学校の日
ツヤは傲慢で、人を批判し、決めつける性格だ。幼馴染とだけは仲良くでき、気楽に過ごせるが、それもすぐに変わってしまうだろう。
???1:「あっ……くそっ、なんて忌々しい光だ!」
???2:「光? 何を言っている、お前。ここには暗闇しかないぞ」
???1:「計画通りなら、そこまで自信満々にはなれないはずだ」
???2:「どうして光なんてあるんだよ? 聞こえるのはクソみたいな思考の雑音と、この不快な耳鳴りだけだ」
???1:「ふむ、もしかすると錯覚、まやかしの類いなのかもしれない」
???2:「どういう意味だ? 暗闇の中に光があるのが錯覚だって言うのか?」
???1:「その通りだ。ここにいたいと願った記憶はあるか?……ふざけやがって。嫌だ……来るな!……触るな!……こんなの、俺が選んだんじゃない……ここにいたいなんて望んでいない!……吐き気がする……なんで俺なんだ?……????……」
???3:「クソッ、何が起きているんだ?!」
???1:「嫌だ」
???2:「嫌だ」
???3:「な、何を嫌がっている? それに、なんでそんな目で俺を――」
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???1:「クソッ、この光は一体何なんだ?!」
???2:「何の光だ、このマヌケ。ここには暗闇しかねぇ……」
???3:「い、今……何が起きたんだ?」
???1:「何が起きた、だと? お前、あいつらの『間』にいるのに、まだ喋れるのかよ_____________?????」
???2:「あいつらの間にいる時、お前を『違う存在』だと見なせると思うか???!!!」
???3:「何だって? ???」
???(聞き覚えのある声):「お*、つ*、ちがっうのか*」
声は徐々に遠ざかり、そこにはスポットライトの中に立ち尽くすツヤ(???3)と、どこか聞き覚えのある正体不明の声だけが残された。周囲が死んだように静まり返るにつれ、闇の奥から微かな呼吸音が響き始める。その声の主はいったい誰なのか――。
???(聞き覚えのある声):「あなた、ほら起きて。学校に遅れてしまいますよ」
ツヤ(???3)が発見された______母親(???・聞き覚えのある声)
ツヤはゆっくりと重い瞼を開けた。視界に飛び込んできたのは、見慣れた母親の温かな微笑みだった。
胸の奥には、不思議と心地よい安らぎが広がっている。まるで今日に限っては、あの忌々しい『グラアフェティ』たちが姿を現さないかのような、根拠のない予感に満ちていた。
ツヤがゆるやかに身を起こすと、母親は背を向けて部屋を出て行った。きっと台所へ朝食の準備に向かったのだろう。
ツヤは胸に残る夢の残像を追うこともなく、余計な思考を振り払うように意識を現実へと引き戻した。
ツヤ:「いつものグラアフェティだろ……」
ぽつりと独りごちて部屋を出ると、洗面所へと足を進めた。鏡の前に立ち、そこに映る自身の姿をじっと凝視する。
眠気によって乱れた艶やかな青い髪が、肩から腰にかけて滑らかな曲線を描いて流れていた。
そのどこか中性的な容姿に対して、ツヤ自身は特に不満を抱いてはいなかった。そもそも、この髪型を誰よりも望んでいたのは母親だったからだ。
生まれ持った端正な顔立ちと透き通るような白い肌も相まって、その浮世離れした美しさは際立ち、一見しただけでは男なのか女なのか判別がつかないほどだった。
深く息を吸い込み、身を屈めて蛇口をひねる。鏡の中の自身をもう一度冷ややかな目で見つめると、両手で掬った冷水を一気に顔へ叩きつけた。
ツヤ:「ったく……」
小さくため息をつくと、チェストの上に畳んで置かれた洗い立ての制服のシャツとショーツが目に入った。シャワーブースのすぐ隣に置かれたそれらを手に取り、身にまとっていく。
着替えている最中、いつものように自嘲めいた思考が脳裏をよぎった。
(……だから男の奴らまで俺に告白してくるんだ)
最後に鏡の中の顔を不機嫌そうに睨みつけると、洗面所を後にした。自室から通学カバンを持ち出し、玄関のドアの前に置く。
そしてそのまま台所へと向かい、扉を開けた。
