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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦2年
167/201

プロパガンダを本人たちが信じざるを得なくなるとやばい

新世界暦2年1月1日 ユーラシア・新大陸間海域海上 人民解放空軍連絡便


巡航高度を帰国のために飛行している人民解放空軍の編隊があった。


こんな元旦から、なんて文句を言っているのはパイロットたちだけで、乗客である兵士達は帰国の途上なのだから、元旦だどうだなどとは全く思っていない。

というか、中国においては今も旧正月のほうが重要だったりするので、元旦云々で不満を言っているパイロットも言うほど不満は無かったりするのだが。


連絡便、とは言うものの整備のために帰国する機体などもまとめて飛行しているので、実際には編隊になっている。

輸送機のY-20が2機に、IL-76が1機、他に爆撃機のH-6Kが8機と空中給油機のH-6Uが1機、戦闘爆撃機のJH-7が4機というなかなかの大編隊である。


しかし、この16機の編隊が消息を絶ったことにより、中国は世界の異変に気付くことになるのだった。





新世界暦2年1月1日 ロシア連邦 モスクワ クレムリン


事実上の戒厳令下といっても過言ではないモスクワ市街は、ものものしい雰囲気に包まれていた。

何よりも、赤の広場に近接防空用のSAMが展開している時点で、冷戦時にもそうそう見かけなかった警戒態勢であるとわかる。


「それで、中国政府はなんと?」

「空軍機の大量遭難は我が国の責任だと」

「ふざけたことを」


足早に廊下を歩きながら報告を受けた大統領は吐き捨てるように言う。


「どう考えても新たに出現した陸地が原因だろうが」

「我が国の航空機が捜索に協力しなかったことがその証明だ、と連中のテレビ局はまくし立てているようです」


実際、ロシア側も中国の編隊が消息を絶ったのと同時刻に、連絡便が飛行していたのは事実である。

ただ、中国側よりも出発が遅く、まだかなり新大陸側を飛行していたため、未知のレーダー照射を受けて引き返したのである。


「それにしても面倒な位置に現れたものだ。なんなんだこれは!」

「現在、全力で情報収集を進めていますが、新大陸と異なり、レーダー波の照射が確認されていますので、実際に大陸上空を飛行して情報収集するのは危険です。現状では周辺での電波情報収集と衛星からの情報が頼りです」


大統領の手元には衛星から送られてきた画像がある。

そこには、ユーラシア大陸と新大陸の連絡を遮るように出現した大きな陸地が写っていた。


「そちらも警戒は必要だが、中国が開戦に踏み切る(馬鹿な事をする)可能性は?」

「共産党政府に限って言うならゼロでしょうが、去年のパキスタンの事例のような人民解放軍の独断、という可能性はゼロではないでしょうし、共産党政府も世論を抑えきれないと判断すれば」

「可能性はある、か。いずれにしても様子見だが、もし連中に不穏な動きがある場合は先手を撃つ必要がある」

「軍は予備役の招集を始めていますし、警戒態勢は万全です」


参謀総長は自信ありげに断言する。


「しかし、無いとは思いますが、中国がインドのほうに仕掛けた場合はどうしましょうか」


外務大臣が不安げに言う。


「それはその時に考えるしかあるまい?不明な要素が多すぎて事態がどう転ぶかさっぱりわからん」

「問題は新大陸と分断されてしまっている現状です。現地に置いている戦力で言うなら五分でしょうが、補給の問題があります。少なくとも既存のインフラで食料調達は可能な中国側のほうが有利だと言わざるを得ないでしょう」


ここにきて戦線が広がりすぎている弊害が出ているが、一体どこの誰が作戦地域との間に別の陸地と勢力が出現すると想定して作戦展開するのか、と言う話なので条件としては中国も五分のはずである。


「ウラジオストクに残っていた全ての艦艇には出港命令を出しています。新たに出現した陸地の調査に向かわせていますので、何かわかることもあるでしょう」

東部軍管区(シベリア)戦略ロケット軍(ICBM)には非常警戒態勢を取らせています。いかなる事態にも対応できるでしょう」


何か不穏な兵科が非常警戒態勢に入っているが、相手が核保有国なので止む無し、というのがここにいる人間の共通認識である。


「今はとにかく情報収集に徹しろ。だが、舐めた真似をする連中がいれば・・・わからせてやれ」

「「「Да!」」」


凄味の籠った大統領の最後の言葉に、軍の指揮官たちは鋭い敬礼とともにそれぞれに任務に向かっていった。





新世界暦2年1月2日 中華人民共和国 北京 中南海


「貴様らは私を舐めとるのか!」


総書記の怒鳴り声とともに、大量の紙(報告書)が室内に舞い、並んでいた人民解放軍や統一戦線工作部の情報担当者達が委縮する。


「私は早急に我が国に舐めたことをした(軍用機を撃墜した)連中の情報を集めろ、と命じたはずだ!何だこの報告書は!」


宙に舞っている報告書には衛星の画像とともに、不明な陸地が出現したので偵察したい、という内容が回りくどく書かれていただけである。


「貴様らは丸一日何をしていた!私はあらゆる手段を取れ、と命じたはずだ!」


そんなこと言って、勝手に陸地の偵察に航空機出して交戦にでもなったらやっぱり怒鳴り散らすじゃん、とは総書記以外の全員が思ったことだが、誰も口には出さなかった。


「で、まさか本当に何もわかりませんでした、などと言うつもりは無いだろうな?」


ギロリ、と総書記が一同を睨みつける。

彼らもバカではない。少なくとも中国共産党の中を、今の地位に着くまで昇ってきた人間達である。


「現在も電波情報収集機を出して情報収集は継続中ですが、新たに出現した陸地は、ドイツ語に近い言語を使用する単一国家の可能性が高い、という結論が出ています」

「陸地、というか新大陸より小さいとはいえ、オーストラリアに匹敵する大きさですから、半ば大陸に近いですが、この全域にわたって捜索レーダーによる警戒網が形成されています。複数のレーダーが捜索エリアを重複するように設置されていますが、個々のレーダーの全周捜索自体はさして早くないので、これを補うためと思われます」


