ココナッツうまうまキャンプで秘伝ゲットなのだ
キャンプ地の孤島は小さな島だったが、海に行けば海産物がいくらでも獲れそうだったし、島の中には食べられる果物や草も多かった。
初日からピアディはユキノ君やおばばと一緒に果物集めだ。
今の夏の暑い時期はココナッツやマンゴーがよく熟れている。少し奥に行けば野生のパイナップルやバナナの群生地もあったので、滞在中の食糧は十分だ。
昼は日差しが強くて暑いので小屋の中や木陰、水場の近くなどであまり動かず、夕方になって気温が落ちてきてからが活動の本番である。
「ぷぅ(ジューアおねえたまー。この辺のココナッツ、いいかんじなのだー)」
「よし、手頃な実をいくつか採ってくるように」
綿毛竜のユキノ君のお口にぱくっとくわえられて、椰子の木の上部へと飛んで近づく。
下に落としてもおばばが受け止めてくれただろうが、数が多くなると危ない。
ユキノ君のもふもふの前脚で持てる三つぐらいずつ採って、地上に戻ることにした。
「ピュイッ(うーん、マイルドでじゅーしー)」
ココナッツの実は楕円形で緑色の皮に覆われている。大きさは子どもの頭ぐらい。ピアディの何倍も大きい。
ユキノ君は皮ごと口に含んで、豪快にバリバリ噛み砕いて食べていた。綿毛竜は草食なのだ。
「ぷぅ(おねえたま、これはどうやってたべるのだ?)」
「まずは皮を剥く。汁を飲むならストロー用の小さな穴を開けるのだが、果肉を食す場合は」
と魔法で作った透明な樹脂製の包丁でザクっと真っ二つ。
片方をピアディに差し出してきた。
「飲んでみよ。良い水分補給になる」
「ぷぅ」
恐る恐る、おばばが支えてくれているココナッツの半身によじよじして、中身を覗き込む。
外側の緑の皮を剥くと、濃いめの茶色の皮がある。その内側に白い果肉。
一番真ん中にはちょっとだけ白く濁った透明な液体がなみなみと。
ドキドキしながら顔を突っ込んで、その液体を舐めてみた。
甘い! いつもおうちで食べさせてもらっている果物のような強い甘みではなかったけれど、ほんのり優しい甘みがある。
ちょっとだけオイリーな不思議な味わいだ。
「ぷぅ!(おいしいのだ!)」
夢中になってココナッツ水を飲み干すピアディだ。
魔王おばばのジューアお姉様も自分用にストローを刺したココナッツからごくごく飲んでは、満足げな顔をしている。
今日も昼間は暑かった。温いジュースだが、かえって身体を冷やさず水分補給できて良い。
「飲み終わったら、果肉をだな」
今度はナイフに持ち替えて、実の内側の白い果肉を削り取っていく。
ピアディ用に細かく小さく切り分けて、再び実の中へ戻した。
「ぷぅ(いただきますなのだー)」
待ってましたとばかりに、果肉にかぶりついた。
生のココナッツは果肉もあまり強い風味はない。少し脂っ気のある、ほんのりと甘い味なのは汁と同じ。
もぐもぐすると、しゃくしゃくしたフレッシュな食感。
「ぷぅ(くせになる味なのだ。お持ち帰りしてまた食べたいのだ)」
「ならばいくつか、土産に持ち帰ろうか」
「ぷぅ!」
微笑む魔王おばばも、ピアディやユキノ君に付き合ってココナッツだけを飲み、食べている。
「ぷぅ(おねえたま、ごはんはよいの? われに気をつかわずお魚さんたべてもよいのよ?)」
「粗食には慣れている。気にせずとも良い」
「ぷぅ?」
とこのようなキャンプ生活を続けて三日目の夜。
小屋の脇で焚き火しながら、ユキノ君のもふもふ至福のソファに身を預ける魔王おばばと、おばばに抱っこされるピアディ。
もうこの三日間ですっかり二人は仲良しだ。
意外と性格が合うことも判明し、これまでのいがみ合いが嘘のようにたくさんたくさん、おしゃべりした。
「さて、ピアディよ。お前をいじめたいじめっ子対策に、我が真なる秘伝を伝授してやろう」
「ぷぅ?(ひでん?)」
ニヤリとおばばが笑った。前はとても怖かったけれど、仲直りした今ではとても頼もしい表情である。
「単なる脅しにも便利だし、本当に使っても良い。まずは相手の弱点を掴むところから……」
そうして可愛いウパルパはこの夜、恐るべき魔王様の秘伝を教え込まれてしまったのである。




