第10話 どうも〜! パル&チルで〜す!
危うく実の妹に売り飛ばされかけたパルだったが、隠し持っていたお菓子により何とかチルを買収したのだった。
「売られそうになった上にお菓子まで取られて、割に合わないのよ!」
「まだまだしぼり取るの〜」
「恐ろしい事を宣言しやがったのよ!」
「フォッ。そっちの娘を置いて行ってくれるなら、妹の方は通してやっても構わんぞぃ? 見たところ、お前さん達は2人揃っていて初めてその強さを発揮するようじゃからな」
パルを指差すフライ。
「ロリコンなのよっ!」
フライに言われて、じっとパルを見つめるチル。
「いや、どうしようかな? とか考えてるんじゃ無いのよ! さっきのお菓子の契約はどうなったのよ⁉︎ いや、お菓子が無いと売られる姉ってどうなのよっ⁉︎」
「まだ何も言ってないの〜」
「チルの目がそう言ってるのよ!」
「目は口ほどにものもらいなの〜」
「いや、意味分かんないのよ!」
「フォッ。漫才はそれぐらいにして、どうするか決めてくれんかの? お前さん達の選択肢はみっつじゃ」
一本ずつ指を立てていくフライ。
「このまま大人しく引き返すか……姉を置いて妹だけ通るか……それとも……」
にこやかだったフライの顔が、怖い表情に変わる。
「二人仲良くわしに殺されるか……」
「ハッ! 何言ってるのよ⁉︎ よっつめの選択肢が有るのよ!」
「そうなの〜」
「チル! 言ってやるのよ!」
「パルがあいつに組み付いて自爆するの〜」
「サラッと恐ろしい事言うんじゃ無いのよ! そんなア◯ラン・ザラみたいな事やらないのよ!」
「爆発前に脱出すれば問題無いの〜」
「生身で自爆してどうやって脱出するのよ!」
「生きる方が戦いなの〜」
「チルが自爆しろと言ったのよ!」
「ホォッホォッホォッ! 全く、愉快な娘達じゃのう。やはり殺したくは無い……このまま大人しく引き返してくれんかのぅ?」
「バカな事言ってんじゃないのよ! あんたをぶっ倒して先に進むのよ!」
「やはりどうあっても戦わんと気が済まんか……いいじゃろう、ならば気が済むまでかかって来なさい」
「チル! レイス!」
「もうご飯の時間なの〜? おかずは何なの〜?」
「ライスじゃ無いのよ! 死神レイスを出すのよ!」
「暗殺なの〜!」
「高らかに暗殺を宣言するんじゃ無いのよ!」
リュックから魔石を取り出し地面に置くチル。
「お昼ご飯なの〜!」
「ホントに食べ物が召喚されたらどうするのよ!」
チルの作った魔法陣から、死神のような姿をした召喚獣が現れ、そのままスウッと空間に消えるレイス。
(ん? 消えた? 召喚失敗か? いや、姿を隠したという事かの?)
自身の周りを警戒するフライ。
音も無くフライの背後から現れた死神の鎌がフライに襲いかかる。
「そこかの?」
紙一重で鎌をかわしたフライが何も無い空間を殴りつけると、レイスの姿が徐々に現れそのまま消滅してしまう。
「んなっ⁉︎ 次元に潜ったレイスを殴ったのよ⁉︎」
「次元◯介なの〜」
「いや、全然関係無いのよ!」
「まさかのレイスまで瞬殺なのよ。これはシャレにならないのよ……」
「オシャレに着飾るの〜」
「まだボケて来るなんて、チルは随分余裕なのよ⁉︎」
「余裕? これは油断と言うの〜」
「いや、逆にしちゃったら悪・即・斬なのよー‼︎」
状況を重く見たパルがチルに耳打ちをする。
「チル、ユーキ姉様出せる?」
「パルの息が耳に当たってこそばゆい上に臭いの〜」
「臭いは傷付くのよ! で、どうなのよ⁉︎ ユーキ姉様召喚獣は出せるの? 出せないの?」
「借金取りなの〜」
しつこいチルのボケに崩れ落ちるパル。
「……良い加減にしないと、晩御飯抜きなのよ」
「それは死活問題なの〜!」
慌ててリュックから白金色の魔石を取り出し、魔法陣を描くチル。
「ユーキ姉様召喚なの〜!」
描かれた魔法陣から、ユーキそっくりな召喚獣が現れた。
「何じゃと⁉︎ 人間まで召喚出来るのか? いや、あれも召喚獣かの?」
並の召喚獣では無い事を瞬時に見抜いたフライが身構える。
「おじいちゃん、いっくよ〜!」
宣言した召喚獣ユーキが、瞬時にフライの懐に飛び込む。
「速い⁉︎」
そのままフライを殴りつける召喚獣ユーキ。
「グハアアッ‼︎」
吹っ飛ばされるフライ。
「まだまだー!」
すぐさま追撃をかける召喚獣ユーキ。
「グウッ! こ、これはたまらんわい!」
召喚獣ユーキの猛攻に、防戦一方のフライ。
「イケるのよ! さすがはユーキ姉様なのよ!」
「30秒前なの〜」
「ん? 何がなのよ?」
「お腹が空いてユーキ姉様を維持出来ないの〜」
「んなっ⁉︎ やはりユーキ姉様は消耗が激しいのよ⁉︎」
「25〜、24〜、23〜」
カウントダウンを始めるチル。
「んなぁ⁉︎ ま、待つのよ! 今お菓子をあげるのよ!」
「15〜、14〜、」
「いきなりカウントが縮まったのよ!」
「10! 9! もう無理なの〜」
遂に消滅してしまった召喚獣ユーキ。
「いや、カウントダウンは何だったのよー⁉︎」




