第12話 ザ! むにゅむにゅ
ナオ達BL&HEN隊連合軍が、ジュディ&フライの軍を倒した頃、別の場所でまた新たな戦いが始まろうとしていた。
ひとり森の中を彷徨っているメルク。
「みんなどこ行ったんですか〜? 僕ひとりじゃ心細いですよ〜! ユーキさ〜ん! アイバーン様〜!」
そんなメルクの前に、ひとりの少年が現れる。
「え⁉︎ 子供⁉︎」
その少年は地面に座り込み、ひたすら泥団子を作っていた。
「こんな所で何をしてるんですか?」
「見て分からない? 泥団子を作ってるんだよ」
「泥団子? ああ〜、完全な球体になるようにしたりピカピカにしたりするやつですか?」
「そうだよ。綺麗な丸にするのが凄く難しくてね……まんまるに出来たらね……」
「出来たら?」
「球の威力が増すんだよ!」
地面にいくつか置いてあった泥団子を手に持ち、いきなりメルク目がけて投げつける少年。
「危なっ!」
かろうじてかわした球は後ろの木に当たり、幹を突き抜けて行った。
「いい〜っ⁉︎ な、何て威力ですか? ホントにただの泥団子ですか⁉︎」
「ただの泥団子だよ? ただし僕の固有能力、泥弾弧で強化された泥団子だけどね!」
「やはり魔族! 僕はメルク! あなたは?」
「僕はマッド! 七星魔天ザムス様の配下のマッドだ!」
地面に置いてある泥団子をどんどん投げ付けるマッド。
それを何とかかわすメルク。
側から見れば子供の遊びである。
「あ‼︎」
突如マッドの手が止まる。
「泥団子無くなっちゃった……」
それを見たメルクが、具現化させた弓を構える。
「ね、ねえ! 僕と一緒に泥団子作らない?」
「いや、作りませんよ!」
メルクが泥遊びをしている頃、同じく森の中を歩いていたメリアの前に、農家のような格好をしたひとりの男が現れる。
巨大なリュックを傍に置いたその男は、座り込んでリンゴを食べていた。
「あなたは……あなたも、魔族なのか?」
余りにも平和そうな姿を見たメリアが思わずたずねる。
「ん? そだぞ。オラはザムス様の配下のシードだぞ。どうだ? こっちに来て一緒にリンゴ食わねぇか?」
「いや、遠慮しておこう。敵地で敵に差し出された物を口に入れる程、私は愚かではない」
「はあ〜。めんこい顔して、お堅いおなごだなぁ〜」
胸のペンダントを引き、具現化させた槍を構えるメリア。
「黙って通すなら見逃す! だが、邪魔をすると言うなら力ずくで押し通る!」
「お、おっかねぇおなごだなぁ〜。オラ、戦いはあまり好きでねぇが、ディア様の為にも黙って通す訳にはいかねぇだ!」
真剣な表情になり、すっと立ち上がるシード。
警戒するメリア。
次の瞬間、手に持っていた食べかけのリンゴを大急ぎで平らげるシード。
「いや、まだ食べるのかっ⁉︎」
メリアが一瞬気を抜いた時、口の中からメリア目がけて何かを飛ばしたシード。
「なっ⁉︎」
驚異的な反応で咄嗟に槍でその何かを弾き飛ばしたメリア。
(何かを飛ばした? ふくみ針? いや、それにしては質量も威力も大き過ぎる!)
「あれをかわしただか? すんげぇ反射神経だなぁ。なら仕方ねぇ」
メリアが追撃を警戒していると、何とシードはまた座り込んで、今度はマスカットを食べ出した。
「んなっ⁉︎ いったいどういうつもりだ⁉︎ 戦いの最中に!」
「どうもこうも、オラは果物が大好きでよ〜」
「食べたければ戦いが終わった後に食べればい……」
メリアが言い終わる前に、また何かを口から飛ばしたシード。
「クッ!」
今度は上体だけでかわすメリア。
「人が喋ってる途中で……」
だがお構い無しに、次々に何かを飛ばすシード。
「クッ! このぉ!」
怒りながらも、全ての物体を弾き飛ばしたメリア。
「はぁ〜ん。なるほどな」
何かに気付いたメリアがニヤリと笑う。
「な、何だべ?」
「今の攻撃は数こそ多いが、威力自体は先程より遥かに劣る。つまりお前の能力は、食べた果物の種を強化させて飛ばす事だろう⁉︎」
「んなぁっ⁉︎ よ、よくぞ見破っただ。そう、オラの固有能力は飛種死……食べた果物の種に魔力を込めて飛ばす能力だー!」
シードの言葉に、何故か驚いた表情のメリア。
「いや、自分で言いながら余りにも馬鹿馬鹿しくて笑いそうになったが、まさか本当に当たっていたとはな……」
「酷いだす!」
同じ頃、森の中を迷っているクラフトもまた、別の魔族と遭遇していた。
「ノアちゃんやーい! ジアちゃんやーい! どこだー!」
2人の名を叫びながら歩いていたクラフトだったが、ふと立ち止まり空を見上げる。
「あれ? 俺、何してたんだっけ……?」
おかしな事を呟いたクラフトが、ブンブンと首を振る。
「いやいやいや! 何バカな事言ってんだ俺様は⁉︎ ノアちゃんとジアちゃんを取り戻しに来たんだろうが!」
気合いを入れ直して歩き出したクラフトだったが、また少し歩いた後に立ち止まり、ボーッとして何かを呟き始めた。
「そういえば昨日の晩飯、何食ったっけな〜? 早く帰って美味いメシを……いや、違うだろ!」
自分の頬をバチーンと叩くクラフト。
「何だ⁉︎ 頭がうまく回らねぇ⁉︎ ちゃんと朝飯食ったんだがなぁ?」
「フッフッフッ。それは自分の能力だよ」
「誰だっ⁉︎」
クラフトの前にひとりの男が現れる。
「何だテメェは? テメェもあの……何だっけ?」
「自分の名前はハーディ。あの……あれだ! 七せい……何とかの第三? に、二位、ザ……む? むにゅむにゅの配下だ!」
「いや、自分の上司の名前忘れんなよ!」
「ザ! むにゅむにゅだ!」
「な訳ねーだろっ!」