中に入ると、カウンターに寄りかかりながら学校からの手紙に目を通す母親と、いつもの席でコーヒーを前に新聞を広げる父親の姿があった。
ツヤは自身の席に着くと、片腕をテーブルに伸ばして肘を立て、顎を乗せた。食事が並ぶのを待ちながら、相変わらずの冷淡な表情で静かに息を吐く。
ツヤ:「またお前か」
グラアフェティ:「??????=)(/&%+^+%&/()=)(/&%+……久しぶりだな、おい。俺様が来たのがもう分かるようになったか、ガキ?」
ツヤ:「何もかもが消えたってことは、またあの『穴』に落ちたんだな。分かりやすい病気だよ、これは」
グラアフェティ:「病気だと?」
――086286248:台所から母親および父親が消去された――
グラアフェティ:「違うな、ガキ。病気ってのはどこからか感染するものだが、俺はどこからも移っちゃいねえ。お前が自分で自分に施したんだよ。あいつらがお前に教えようとしただろ?『憎しみの感情は人間を擦り減らす』ってな。だが、お前は止まらなかった。日が経ち、理性が成熟するにつれて、お前はさらに他者を憎んだ。その結晶が、この俺だ」
グラアフェティ:「俺はお前だ、ガキ。俺はお前の具現(写し鏡)なんだよ」
グラアフェティは、先ほどまで父親が座っていた席に平然と腰掛けていた。
相変わらず明確な顔も輪郭もなく、まるで一コマ、二コマの短いアニメーションのように不規則にうごめくストリートアートの落書きそのものだった。ただ、そこには眼球のない、静止した白目だけが不気味に浮かんでいる。
グラアフェティ:「人間どもをそこまで憎んだからこそ、お前にあいつらを『有能』か『無能』かで切り分ける癖がついた。脳内で絶えず独り言を繰り返し、他人に身勝手な判決を下し続けた。人助けすら、相手の顔の点数で選んだ。それが俺なんだよ、ツヤ……」
ツヤ:「俺を責められるか? これまでに何度も俺を悩ませておいて……もうこの突発的な訪問には慣れたよ。それで、今回は何の用だ? 普段はこんな明確な形で現れないだろ」
グラアフェティ:「今日、あるランダムなタイミングで、お前にとって最大の救いとなる『それ』を見つけることになる」
ツヤはわずかに顔を上げ、問いかけた。
ツヤ:「どういう意味だ?」
グラアフェティ:「……いずれ分かるさ、ガキ……」
◇
ツヤは唐突に目を覚ました。周囲を支配していたのは漆黒の闇――それがまだ夜であることを示していた。
深く荒い息を吐き、寝床から立ち上がる。猛烈な渇きが喉を焼いていた。
しかし、台所にたどり着いた時、ツヤの目に飛び込んできたのは恐ろしい光景だった。母親と見知らぬ男がぴったりと身を寄せ合い、激しく口づけを交わしていたのだ。
それを見た瞬間、ツヤは自身が再び「間違った現実」に囚われたことを察した。
ふたりの周囲には、『グリーファーの素描(グラアフェティの感情測定値)』が不気味に浮遊している。
母親の目には二つの赤いバツ印、男の頭には悪魔の角が描かれ、さらにその最上部には『The Smile(ツヤに異象を示そうとする怪物)』の不吉な輪郭が浮かび上がっていた。
ツヤはこの悪夢から抜け出す方法を瞬時に理解した。
ふたりが熱情に溺れて貪り合っている隙を突き、ツヤは包丁立てから一本のナイフを静かに抜き取ると、母親の首筋へと深く突き立てた。
母親は激しい血の混じった嗚咽を漏らしながら床へと崩れ落ち、男は恐怖のあまり後ずさる。
ツヤは躊躇うことなく、そのナイフを男の顔面に向けて投げつけた。刃は深々と突き刺さり、男は激しく身悶えしながら倒れ込むと、そのまま息絶えた。
『The Smile』が消滅する。
ツヤは床に転がる死体を見下ろしながら台所を去ろうとしたが、出口へと足を踏み出した瞬間、不可解な力によって激しく壁へと叩きつけられた。
顔を上げると、目に目隠しの帯を巻き、奇妙にブレるアニメーションのような質感をまとった不良の集団が、嘲笑を浮かべて自身を押さえつけていた。
彼らの周囲を『The Claws(グラアフェティの爪)』が通過し、その不浄な悪意の感情がツヤの顔面に叩きつけられる。
集団のすぐ背後には、もう一つの怪物である『Complexity(不条理な狂気)』が、ただ黒く無秩序に塗りつぶされた姿で佇んでいた。
