魚型水雷っていうけどあんな魚いるか?
新世界暦1年10月18日 APTO艦隊 海上自衛隊 護衛艦「まや」
《All stations launch SAM》
マッキャンベルから艦隊全艦に送られた指令を受信する。
攻撃目標の割り振りも含めてデータリンクで共有できるのはマッキャンベルとまや、ドラゴンだけで、他とは無線交信しか手段が無い。
つまり、攻撃目標が重複する、無駄撃ちが出るということである。
相手の数が艦隊が持つ艦隊防空ミサイルより多い状況では1発も無駄にしたくないのだが、できないものは仕方がない。
「SM-2、SM-6撃ち方始め!」
「前部VLS開放、SM-2、SM-6撃ち方始め!」
轟音とともに解放されたVLSからSM-2とSM-6が次々に発射される。
本来なら最新のSM-6を満載したいところだが、主に予算の問題とSM-2も使えなくなったわけではないので、使わないともったいないという貧乏根性で半々の搭載である。
混ぜて撃っているのは終末誘導が必要ないSM-6ならSM-2と同時弾着に制約が無いからである。
ちなみに、相手がECMを使用する場合は母艦のイルミネーターの出力にモノを言わせてぶち破る、という手法もあるのでセミアクティブレーダーホーミングもデメリットばかりではない。まぁ、今回の相手はそんなこと関係ないが。
「さて、どこまで数を減らせるか」
まやがいるのは敵機が襲来する方向からは艦隊を挟んで反対側なので、個艦防御は必要ないだろう、という見通しもあり気楽なものである。
新世界暦1年10月18日 人民統制委員会 航空戦艦「人民革命」
「主砲復旧の見込みは?」
「不明です」
艦隊委員長の問いに、艦委員長の返答は素っ気ない。
「うーん」
艦隊委員長は口には出さないが、もうこれはダメかもわからんね、というのが顔に出ている。
「負傷者の増加はなくなりましたが、すでに死者26名、重体21名、重傷34名という状況です」
今に至るも人民統制委員会ではなぜ突然大量の負傷者が発生したのかわかっていなかった。
この負傷者多発の状況は、後続の革命同志でも同じ状況であり、この2つの共通点は簡単である。
「負傷者の原因は例の新兵器ではないでしょうか?」
「それしか考えられんだろう」
小声で艦隊委員長と艦委員長が話し合っているが、自分たちで作ったわけでもない新兵器の効果にご満悦の革命管理委員が気づいた様子はない。
「修理はまだか!早く敵を追いかけねば逃げられるぞ!」
1人気を吐いている革命管理委員だが、艦橋の空気は冷ややかである。
格納庫より少ないとはいえ、格納庫の人員以外にも体調不良が続出しているので、艦の運行にかかわる人間はほとんど皆帰りたいのである。
「航空部隊の攻撃はどうなった?」
さして期待もしてい無さそうに艦隊委員長は通信委員長に声をかける。
もっとも、空母艦載機以外に本土から陸上機まで参加した航空攻撃なので多少の戦果は上がっているだろうとは思っていたが。
「いえ、それが・・・」
艦隊委員長の問いに、通信委員長は蒼白な顔で口ごもる。
「何があった?」
「陸上機218機は半数以上が撃墜され撤退しました。我が艦隊航空隊163機も損害多数で撤退中です」
航空部隊の現場には革命管理委員がいないので、割と常識な判断をする。よって全滅するまで突撃、なんてことはしない。なお、帰還後。
「戦果は?」
「・・・それが、敵艦隊の姿を見ることもできなかった、と・・・」
「は?敵戦闘機の迎撃を受けたのか?」
「迎撃は受けたようなのですが・・・」
彼らには知る由もないが、迎撃に出た英空軍(※英軍の固定翼機は全て空軍所属)のF-35Bは12機だったが、全てミーティア空対空ミサイル装備で1機4発、データリンクも最大限活用し、ターゲットを重複することなく48機をきっちり撃墜していた。
F-35Bはその後は攻撃を行わず、警戒監視のみを行ったので、人民統制委員会の視界内には一度も入っていない。
その後は艦隊防空艦が長距離SAMを釣瓶撃ちしたので、人民統制委員会は敵の姿も見ずに撤退する羽目になったのである。
「・・・ラストールの艦隊ではないのか?」
「わかりません・・・」
理解不能な状況に、艦隊委員長はラストールではない何か別のものと交戦した可能性を考えたが、それにしても姿も見えないというのは全くの謎である。
わからないことは考えても仕方がないので、艦隊委員長はちっとも進まない修理状況の確認に意識を移したのだった。
新世界暦1年10月18日 アメリカ海軍 攻撃型原子力潜水艦「ミシシッピ」
「やっとあれから解放されたと思ったら今度は実戦だよ!?」
「まぁ、あれよりはましですよ・・・」
げんなりしたように艦長と副長が話している。
彼らの言う「あれ」とは、海自艦隊による対潜訓練のことである。
そう、彼らこそがAPTO艦隊参加の護衛艦が連日連夜行っていた対潜訓練の「標的艦」である。
