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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
107/201

ヒトはソラを見上げて生きるモノ

なんか急に伸びて総合ポイントが5000超えてました。お付き合いいただいてる皆さま、ありがとうございます。

完結まで頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。

西暦1969年7月20日 月 静かの海


”That's one small step for a man, one giant leap for mankind.”





新世界暦1年10月20日 アメリカ合衆国 ワシントンD.C. ホワイトハウス


「宇宙開発の栄光は過去の物となりにけり、か」


NASAと国防総省の宇宙関連のレポートに目を通しながら大統領は呟く。

転移後に打ち上げられたロケットはそのペイロードの全てが偵察衛星や資源探査衛星、気象衛星、早期警戒衛星など、この惑星を観測するためのものか、通信衛星やGPS衛星など実利的なものばかりである。

有人宇宙飛行も、中国が一度やったきりで、その後はどこの国もそんなことやる余裕があるなら通信衛星や偵察衛星を1つでも多く打ち上げた方がいい、と衛星ばかり上げていた。


まぁ、衛星がすべて消失したので、安全保障上の問題もあり、仕方ないと言えば仕方ないのだが。


「大統領、お待たせしました」


そう言って入ってきたのはアメリカ疾病管理予防センター(CDC)のセンター長である。


「かまわんよ。読み物には困らんからね」


そう言って大統領は大量に積み上げられたレポートや、データが入ったタブレットを示す。


「それに、通常のアポということは、大して重要なことでもないんだろ」

「まぁ、緊急にどうこうという話はありませんね。幸運なことに」


センター長は肩を竦めながらソファに座った。

他に専門家を連れてきていないことからして、とりあえず報告しとかないといけないから来ただけ、というのが明らかである。


「結論から言うと、今のところ異世界の感染症で脅威となるような未知のものは発見されていません」


これだけ日本もアメリカも戦闘だの捕虜だので多数の人間が交わっているのに、未知の感染症の流行が起こっていない時点である程度予想される話ではある。


「しかし不思議ですね。遺伝子型に違いが見られるとはいえ、インフルエンザやペストは異世界にもあるんですから」

「その遺伝子型が違うっていうのは大丈夫なのか?」


楽観的な様子のセンター長に、不安になって大統領は尋ねる。

2020年の新型コロナウイルスの騒動もまだ記憶に新しい状況である。


「メキシコで感染している捕虜に既存の薬を投与して効果は確認しているので問題ないでしょう。結局のところ脅威になるのは異世界の物も含めて、変異で感染力や毒性があがることのほうかと」


毒性が上がって致死率が増すと一見すると危険なように見えるが、感染者が死亡すればそこで感染は止まるし、なにより宿主の死亡はウイルスや細菌の死も意味するので、病原菌の進化の方向性としては失敗、ということになる。


あと、しれっと捕虜で臨床試験しているが、決して実験台にしたわけではなく、正当な医療行為としてベストを尽くしただけである。とCDCと米陸軍医療司令部は言っている。


「まぁスペイン風邪のような致死率と感染力の高いウイルスの大流行、というのがすぐに起こることを心配する必要はない、という点だけで今は良いかと」


徴兵人口を減らして第一次世界大戦の終結を早めたとまで言われるスペイン風邪は、地球で人類が経験した最悪のパンデミックである。

ちなみに、スペイン風邪とスペインには何の関係もなかったりするので、完全な風評被害である。


「とはいえ、異世界の全ての感染症を調べられたわけではあるまい?」

「地球ですら未知の病気があったわけで、科学技術が劣っていた他の2つの世界で把握されていない風土病のようなものは無数にあるでしょうね」


やれやれ、と大統領は息を吐く。

戦争が終わってようやく経済が上向く見込みも出てきたのに、パンデミックで大恐慌、なんていうのはやめてもらいたいのが本音である。


「実際、流行してくれないことには病原体なんて見つけられませんから」


センター長は身も蓋もないことを言って話を終えた。


「それで、大統領は先ほどまでなんのレポートを読んでいたんです?」


センター長は他に話すこともないので、大統領が読んでいたレポートに話を振った。

国家機密に関わる様なレポートなら、入れる人間が限られるとはいえ、人の出入りが多いこの部屋に無造作に置くことはないだろう、との読みもあっても質問である。


「月に関するレポートだよ」

「月、ですか」


このよくわからない惑星にも衛星が存在し、それは便宜的に月と呼ばれていた。


「なかなか面白い仮説だよ。確かめてみたくなる程度には」

「ほぉ」


大統領の言葉にセンター長は興味を示す。


「この惑星が複数の惑星の集合体であるように、あの月も複数の惑星の衛星の集合体ではないか、という話だ」

「だとすると面白そうな話ではありますが、根拠はあるんでしょうか」


なんの根拠もない話なら確かめてみよう、という気など起こらないだろうと思い、センター長は大統領に問う。


「いくつかの天文台の観測で、我々の知る月と似た地形が見受けられるとのことだ」

「しかし、それが本当か確認する方法は」

「月探査衛星を打ち上げて、アポロ計画の着陸地点を見つけ出せば証明できる、というのがNASAの提案だな」


有人月着陸と言い出さないだけましかな、と大統領は笑いながら言ったが、なんの情報もない星にいきなり有人探査機を着陸させるのはリスクが高いので、それに向けたワンステップ、とNASAが考えていることを大統領は知る由もない。


