表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

オールオッケー!

「大丈夫、千愛姫ちゃん?」


リリアーヌ様の声に眼を開けたら、そこは…



草原が広がる世界だった。



肌に触れる少しチクリとした草に、いつの間にか、私は草原に寝かされていたことに気が付き、ゆっくり起き上がると、そこは周囲360度地平線が見える草原だった。



「…すごい。」

思わず出た声に、リリアーヌ様は頷きながら


「でしょう?ここは緑と水に恵まれた世界なの。その頂点にいるのが…」と言って、リリアーヌ様が眼を向けた先には、遠くを見ている後姿のあの男がいる。


「竜が…この世界の頂点なんだ。」


「う~ん、どう説明したらいいのかな、正確に言うと竜を祖先に持つ人間が、この世界を治めているの。」


「じゃぁ…あいつみたいに、竜と人間の二つの姿を持っているんだ。」


「う~ん、それもちょっと違うの。この世界に住む人間は、竜の姿は持っていないのよ。でも時折…生まれるのよ。王家に…。」


「ぁ、あの男…王家の人間?」


「えぇ…でもエリックが、竜になれるの知っているのは、エリックの亡くなった両親とたぶん私だけだったと思うわ。」


「えっ?…どうして?」


私の問いに答えたのは…あいつだった。


「竜の血が表に出るものは…凶暴だと言われている。殺戮を繰り返す化け物だとな。もし竜の姿を持つ者だと知られれば、封印の槍で一生檻の中か…赤ん坊の頃に殺されるかだ。」


確かにあの大きさは迫力があって、怖かったけど…。

今の姿のこいつより、竜の姿のほうが…私としては好みだったけどな。まぁ…職業柄ってのもあるかな。


でも…


竜になるのは…本人が願ったことじゃないのに、封印の槍で一生檻の中か…赤ん坊の頃に殺されるか、だなんて…

ほんの少しだけど…ほんとに、ほんの少しだけどあいつが可哀想に思えて、その運命に腹が立つ。


「バカみたいだね。大きいから凶暴と決め付けるなんてナンセンス!」


「うんうん、そう…バカみたいなのよ。」


私とリリアーヌ様のやり取りを聞いていたあいつは私達を見て


「いや…別にいいさ。あの姿を見て怖がらない人間なんて、早々いるとは思えない。だから用心していたつもりだった、だが…4日前、気づかれたんだ。いや罠に嵌ったんだ。」




あの…います。…私は好きなんだけどなぁ~。



そんなことを思っていたら、リリアーヌ様が不思議な事を言われた。

「朔の日だったの?」



朔って…月が 太陽と同じ方向にある為に、 太陽の明るさに隠れ、 月が見えない状態のことだよね。

つまり…真っ暗な夜ってことか…でもそれはどういう意味?


きょとんとして聞いている私に

「エリックは…月に一度の朔の日に、意識することなく竜になってしまうの。」


「えっ?」


「だから、幼い頃から体が弱いと言って、あまり外に出なかったんだ。朔の時だけ、外に出ないというのは不自然だろう。」


確かにそうだ。あの大きな体になってしまうし…あぁっ!


「だ、だから!あの処刑場に?」


「あぁ…朔の時はいつもあそこにいたんだ。処刑場のあんな奥まで入ってくる者はいなかったからな。だが朔の日に…わざわざ神殿の奥に置いてある封印の槍を持って、あの処刑場の奥までやってきたのは、俺が竜の姿でいることを知っていたからだとしか思えない。そして…利用された。」


「ロード殺しの犯人にね。」


あいつは地平線を見つめながら…

「あの地平線の向こうに、王宮があるんだ。わずか4日ほどだったが、もう王宮には帰ることできない。ここで、このまま朽ち果てて行くのかと思ったら…寂しかった。」



あいつはゆっくりと振り向き

「諦めが早いとお前なら、そう言って怒りそうだが…封印の槍で人の姿に戻れなくなり、魔法も使えない、体も動けない。ましてや封印の槍を抜くことが出来るのは、異世界の女だけ…そう思うだけで目の前が真っ暗だった。なぜなら、4000年近く異世界から女どころか、男も来ていないんだ。」


あいつはそう言って……私を見た。


「だが…お前が来た。それも女神を連れて…。頼む、力を貸してくれ。ロードを、兄を殺した奴を捕まえたいんだ。」





「いいわ!!」




でもそう言ったのは…私ではない…リリアーヌ様。


あいつは私を見て話していたのに…なんで?!リリアーヌ様!


リリアーヌ様はあいつの話が、余程心に響いたのだろう、鼻を啜りながら

「任せて、千愛姫ちゃんはこの女神リリアーヌが、体が弱いエリックの為に連れてきた異世界の医者ということで、オールオッケー!」



そう言って、リリアーヌ様は眼をキラキラさせ

「やるわよ!千愛姫ちゃん!犯人を捕まえるわよ!」



いや…助けないとは言わないよ、あいつが…あのちょっと上から目線の奴が、【頼む】って言ってんだもん。

でも…あの一応、私にも聞いてよ。リリアーヌ様~




…なにがオールオッケーよ(涙)

まだこの世界の事だって、わかんないのに…どうなるの~!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