別に彼らはそんなものになるためについてきたわけではなく、APTO艦隊の後方をこっそりついていってラストール近辺での情報収集に従事するのが本来の任務だった。
高速で走る水上艦隊の後方を追尾する形なので、そうそう見つかる心配もない楽勝な任務のはずだったのだ。
ちなみに、海底地形図は衛星からの探査によるもので、細かな地形までは把握できないので、沿岸や水深100m以下と見られる地域への接近は禁止されていた。
艦隊に参加しているマッキャンベルも付いて来ていることを知らず、極秘任務のはずだったのだが、APTO艦隊が横須賀を出港してから3日後に、曳航ソナーも使っていなかった海自艦隊に見つかったのである。
ちなみに、彼らが見つかったのは全くの偶然である。
APTO艦隊の進路上近傍海域で「たまたま」音響測定艦あきが活動しており、収集した音響情報を分析したら「あれ?なんかヴァージニア級原潜がいるんだけど?」となったのである。
なお、あきが活動していたのは「いろんな国の艦がおるし、音響情報収集したろ!」とか思ったわけではない。ということになっている。
ちなみに、音響情報と電波情報は敵だろうが味方だろうが、とにかく集めてデータベース化するものである。だから捜索レーダーか火器管制レーダーか、などというのは照射されればわかるのである。(それ以前に捜索レーダーと火器管制レーダーなんて照射パターンが違い過ぎるので一目瞭然だが)
「艦長、前方敵艦隊、魚雷の射程内と思われます」
「アクティブ、ピンワン」
コーン、とも、ピーンともとれる音が発振され、敵艦隊の陣形や距離が露わになる。
ちなみに米海軍の原潜でアクティブソナーを装備するのは攻撃型原潜だけで、海自ではそもそも潜水艦にアクティブソナーは搭載していない。
自らの位置を暴露することになるアクティブソナーは、隠密を最大の武器にする潜水艦には本来似つかわしくない装備である。
「魚雷発射管1番2番、目標敵大型1番艦、諸元入力」
「目標諸元入力完了、敵音響情報入力完了」
「発射管1番2番、順次発射!」
発令所の下に設けられた魚雷発射管からMk48mod7魚雷が発射される。
特に敵がデコイなどを使用するとも考えられないので、自律誘導である。
一時期、潜水艦の武装として水中発射型対艦ミサイルがもてはやされたが、結局のところ「自らの位置を暴露することになる」という理由で廃れている。
とにかく潜水艦に隠密を重視する海自が潜水艦発射型ハープーンの採用を続けているのは、慣性誘導とGPS誘導が可能で射程が長いので「船以外のものを攻撃できる」から、とミサイル飽和攻撃のために不足気味のプラットフォームを確保しておくためである。
55ノットの雷速で40キロ近い射程を誇るMk48mod7は、第二次大戦以来となる「潜水艦による戦艦撃沈」に向かってその能力をいかんなく発揮した。
新世界暦1年10月18日 APTO艦隊 海上自衛隊 護衛艦「ひゅうが」
そもそも、なぜ情報収集の任務を与えられた潜水艦が敵艦隊を攻撃しているのか?という話だが、きっかけは敵航空戦力を退けた後に持たれた会合にさかのぼる。
ラストールの第一艦隊も合流してきたので、再度会合が持たれたのである。
ちなみに、APTO艦隊の対空戦闘能力を目の当たりにし、独断でAPTO艦隊を戦闘に巻き込もうとしたことがばれてラストール第一艦隊にもボロクソに詰られたラストール第三艦隊幕僚は隅っこで小さくなっている。要するにほぼ発言権は無い。
「しかし、どのみちあの障壁はやっかいだからどうにかしたくはある」
ラストール第一艦隊幕僚が見事なフライング土下座を決め、どうにかこうにかAPTO側に情報をもらおうとしていたのだが、APTO側、特にあの障壁に苦労させられたアメリカとしても、あんなものに普及してほしくはないのである。
「あれが中米で使われていたものと同じであるなら、海面付近や海中には効果が無いのでは?」
「とはいえ、海面付近もシースキマー型の対艦ミサイルでくぐれるような高度でもない。となると海中だが」
「対潜魚雷しかありませんから威力不足ですし、そもそも安全装置で深度50メートルより上だと起爆もしませんね」
お手上げ、といった感じで各国の幕僚はバンザイする。
「魚雷が有効なら、我が国の水雷戦隊で夜襲をかければ・・・」
「それくらいですかねぇ。というか、攻撃が通じない相手じゃなくて、中小型艦を先に潰しとけば夜襲も楽だったでしょうに」
水雷戦隊による夜襲を提案するラストールに対し、なんでお前ら攻撃きかない相手ばっかり撃ってたの?と暗に批判する米海軍。
「というか、そんなことするくらいなら原潜に攻撃してもらえばいいのでは?」
そこに投下されたのが海自の爆弾発言である。
「「「「「え?」」」」」
「え?」
「「「「「え?」」」」」
「え?」
そんなもんいねぇだろ、という各国海軍と、え、気づいてなかったの?という海自側とで変な応酬が行われたが、この結果、アメリカ海軍が本国経由で原潜に攻撃指令を出したのであった。
次は・・・1週間かなぁ