我が国よりよほど防空体制に力を入れていますね、という言葉は報告者の心の中だけで消えた。


「これは多数の地対空ミサイル(SAM)とも連接していると見られ、固定基地も含め、多数のそれらしき設備が衛星で確認できます。昨日、我が軍の帰国便を撃墜したのも恐らくこれでしょう」


そんだけわかってるなら報告書に書けよ、と総書記は思ったが、報告書に残さなければ間違っていても適当にごまかせる、という各機関それぞれバラバラに導き出した統一見解の結果が宙に舞った報告書なので、仲がいいのやら悪いのやら、である。


「問題は、港湾で確認できた艦隊です。ドック入りも含め、戦艦8、空母8が確認できます。戦艦に関してはアイオワ級などとは比較にならないほどの近代化が施されている、というよりもミサイルやレーダーの存在を前提に建造したとしか思えない構造をしています。空母もニミッツ級に匹敵する大きさです」

「その他、防空艦も含めた各種艦艇も充実しており、技術的な面はともかく、規模では我が軍にロシアとインドを足しても届きません」


どうすんだよこれ、と言った感じで全員がちらっと総書記の方を見る。


「世論は狂ったようにロシアのせいと叫び続けとる。ネットでの世論操作もさせているが効果が薄い。正直制御不能の状態だ」


未だ新たな陸地が現れたことはどこの国も公表していないので、大量遭難はロシアに撃墜されたせいだという噂が広まっていた。

まぁ、そもそも中国政府自体は16機の遭難自体を公表していないのだが、さすがに搭乗していた陸軍数百人の遭難を隠し通すことはできず、ネット掲示板やSNSまで完全に抑え込むには至らなかった。


「・・・公表するか?少なくとも結果的にロシアと二正面になる、なんてバカなことは避けられる」

「しかし、相手の戦力を考えるとどっちもどっちな気がしますが・・・。核戦力が不明ですが、技術水準的に“ある”と想定すべき事案かとは思います」


人民解放軍の戦力は確かに強大である。

しかし、人口と同じく、多すぎるせいで、やってもやっても近代化が終わらないのである。


ソ連崩壊後の混乱で近代化が止まっていたロシア軍も似たような状況に見えるが、ベースになる元の状態に差がある。

ロシア軍の大多数を占めていたのは、少なくともソ連崩壊までは(国を文字通り傾けて)更新されていた装備である。

対して、人民解放軍の大多数を占めるのは、文化大革命でボロボロになった国で、どうにかこうにか造った、数だけが取り柄の装備である。


2000年代の著しい経済成長によって、急激に装備を更新しているとは言え、その中身は民生技術以上に各国の寄せ集めであり、各国に先んじたモノがあるか、と問われると、インターネット分野(クラッキング)小型無人機(ドローン)のような民間市場で急激に立ち上がった分野に寄っているのが現状である。


その分野が活かせる相手、つまり地球国家が相手なら多少の装備格差に目を瞑っても、有利に戦いを進められる可能性が高い。

つまり、インターネット経由で相手国の民間インフラと、可能なら軍事ネットワークを破壊して後方をかく乱し、そこに大量の無人機でピンポイントの自爆攻撃を仕掛け、あとは既存戦力の物量で押し切る、という戦法である。


が、当然インターネットが繋がっていない相手には使えないので、新たに出現した陸地相手にはガチンコ勝負しかないのである。

相手が去年のように明らかに劣っていれば問題ない。

しかし、今回の相手は下手をすると、「人民解放軍の半分」が「同等程度」の技術力の可能性があるのである。


しかし、「残りの半分」の宣伝ばかりしていたせいで、無知な大多数の人民は、人民解放軍は米軍に匹敵する世界最強の軍隊だと信じ切っている。

自業自得と言えば自業自得だが、負ける可能性のある戦いをわざわざ始めたくはないが、相手に頭を下げるのはもっと嫌な彼らの苦悩は深い。

次も1週間見といてください

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― 新着の感想 ―
[一言] Дарってなんか違くないですか? Ураでは?
[良い点] うぽつです。 新登場の国家がなんかすごそう(小並感) [気になる点] 各国に先んじたモノがあるか、と問われると、 df-17でブーストグライド兵器を初めて実用化したりしましたけどぬ。…
[一言] あ~らら、中ロは新たな敵国を迎える羽目になったみたいですね…しかも防空体制も強固と来ているから、核に弾道弾も通じるかどうか分からない上に、海軍戦力も相当なもの…久々に大国間のドンパチが見れそ…
2020/11/02 15:06 退会済み
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