いじめっ子にしかえしするのだ(魔王おばば直伝の技で!)
三日間の魔王おばばとの修行キャンプから帰還し、ピアディはすぐにお守りのユキノ君と冒険者ギルドへと向かった。
夏休み子ども冒険者教室の開催もあと数回を残すのみ。
「ぷぅ(いじめっこめ、もはやわれはまけぬ!)」
ユキノ君のもふもふの前脚で抱っこされながら、そーっと子どもたちが訓練している広場を覗く。
仲良しのサナちゃんは剣士に適性があったが、最近になって聖女様が徒手空拳でも強いことを知って体術の訓練も始めている。
壁際でストレッチして柔軟性を高める訓練に余念がない。将来有望な女子である。
(いたのだ、いじめっこ!)
茶色い髪の、ひときわ大きな身体の男の子、マキノ君だ。
しかもストレッチに集中したいサナちゃんの隣にいて、あれこれ話しかけては笑っている。
その笑顔はなかなか無邪気で可愛かったが、ピアディにとっては憎き敵。何か企んでいそうな含みを感じてしまう。
(サナたん、めいわくがってるのだ。くうき読めない系男子というやつなのだ!)
「お、プーじゃん。プー、プー!」
見つかってしまった!
「ぷ、ぷぅ!(われ、プーじゃない! 偉大なる魚人族ピアディなり! 訂正せよ!)」
しかし、いじめっ子男子は強かった。
「プーのくせに生意気なんだよー。プー。プー!」
論理も何もなく言葉の勢いで攻められる。
しかもぐいっと、ユキノ君のお手々のすぐ近くまで顔を寄せられて、ピアディはやっぱりたじたじとなってしまう。
「ピュイッ(ピアディ、がんばれ! まけるな!)」
お守りのユキノ君は子どもたちの喧嘩には入らない。保護者枠で応援するのみだ。
もちろん、ピアディの身に危険が及ぶようならもふもふのお手々からパンチを繰り出すが、ここでは冒険者ギルドの職員たちも目を光らせているのでその辺は安全である。
ピアディはもう、やられるばかりのいたいけなウパルパではない。
この三日間の魔王ジューアお姉様との| 聞くも涙、語るも涙の《たのしかった》修行の成果を見せねばならない!
泣きそうになるのを堪えて、キッといじめっ子マキノ君を睨みつけた。
「ぷぅっ(いじわる! いじめっこ!)」
「へーんだ。それがどうしたー?」
「ぷぅ!(われにしつれいなこと言ったの謝れ! 謝るのだ! さもなくば!)」
「な、なんだよ?」
ピアディはぷぅっとお腹に力を込めた。
半透明の身体が、虹色キラキラをまとったネオンイエローの魔力を帯びてくる。
せーの、とかけ声をかける勢いで思いっきり息を吸い込み、そして。
「ぷぅ!(好きな子に必ずフられる呪いをかけてやるのだー!)」
「!?」
男の子が咄嗟に見たのはサナちゃんだ。サナちゃん本人は「こっち見んな」と手をしっしっと振っている。
呪いのかけ方は、魔王おばばことジューアお姉様の直伝だ。三日間のキャンプ修行の間にみっちりしっかりコツを仕込まれた。間違いなくきっちり仕掛けてやる。
「ぷぅ(みっつ数えるあいだに決めるのだ! さーん、にーい、いーち……)」
「わー! ごめん! ごめんなさい! オレが悪かったですー!」
「ぷぅ!(誠意がかんじられぬのだ!)」
「ほんとうにごめんなさい!」
それから必死にいじめっ子は頭をペコペコ下げて謝ってきた。子どもにできる精一杯の謝罪だろう。
「ぷぅ(われを当て馬にするとは、身のほど知らずにもほどがあるのだ)」
「わあ、ピアディさますごーい! うざったいやつで、あたしもこまってたのー」
「ぷぅ(うむ。これでいじめっ子などもはや恐るるにたらず!)」
と思っていたが、甘かった。
いじめっ子のマキノ君はそのときだけはピアディに謝ってしおらしくしていた。
ところが、休憩時間に姿を消してなかなか戻ってこないと思ったら、強力な助っ人を連れて戻ってきたのである。




