#1-1 改
みなさんお久し振りです。
まだまだエンジンかかってないんですが、ちょっとずつ大学やバイト先との時間感覚も取れてきたので、そろそろ本格的に復活します。
まずはほんのちょっとですが、よければまた見てください。
それでは、どうぞ。
「さ、始めよっか。新入生君?」
両の口端を釣り上げた笑顔で、いかにも自信満々に語りかける少女。
風に靡く可愛らしいポニーテールと、強気に見える少し釣り上がった目が混在する彼女は、誰でも分かるくらいに体の力を抜いている。
どうやら“新入生”相手に本気を出す気はないらしい。
電気的な印象を出したかのような、全体的に直線のデザインを施したブレザーにスカート。キチッと締められた同基調のネクタイに、特にこれといったフレームの見当たらない細い眼鏡。
そのメガネには電子機器に現れるような、デジタルな文字が映っている。
彼女は表情を崩さず、静かに右腕を地面と平行になるまで持ち上げた。その可愛らしい姿に全く似つかない、物騒な『獲物』を握りながら。
湾曲した薄い鉄を持ち上げる際に、その先が日の光を受け、自分の目を射るように鋭く輝く。自分はそれに特に反応は示さないものの、眩しさに少し目を細める。
どう見ても異様な光景にも関わらず、ある程度の距離を置きながら観客が何かのスポーツでも見るかのような、一切固唾を飲むような緊張感のない雰囲気を持って自分と彼女を眺めている。
まるでそれは、|決闘場≪コロッセオ≫のような空間だった。
そう感じた瞬間、自分の眼前にある眼鏡のレンズにデジタルなグラフィックで『GO!』と表示されるのと同時に、彼女が正面から向かってきた。
そんな彼女に対し、俺は両腕を交差させて構えた。
――あくまで、手を抜くつもりで。
場所は校門前、大きく開けているこの空間で、春の柔らかい風と日差しを受けつつ、自分は正面に彼女を見据えていた。
彼女の持っていたものは剣、そしてその種類は『サーベル』。
戦略は大体読める。
軽さ故に、手首を使って高速の剣撃の膜を張り、相手を寄せ付けないスタイルになるはずだ。
「ほら!」
そんなサーベルの利点を生かさず、バカ正直に正面から唐竹割りの構えを取る彼女。ここで腹が空いていることはチャンスではあるが、あえて。
「!」
クロスさせた両方のダガーで受け止める。
金属同士がぶつかる高い音がした瞬間、彼女は一瞬、目を見開いた。互いの獲物を押し付けつつ、その彼女が興味深々といった目線を私に寄越した。
「へぇ、なんで受け止めたの?」
「さぁなんだろう――ねッ!」
両腕でギリギリと鳴っている彼女の獲物ごと押し、バックステップで距離を取る。
だが彼女は、ほんの少し下がった程度で、すぐさま右足を使って自分に同じ唐竹割りでの追撃をしてくる。
(速い……!)
「ほらほら、かかってきなさいよ!」
『いいぞ、やれやれ!』
『惜っしー!!』
決闘とは言ったが、緊張感がなければただの見世物役でもやらされている気分だ。
耳に届く声はどれもこれも。
(軽い)
自分が実際に見ている、経験しているからこそ思えることだろう。一般人は見ていないから、軽い言葉に聞こえるのだろう。
――『命の駆け引き』を。
今度は彼女の剣撃に左右の振りが入る。幸いこちらの獲物は2本。刃こそ短いものの、対応は可能だ。
この程度なら、いくらでも。
「へぇ、意外にしぶっといわねぇ……!」
下がりつつ防御に徹していたが、足の動き、攻撃のテンポやパターン、そしてなにより、彼女の息遣いに変化が見られた。
――もうすぐできっかけが生まれる。
そう確信しつつ自分から仕掛けるタイミングをひたすら待つ。
後ろに逃げる空間を持てるよう、ひたすら円を描くように下がりつつ、左の薙ぎ、右の薙ぎを受け流す。
手には攻撃を受ける反動は一切ない。
というより、そもそもそんな“もの”ではないのだ。
軽々と攻撃を受け流し、余裕を見せつつ“音だけが鳴り響く鉄”のぶつけ合いを続ける。
「くっ――この!」
「!」
なかなか決まらないことに焦ったのか、または私の余裕が見て取れたのか。彼女は大きく腕を肩に担いで、両足を踏ん張って空に飛び上がり、背中を弓なりに曲げた後に片足に体重をかけるように前のめりな体勢から、斜めに切り落とすようなモーションを取ろうとする。
それが、むしろ相手にとって願ってもない好機であることを知らずに。
「ひとつ、教えてあげるよ」
空中からの攻撃が、一番の致命的選択だ。
これが単純に、物質を持った剣と剣の斬り合いであったなら、きっと彼女の腕なら、こういう負け方になることはないだろう。そもそも、そんな武器を“持つことができる”ならの話だが。
「一番無防備だよ、それ」
「!?」
身体のすぐ横を、刃が通る。
いや、正確には私が身体を少し動かして避けただけだが。
そして先程は狙わなかった腹部に、相手が着地する前に、確実にダガーの刃を滑らせる。
なにも障害なく、重量も、切った感覚もなく。
至ってスムーズに刃物は身体を通り抜ける。
『battle end』
それが『電脳世界』、情報が立体化した世界。
レンズに映る先程の戦いの得点確認とリプレイ保存を行う。
背中から刺さる、居心地の悪い視線をモロに浴びながら。
どうもありがとうございました。
描写とかまだまだ薄い気がしますが、それは追々頑張りますので、どうかお許しくださいませ。
それではまた、次の機会にお会いしましょう。
では~。