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【m=0】
1924年(大正13年)
3月27日(木曜日)、10時32分
帯渡島周辺海域、帯渡島村有船、船内
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ようやく……ようやく、あの島を出れたことに、私は一種の陶酔感めいたものを感じていた。
御蔵島への到着が待ち遠しい。そこまで行けば、後は東京府の命令航路を征く貨客船に乗り換えるだけだ。
もう二度と、あの島に戻ることもないだろう。
叔父への対抗心だけで生きてきた浅ましい父とも、私への劣等感だけしか持ち得なかった愚かな兄たちとも、もう二度と顔を合わせずに済む。
別れが惜しい人間など誰一人としていなかった。
あの島の人間は総じて黴の生えた因習と盲目的な愛国心に囚われている。
私にとっての唯一の理解者であった母が亡き今、思い残すことなど何もなかった――。




