【朗報】雨宮大河さん、人間卒業。
記念すべき50話目!
皆様のご愛読のおかげでここまで来れました。
ありがとうございます!
タイガが翼を広げ、高く飛ぶ。
『面白い、やってみよ』
ヘカトンケイルが赤い腕を飛ばす。その腕は、正確にタイガに向かって飛ぶ。
「タイガさん!」
しかしタイガはそれをよけようとせず、
『オオオォォォ!』
右腕の竜を前方に伸ばすと、なんと竜が巨大化し、
『オオオアアアァァァ!』
右腕の竜は、あっさりと赤い腕をかみ砕いてしまった。
続いて飛ぶ青い腕も、言うまでもなく……
『アアアアアア!』
まるで菓子でも食べるように、いともたやすく砕かれる。
タイガの放つ咆哮は、まさに竜と聞き紛うようなものだった。
『バカな!?』
「な、なんて力……!?」
さらにタイガは、翼を大きく羽ばたかせると、小さなトゲが無数に飛び出した。
その光景は、ダークネスビットに似ている。
『おのれ!』
余った腕で防ごうとするヘカトンケイル。
「させないよ!」
リエータは魔導銃を取り出し、その腕を正確に撃ち抜く。
「はぁ~~~っ!」
さらにツバキは跳びあがり、腕を蹴り飛ばす。
そこへタイガのトゲが、無数に襲い掛かる。
『ムウゥン!』
さらに右腕の竜から、巨大なシャドウレーザーを発射。
ヘカトンケイルの腕を正確に貫き、破壊した。
「す、すごい……」
その様を、ぽかぁんと口を開けて眺める二人。
『小癪な真似を……!』
ヘカトンケイルの三つの頭に、強大なエネルギーが集まっていく……
「あれは……!?」
「タイガ君!」
『仕方ない……この技は……使いたくはなかったが……』
そしてそのエネルギーは強大な光となり……
『堕ちよ!』
巨大な光線となって放出される……
……はず、だった。
『!?』
しかし、それよりも先に、タイガの体から伸びた無数の触手のような蛇がまとわりつき、
ヘカトンケイルの動きを止める。
そしてタイガが、右腕を伸ばすと……
『オオオォォォ……!』
黒い闇の中に、ヘカトンケイルが捕らわれる。
ギリギリギリギリと、締め付けるような音が鳴る。
そして……
『ウオオオォォォォ……!』
タイガが勢いよく両腕を伸ばすと、手の部分の竜が巨大化。そして球体を挟み撃ちにし……
勢いよく竜が噛みつく。
『オアアアアアア!』
そしてその球体を握りつぶした。
握りつぶした瞬間、一瞬だけヘカトンケイルが存在して……
『これが……人の子の力……まさか……敗れ……去ろう……など……!』
そのまま消滅した。
「た、タイガ……さん……」
「なんて……なんて力なの……!?」
しかし、目の前にいるタイガは、本当にタイガなんだろうか。
そしてその『悪魔』がこちらを見る。
「!?」
反射的に構えるリエータ。
『オ、オイ!待テッテ!俺ダヨ俺!タイガ!』
いかにも悪魔っぽい見た目と声で、オドオドと慌てる。
まぁ、タイガの面影はメガネと髪型に残っていたのだが。
「や、やっぱりタイガさん……ですよね?」
「ほ、本当に……そうなの?」
『アァ。今変身解クカラ、少シ待ッテテクレ』
「でも、変身時間まだあるみたいだよ?」
と、リエータが言うが、タイガは早々と変身を解いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ぜえぇ……ぜえぇ……!」
瞬間、青息吐息。
「た、タイガさん、しっかり!」
「あ、あぁ……悪い……にしても、ツバキが見つけたアイテムが……
まさか……そういう……・アイテム、とはな……」
初めての超覚醒。初めての覚醒スキルだ。
本当は……
「うおおお!すげええええ!体中が変身してる!?」
「うおおお!?なんちゅう火力だよ!」
「やべえええ!遠距離攻撃楽しい~~~!」
……と、テンション上がりっぱなしでほっとんど何も覚えてない。
なんて、今更言えるはずもないよな……
にしても……
「お、お前……こ、こんな……負担……かかるスキル……」
「え?なんて?」
……2分後。
「あ~、やっと体力が戻ってきた」
「よかったです。タイガさん」
「本当体力ないんだね、タイガ君って……」
しかし本当、ひどく疲れた。
使いどころは本当に考えないといけないだろう。
一方的に蹂躙できるぐらいの火力は魅力的だが。
「あっお二人とも」
ツバキが何かを見つけた。それは、大きな宝箱だった。
ゆっくりとそれに近付くと……
『見事だ、人の子らよ』
「?」
再びブリアレオスたちの声が聞こえてきた。
『久しぶりに全力を持って楽しませてもらった』
『これはその褒美だ。遠慮なく受け取るがいい』
『お前たちのこれからの活躍も、期待しておるぞ』
声は聞こえなくなった。
「……」
俺はその声が聞こえなくなってから、ゆっくりと箱を開けると……
「「「おぉ~~~!」」」
中に入っていたのは、桃色の装具。深い緑色の忍び装束のような防具。
そしてスキルの巻物2枚。
装備、スキルの順で確認してみる。
練気装具アテナ
【戦いと知恵の女神の力が込められたとされる装具。
腕力、知力が20増加する。超覚醒可能】
獣装束ライラプス
【どんな敵も逃がさないと言われる猟犬の神の力が宿る忍び装束。
器用さ、素早さが20増加する。超覚醒可能】
赤き巨人の腕 自動スキル
【攻撃を与えた際、たまに炎属性の追加ダメージを与える。
炎属性弱点の相手の場合、追加ダメージ発生確率が増える。
発動回数が一定以上でレベルアップ。確率が増加する】
青き巨人の腕 自動スキル
【攻撃を与えた際、たまに水属性の追加ダメージを与える。
水属性弱点の相手の場合、追加ダメージ発生確率が増える。
発動回数が一定以上でレベルアップ。確率が増加する】
どれも、一級品の性能だ……
とりあえずこれをどう分けるか、だが……
まず、赤き巨人の腕はリエータでいいだろう。炎属性だし。
そして青き巨人の腕は水得意なエルかアレンに渡そう。
俺への褒美は……まぁ、さっきの超覚醒で。
残りの装備だが……
「私……ですか?」
「あぁ、装具はお前しか使えないし、装束もさっき、ディアナとアレンに連絡したら……」
ディアナ(DianaTaiken):前も言ったけど、ウチは甲冑フェバってるからいいよ!