「そういえばISSや消失した衛星はどうなったんでしょうね」

「わからん。特にISSは機能がほとんど停止しているとはいえ、滞在していた人間はいるからな。何もなくなった地球の周りを飛び続けているのか、地球すら無くなって太陽周回衛星となっているのか」


ISSの各国宇宙機関による大規模運用は終了しており、国際協力宇宙開発は恒久的な月面基地建設を目指した計画に移行しようとしていた。

しかし、ISS自体は別に大気圏突入で燃え尽きたわけでもなく、機能を縮小しつつ、最低限の維持は行われていた。

かつては6名が長期滞在していたが、2025年の時点においては2名まで減らされており、そこに民間企業が行っている高額な宇宙観光の利用者が短期滞在する、という運用である。

2025年の大晦日時点では、2名の長期滞在者と3名の短期滞在者がいたはずだが、ISSごと音信不通になっている。


「とはいえ、通信衛星もGPSも早期警戒衛星も偵察衛星も、何もかもまだまだ足りていない。正直、この状況で月探査なんてロケットを割いておれんよ」


やれやれ、といった感じで大統領はレポートを投げ出す。

ちなみに、米空軍はX-37BをX(試作機)ナンバーのまま量産させていたので、偵察ミッションなどに投入することで、一時的には衛星の不足をカバーできていた。

が、あくまでも低軌道を周るスペースプレーンであり、偵察衛星以外の代役には不都合がある。


「とはいえ、初の有人月着陸、というのに魅力はないわけではないがコストがなぁ・・・」


国際協力での月拠点建設計画も、月の周回軌道か、地球と月の中間にあたる地球周回軌道に宇宙ステーションを建設し、そこを足掛かりに行う、という超長期計画の予定であった。

いきなり地球から月に行って着陸して帰ってくる、というアポロ計画では、1回の打ち上げで今の貨幣価値でざっと3000~4000億円かかっていた計算になる。

惑星が大きくなり、月も遠くなった今の状況では、さらに大型のロケットが必要になり、さらに費用がかさむと予想された。

ちなみに、高い高いと言われたH-2Bの打ち上げ費用が100~150億円、と言えばその破格っぷりがわかるだろう。


「まぁ、なぜか重力や大気圏の厚さが地球と変わらないのは救いか」

「わりと謎な話ではありますね」


いずれにせよ、陸軍の再建だけでも莫大な予算を必要としている今のアメリカに、そこまで費用を割いている余裕はない。


「まぁ、景気が上向いてくれれば可能性くらいはあるか?」

「大衆に夢を見させる、という効果はありそうですが、アポロ計画という前例があった以上、初めての大冒険、という印象は薄いでしょうなぁ」


世知辛いなぁ、と大統領はため息を吐いた。


「大衆なんてそんなものでしょう。久しぶりの月着陸、という盛り上がりはあっても、アポロの時のような全世界が見守る、みたいなのは望めないと思いますよ」

「正直、それがないなら莫大な予算を使うメリットが無いんだよなぁ」


保留保留、と言って大統領は見なかったことにしてレポートを仕舞う。


「まぁ、一国民としては子供のころのうっすら覚えているあの熱狂を再び見てみたい、とだけお伝えしておきましょう」


センター長は笑いながらそう言って部屋を後にしたのだった。





新世界暦1年10月20日 日本国 東京 総理大臣官邸


「月探査ねぇ・・・」


同じころ、日本でも月の探索衛星の打ち上げ計画の予算要望を首相が見ていた。


「打ち上げないといけない衛星はまだまだあるし、保留保留」


そう言って見なかったことにして机の中にしまわれたが、ロシアやインド、中国でも似たようなことが行われていることを彼らはそれぞれ知る由も無いのだった。

前話の潜水艦のアクティブソナーについていくつか感想をいただいたので、改めて調べてみました。

やはり米オハイオ級については、魚雷攻撃用のアクティブソナーは装備していないようです。北極海を航行するので氷の厚さや氷山の状況を知るために周囲を探査する航海用のものは装備してるようですが、艦の性質上、自ら魚雷攻撃を仕掛けることはないので長距離探査は必要ない、ということのようです。

海自については、とあるはるしお型が現役の時に内部を見学する幸運な機会があったので、その時に聞いた話が元になっています。本当に積んでいないのか、存在を忘れられるくらい使わないのか、結局のところ海自潜水艦の情報が少なすぎて不明です。ゆうしお型まではZQQ-3やZQQ-4統合ソナーと別にアクティブソナーとして米国製のSQS-36を積んでいたのがはっきりしているのですが、ゆうしお型以降はZQQ-4統合ソナーを積んでいる、という情報しかありません。探信儀を統合した、という情報がないので知っている方がいたら教えてください(問題ない範囲で


次は・・・土曜日?無理かな?

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― 新着の感想 ―
[良い点] うぽつです。 [気になる点] 月かぁ なんかナチスとかいねーかなぁ?
[一言] 更新乙です。 ISS滞在者はやはり行方不明ですか… さすがにISS単体だと引き延ばしても半年しか持たないだろうし…うーん… アポロ再びは、アズガルドとかそっちの国なら大興奮しそう。 そのた…
[一言] 更新お疲れ様です。 まずは身を守る手段&連絡網の構築が最優先に・・・・>衛星 新たなフロンティアに食指も、先立つものやリソース不足。 まあ現実的な地上の方のフロンティア(未踏破地&非文明圏…
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