋の電気がついた。
「それではこれよりマキナ・アーロウさんの試験対策勉強会を始めます。よろしくお願いします。」
スン、といつものテンションに戻ったタイチは机に正座して挨拶をした。
「なんだったのさっきの時間」
若干冷め気味のカナタが問いかけた。
「形から入るってやつだよ。テンションあがるだろ?」
「いや別に…」
「まあまあ、とにかく始めましょう。マキナちゃん、どこか分からない場所はありますか?」
「全部。国語と社会?は特にわかんない」
「ですよねぇ...」
「やっぱ順番にやるっきゃないか。じゃあまず漢字から覚えようか」
カナタはドリルのページを少しめくり、小学校1年生の漢字80字すべてが載っているページを開いた。
「ここからここまで、書き順と読み方を確認しながらノートに10回ずつ書いて」
カナタページの端から端を指でさして説明した。
「これ全部ね...よし、頑張ろ」
勉強を始めたマキナ。始めてから10分経つ頃、カナタはマキナの横で先日マキナがサユコとやったミニテストの結果を見ていた。
(小4の割り算までの計算はほぼ完璧。英語も完璧、あっちの主言語だからかな。化学も魔法と関わるものだから基礎は完璧…)
カナタがそう考えながらプリントをめくっている頃、マキナに「まじまじと見られたら集中できない」と言われたタイチやセルアらは別の部屋に行ってしまった。
一通り見終えたカナタはマキナの方をチラッと見た。(今やってるのは「石」...次は「赤」...とすると)
「マキナそこ縦じゃなくて横が先」
マキナが縦に線を引こうと鉛筆を紙に当てたその瞬間にカナタは指摘した。
「うそ!? なんでわかったの?」
「俺もそこよく間違えてたから」
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集中して物事に取り組んでいると時間はすぐに経ってしまうものだ。電子時計は「ピッピッ」と23時を告げた。
「今日はそこまでにして、もう寝よう」
カナタが言った。
「え? いいの? あと10文字くらい残ってるけど」
「いいのいいの。根詰めて体調崩したら元も子もないし。ラーシャも起きて、上で寝るよ」
マキナの横ですやすやと寝息を立てているラーシャをカナタはツンツンして起こした。
「あっ、ああ。ごめんなさい」
ラーシャは寝起きで取り乱している。
「さ、あがろ」
3人は二階へ上がり、ラーシャとマキナは女子部屋に、カナタは自分の部屋に入った。
自室のベッドに入り、リモコンで部屋の電気を消したカナタはアニメで描写されたマキナの実力について考えていた。
(『エピックランク魔術師認定試験』に満点一発合格...多分要領はいい方なんだよなぁ...)
そう考えているうちにカナタは眠りについた。
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翌朝。制服を着たカナタは、マキナと話をしていた。
「俺がいない間は昨日みたいに漢字を進めといて」
「わかった」
「俺が帰ったら今日は数学を教えるから」
「わかった」
「もしよく分からないことがあったら、そこに付箋貼っといて」
「了解!」
「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
「あ、最後に一つ...父さん! 叔父さんから定期テストと入試の過去問、貰えるだけ貰っといて!」
「へーい。言っとくわー」
タイチはリビングのソファから返事をした。
「よし、じゃあ今度こそ行ってくる」
こうして今日も新しい一日が始まる。そして今日は演劇部のオーディションの日でもある。