アレン(Allen0327):僕は別によけ続ければいいだけですから、防具はあまり必要ありません
と、ギルドメッセージが来た。
「だ、そうだ」
「だ、そうだって……まぁ、ツバキちゃんツムジニンジャだし、合うんじゃない?」
「……わかりました。私ばかり強化が来て申し訳ないですが……」
忍び装束に、ツバキが袖を通し、装具を身に着ける。
それと同時に、ツバキの口元を黒い布が覆った。
「おぉ~、いかにもくのいちって感じでかっこいいね!」
「あ、ありがとうございます!」
「息苦しくはないか?」
「大丈夫です。普通に息できます」
軽くフットワークを踏むツバキ。どうやら気に入ったようだ。
「ツバキちゃん、どんどん強くなっていくね。これは負けてられないなぁ」
「あぁ、そうだな」
その様子を満足げに見つめる俺とリエータ。
それにしても……本当にレックスから救い出せてよかった。
密林地帯の洞窟の入り口に戻ってくると、そこに……
「う、嘘……やろ……!?」
「坊ちゃま、残念ながら紛れもない事実です。ツバキ様の格好を見ればわかります」
どうやら一瞬で巨人の眠る城を攻略したことを把握したようだ。
「わ、ワシですら……一発アウトやったんやぞ……!
やのにお前らがどうしてクリアできたんや……?」
「お言葉ですが坊ちゃま、才能の差では」
冷静にえげつないことを言うシルビア。
「あ、あはは、実は、タイガ君が……」
言いかけたところで、言葉を止める。
……そうだ。イベントの日まで、世界竜の逆鱗は隠すべきだ。
「……た、タイガ君の、頭の良さのおかげだよね。うん」
やめてくれ、その『あぁ、そうだぞ』とか言えない褒め方。
「はぁ~……メガネは伊達やないってことやなぁ」
「万能ですよ。タイガさんは」
ツバキも場の空気を読んで取り繕う。
「……」
しかしシルビアは、何かを察したようだ。
「坊ちゃま、わたくしたちも、後れは取れませんね」
「おう、せやな。レベルはワシらの方が高いんや。同じ闇使いとして、負けてられっかい」
わかりやすく腕を交差させる。
「特にツバキ!お前、いつか絶対振り向かせたるからな!」
「……なんで、私なんですか?それに、今あなたの方向いてるんですけど……」
「……!?」
――お前を、絶対、振り向かせたるからなぁ(恍惚な顔
――今、あなたの方を向いているんですけど……♥
「そう言う意味で言ったわけじゃないだろツバキ」
「え?そうなんですか?
ごめんなさい。男の人とお付き合いしたことがなくて、こういう事には疎くて……」
朴念仁(まぁ当然なんだが)のツバキ。
「「……」」
恋愛脳のリエータとシルビア。……お前もかよリエータ!
「と、とりあえず、戻るぞシルビア」
「え?は、はい。坊ちゃま」
カインとシルビアは去っていった。
「あの2人、なんでここにいたんだろうな?」
「さぁ……まぁ差し詰め……」
「巨人の眠る城の攻略に失敗したからものすごい激闘の末に失敗した……
って、錯覚させるために、時間稼ぎしといたとか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ぶえ~っくしょい!」
カインが大きなくしゃみ。
「坊ちゃま、顔に並ぶほどやかましいくしゃみはおやめください」
「じゃかぁしいわ!誰かが噂しとんやろうが!」
カインから顔をそらし、シルビアは……
「タイガ様のあの装備……超覚醒している……間違いないはず」
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ギルドホームに戻って……
「「「「……」」」」
『ドウダ?コウイウスキル、切リ札ニ出来ルト思ワナイカ?』
早速、世界竜の逆鱗を披露してみる。
「……ま、まぁ……切り札としては、申し分ないだろうね。で、でも……」
「た、タイちゃん……」
蒸気を噴き出す俺を見て……
「HRKPならない?」
「た、多分、疲労困憊って意味だと思います……」
『……切リ札ヲ切リ札デナクスナヨゥ……』
「その蒸気、疲労を表してたんですね……」
ドン引きのアレン。
「あ~、このギルド、人間をやめたのが二人もいるんだ……」
「でも、味方ならいいですよね。味方なら……」
「それは違いないねバキっちゃん」
…………
「てかバキっちゃん、ちゃけば見た目変わってね!?」
「おっそ!?あたしたちが戻ってきてから結構経ってるよ!?」
変身を解いて2分後……
「で、そっちは?そっちは何か収穫があったか?」
「うん。まぁ色々あったよ。エルとアレンのレベルも30超えたしね」
「じゃ、互いに報告するか。なにがあったか」
俺たちはゆっくりと、自分の椅子に座った。




