プロローグ 最後の輝き
このジャンルなんて言うんすかね?逆異世界転移?現代転移??
「ブリッツ=フォン=リヒトホーフェン」
俺の名を呼ぶその声は、冬の鋼の様に冷たい。
目の前に並ぶのは侯爵家の騎士、そして奥には俺の父が立っている。
「貴様にも侯爵家の血は流れている。最後くらいは役に立て」
——最後
その言葉だけで分かりきっていた。つまり帰還は期待されていない。
「魔王軍が迫り来ている、お前が足止めをするのだ」
周囲からは下卑た笑いが漏れる。
「ギャハハ! 劣等生が足止めだとよ!」
「火花パチパチでお時間稼ぎですかぁ〜??」
「侯爵家の恥晒しにとっては、せめてもの名誉な死だな」
誰も止めてくれない。
誰も実力を認めない。
昔なら狼の様に吠え噛みついただろうが、もう心は磨耗し腐り落ちた。
俺は生まれついての劣等生だった。
龍の如く炎は出せず。
大魔法使いの様に氷塊は生み出せず。
かと言って雷鳴轟く雷を落とせる訳もなく。
死ぬ気でないなら精々、言われた通り火花パチパチ野郎だよ。あぁ、クソ。だから家族からも虐げれられてんだ。
俺は頭を掻きむしる。
そもそもは俺が授かった固有スキルが意味不明だった事だ。
電気は正直、俺の技量が悪かった。でも残りの2つは何なんだよ
【ジャマー】
【ハック】
教師に聞いても、「こんな物は記録にない」だとさ。
役立たずのスキル、だから俺は侯爵家の貴族の三男でありながら捨て駒と言う訳だ。
「行け」
父はたったそれだけ、別れの挨拶よりも短い最後の命令。
俺は重い足を上げ歩き出す。
前方には魔王軍の先鋒集団。巨大な馬車に魔獣が何体も並び、大地を震わせている。
そしてワイバーンが空を飛び空気を震わす咆哮を放つ。
どう考えたって勝てない、でも俺には逃げる力すらなかった。
——孤立無援、友軍の人間はいるのにおかしな話だよ。
最後くらい、全身全霊、全力の力で光の華を咲かし散ってやる。
捨て駒に使った事を後悔させてやる。
俺は白い息をゆっくりと吐く。
「全魔力解放……全てを灰燼とする我が雷を見よッ」
魂を魔に焚べて魔法を放つ。これが俺の限界。
全身に青白い光が駆け巡り、暴れる魔力が皮膚を焦がし唸る。
「終わりだァア!!!」
——その瞬間、頭の中に聞いた事もない声が響いた。
『Connection Established』
……なんだ?
『Unknown World』
『Coordinate Search』
知らない言葉……? それが頭の中に流れる。
「何が起きて……」
困惑する暇もなく世界は軋む。目の前の空間が歪み亀裂が走る。
「空間の崩壊だっ!!」 「早く止めろ!」
誰かが叫んでいる、でも手遅れだ。俺の身体は光に包まれ動かなくなった。
足元が消え上下左右の概念は崩壊。空は割れ、世界は裏返った。
「ッ!」
激しく何かにぶつかった衝撃で意識は途切れた。
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冷たくざらざらした不快感により覚醒した。
「……ここは? 戦地では無いな? なんだここは?」
ゆっくりと身体を起こすと見た事もない巨大で光り輝く建物に、高速で移動する箱。人々は巨体の俺を避けて歩く。
その時、俺は魔力とは別の強いエネルギーをそこら中から感知した。
鉄の塔に棒を伝う長い紐、その先にある建物からだ。
何だこのパワーは! 俺の身体が歓迎しているぞ!
「まるで……まるで世界が俺に力を貸してくれたかの様に……」
街中の明かりは火ではない、この棒の中を伝って行くエネルギーはもしや電気か……?ならば外側を壊すか。
ん? 思ったよりも硬い。
……ならば中身を直接取り出すまでだ。
一閃。
金属を断つ高い音が夜空に響く。鉄柱はまるで木の枝のように滑らかに裂け、支えを失った電線が火花を散らした。
周りからは悲鳴が聞こえる、だが関係ない。俺にはこれが必要なんだ。
エネルギーを媒介する紐を掴んだ瞬間に強烈に全身が痺れると共に満たされて行くのがわかる。
生まれて初めて、俺の魔力貯蔵庫が溢れて悲鳴を上げて喜んでいる。
「これほどの電気が、世界中に流れている……?そうか、俺は世界を間違えて生まれただけだったのか」
辺りは真っ暗になり、人々は混乱し逃げ惑っている。
でもそんな事はどうでも良かった。人生で初めての快楽だ、髪は青く白く発光し逆立つ。
雲一つ無い夜空の下で雷鳴が轟いた。
なおも、周囲から声が聞こえる。
「化け物だ!」
「目が光ってやがるっ!!」
何を言われようと、この紐は手放したく無い……が。
だがずっとそうはしていられない、赤色に点滅する光を放つ箱が俺の元に何個も迫ってきたのであった。
「これは眩しい……魔導兵器の類か?」
箱から何と人が2人ずつ降りてきたでは無いか。つまり、あの箱は移動用といったところかな?
「その場から動くな! このコスプレ野郎!」
何か握っていると思えば多分だが銃だ。つまり俺に敵意はあるのだな?
「電気……これ程の力があちこちに流れているのだな。にしても俺は歓迎されては無さそうだ」
俺は両手を広げ電気をバチバチと放電し始めた。
一応主人公は善人です。