全員を相手にするのは不可能だと、ツヤは分かっていた。だからこそ、脳裏には別の計画が浮かんでいた。彼はこの場所を知っている。
ここは学校の隣にあるビルの路地裏だ。ここからすぐに左へ走れば、非常階段があるはずだった。
自身を拘束していた不良の顔面に力任せの頭突きを食らわせ、怯ませる。
拘束が緩んだ一瞬の隙を突き、ツヤは全速力で駆け出した。不良どもの群れが背後から追ってくる中、非常階段の最上階まで一気に駆け上がり、下を見下ろした。
一瞬の躊躇の後、彼は自らの身体を虚空へと放り出し、アスファルトの道路へと激突した。
顎の骨が上顎を突き破る凄絶な激痛が走り、悲鳴すら上げる間もなく、彼の意識は途切れた。
◇
不意に、再び目を覚ました。そこは教室だった。
ツヤは即座に周囲を鋭く見回す。ナツキが怪訝そうな顔で自身を見つめており、他のクラスメイトたちは何事もなかったかのように授業に耳を傾けていた。
ツヤ:「今……何が起きたんだ?」
ナツキ:「何が起きたのですか、ではありませんよ。数学の授業中、ずっと眠っていらしたじゃないですか。後でノートを見せてほしいとお願いされても、お貸しできませんからね」
ツヤは自身の口元に触れた。痛みも、何の異常も感じられない。
ツヤ:「夏休みまで、あと何週間あったっけ?」
ナツキはさらに怪訝そうに眉をひそめ、呆れたような、けれど丁寧な口調で返した。
ナツキ:「あと一週間です。その次の週からお休みに入ると、先生もおっしゃっていたでしょう? 本当に大丈夫ですか?」
ツヤはすぐに状況を取り繕うように薄笑いを浮かべ、片手を後頭部に回してうなじを掻いた。
ツヤ:「あ、ああ、そうだったな。ちょっと寝ぼけて頭が混乱してただけだ、へへ」
ナツキは目を細め、静かにため息をついた。
ナツキ:「ツヤ君が真面目になる時なんて、来るのでしょうか……」
ツヤ:「おい!」
???:「……二人とも、いい加減に静かにしろ」
ボソリと声をかけてきたのはキメントだった。
彼らは8人の幼馴染グループの一員だった。
キメントはいつも不機嫌そうな顔をしていて、極端に口数が少なく、何事にも興味を示さない性格だった。正直なところ、ツヤは彼と話すのが一番苦手で、できるだけ距離を置くようにしていたが、いざ試験週間ともなれば、誰よりも頼りになる存在でもあった。
ツヤ:「はいはい、キメント。その無駄に深い意味が込められたクソみたいなスケッチに戻ってくれよ」
キメント:「……フン」
キメントは再び表情を消し、顔を前――つまり黒板へと戻したが、ツヤの背後から椅子のきしむ音が聞こえ、直後に甘い囁きが届いた。
???:「ねえねえ、僕もそのお話に混ぜてくれないかなぁ?」
その人物が誰であるか、わざわざ確かめる必要すらなかった。
シンソは一時期、全校生徒の間でそのいじめられ体質と、女子の目を引く可愛らしさで有名になった少年だった。シンソはまさに天使のような特質を持っていた。親切で、エネルギーに満ち溢れ、常に笑顔を絶やさず、どんな状況も前向きに捉えることができる。ただ、少し頭が悪かった。特に勉強に関しては。
だが、そんなことは些細な問題だった。なぜなら彼はからかったり、いじったりするのが最高に面白い相手だったからだ。ツヤにとって、かなりお気に入りの幼馴染だった。
ツヤ:「お前、わざわざ椅子をここまで引っ張ってきたのか?」
シンソはツヤの机にすり寄るように顔を近づけ、例の愛らしい笑みを向けた。
シンソ:「だってさ! この先生、授業中にめったに後ろを振り向かないでしょ? それに、みんなが何をお話ししてるのか気になっちゃってさ」
ツヤは、手のひらをシンソの頬に当て、その顔を机から押し戻した。
ツヤ:「静かにしろ。さもないと食堂でお前のジュースを奪うぞ」
シンソは息を呑み、慌てて姿勢を正した。
シンソ:「ひどいなぁ、もうっ!」
頬を膨らませるシンソを、ツヤはニヤニヤしながら見つめた。
ナツキ:「口論はおやめなさい。先生に聞こえてしまいますよ」
ナツキがそう注意した瞬間、終業のチャイムが校内に響き渡った。生徒たちが一斉に席を立って教室を出ていく中、教師も荷物をまとめて去っていった。




