CECとかFCネットワークとかどんどん複雑になっていくよね
新世界暦1年10月18日 APTO艦隊 海上自衛隊 練習艦「かしま」
人民統制委員会の拿捕された潜水艦の乗員は全員艦を降ろされ、拿捕時に抵抗した1名を除いてかしまに移されていた。
そこで1人ずつ事情聴取が行われていたのだが、下っ端については特に聞くこともないので尋問官は留学生扱いのアズガルド海軍の士官たちが担当している。
もっとも、そのアズガルド士官ですら言語が違うので、片言でしか意思疎通できないのだが。
士官については人民統制委員会の標準言語が話せるアズガルドの情報士官が1人だけ留学生にいたので、彼を介し、自衛隊と英海軍、米海軍の士官が立ち会っている。
とはいえ、士官の中でも重点的に聴取されているのは艦長なわけだが。
「つまり艦内の指揮は、えー、革命管理委員という役職の人間との二重指揮で、艦長に優先権があるわけではない、と?」
「そうですね。どの程度指揮に介入してくるかは革命管理委員によってまちまちですが」
他国への亡命を希望した艦長職に該当する艦委員長と名乗った士官が、聴取に一番協力的で、かつ片言程度とはいえアズガルド語を理解できたのも重点的に聴取されることになった原因である。
「ふーむ、まぁそれはそれとして、亡命希望とのことですが」
「外国人と接触を持てば死刑になる国ですから」
聴取に立ち会っている日英米関係者はうわぁ、という顔をする。
聴取は人民統制委員会の標準言語で、それをアズガルドの情報士官がアズガルド語に翻訳、さらにそれを試作段階の翻訳アプリで英語に、という流れである。
「しかし、国には家族がおられるのでは?」
「大学に進んだ息子は革命時にセクトの内ゲバでインテリだと殺されました。妻は革命後になんでもない風邪でなんの教育も受けていない自称医者どもにわけのわからない薬を処方されて死にました。そんな国に未練などありません」
艦委員長ははっきりと言い切った。
「・・・まぁ、情報提供に応じる前提なら受け入れてくれる国はあるでしょう」
これ以上聞いたらさらに地雷を踏みそうだったので聴取を一端打ち切ったのだった。
新世界暦1年10月18日 日本国 東京都 内閣総理大臣官邸
「ラストール親善訪問中のAPTO艦隊が厄介ごとに巻き込まれたようです」
防衛大臣の報告に、首相はいつものえーっという顔である。
「報告は聞いてるけどさぁ、関わるだけ損じゃない?」
面倒そうな相手だから関わらないようにしよう、というのを前面に押し出す首相。
まぁ、ぶっちゃけかつてのカンボジアよりひどい状態の相手なので、関わるだけ損というのは事実ではある。
「しかし、すでに関わってしまってますが」
「地上兵力を派遣するわけでも無し、こちらに被害が出ないのを最優先で対処させてよ」
防衛大臣は不服そうだが、地上戦力を派遣して政権を転覆させるのも大ごとである。
「ところで、拿捕した潜水艦の乗員が亡命を求めているようですが」
「別に我が国への亡命を求めてるわけでも無し、欲しがるアメリカかイギリスにでもくれてやればいい」
そもそも情報面で必要ならウルズに聞けばすむ話で、火中の栗を拾う必要はない、というのが首相の考えだが、ウルズの能力を知らない防衛大臣は情報を得られるチャンスなのだから積極的に取りに行くべきという意見である。
まぁ、全く欲しがらないのも怪しまれるから、そこは成り行き任せで外務省に丸投げ、というのが首相の考えだった。
「まぁ、その辺は任せるけど、とにかく、これ以上自衛官に被害が出ないことを最優先にね」
アメリカでの交戦で戦死者が出たことについて、未だに世論が落ち着いたとは言い難い状態であり、ここでさらに戦死者の上乗せは、辛うじて耐えきった内閣を瓦解させかねない。
「しかし、その場合、APTO艦隊とともに全力で交戦することになりますが」
「そのための立法はしてるんだし、自衛戦闘なら俺からいうことは何もないよ」
とりあえず、APTO艦隊が全力戦闘するなかそれを眺めている護衛艦、という状況にはならないことが確定したので、防衛大臣は防衛省へと帰って行ったのだった。
新世界暦1年10月18日 APTO艦隊 アメリカ海軍 駆逐艦「マッキャンベル」
「接近する対空目標を探知。2方向よりこちらに向かってきます。速度からレシプロ機の大編隊と思われます。距離200マイル」
「対空戦闘用意!」
常に照明が少なく薄暗いCICで、マッキャンベルの艦長は各レーダーや他艦からデーターリンクで送られてきた情報が表示された2枚の大型ディスプレイを眺める。
建造数が3桁になるアーレイ・バーク級の中でも後半になるフライト2Aとはいえ、CICの配置についてはあとのフライト3も含めて、初期型と特に差があるわけではない。
艦隊指揮と艦隊防空を同時にこなすタイコンデロガ級巡洋艦は大型ディスプレイ4枚であり、ここがアーレイ・バーク級との最大の差である。
「・・・え、これマジでここで艦隊防空の指揮とるの?」
唯一の固定翼機運用艦を派遣しているイギリス、多数のヘリコプターを同時運用できて艦内容量や情報処理能力に余裕があるので旗艦を提供している日本に対し、高い防空能力を持つイージスシステム搭載艦を艦隊防空の中枢艦とすることで艦隊内でのアメリカの存在感を大きくする、という多分に政治的な配慮の結果である。
ならタイコンデロガ級を派遣しろよ!というところだが、ちょうど横須賀にいて派遣できたのがマッキャンベルだけだったのである。
実際に派遣された立場からは1隻しか派遣してないのに存在感もクソもあるか、という話である。
「日本に頼んだ方がいいと思うけどなぁ・・・」
日本が派遣している護衛艦まやは、アーレイ・バーク級をベースに日本が独自に設計した艦だが、運用思想はタイコンデロガ級と同じであり、CICもタイコンデロガ級に準じたものになっている。
各国の寄せ集めで、戦闘システムも統一されていない艦隊なので、表示できる情報が少ないというのは、情報処理で指揮官がパンクする敷居が低いということにつながる。
「それにしても数が多いな」
「レシプロ機でしょうからね」
航空機は高性能化に伴って値段も上がったので、航空機が400機群がってくる、なんていうのは基本的に想定されていない。
まぁ、その代わりミサイルが飛んでくるわけだが。
「とはいえ、現時点で交戦可能なのは」
「本艦以外はまやだけですね」
レーダーや防空能力ではマッキャンベルとまやが艦隊内で抜きんでており、続いて英海軍の問題児・・・げふんげふん45型駆逐艦ドラゴン、この3隻がVLSとフェーズドアレイレーダーを装備した艦隊防空艦である。
他に艦隊防空艦としてターターシステムやその発展型の、キッド級駆逐艦とO・Hペリー級及びその亜種、そしてはたかぜ型がいる。
その中で、マッキャンベルとまやはCECに対応しており、どちらか片方だけが探知すれば、その情報で攻撃可能である。その特性を最大限活かすため、この2隻は艦隊で正反対の位置に配置されている。
「本艦とまやで搭載しているSM-6とSM-2が計96発、ドラゴンのアスター30が32発、射程だけでいうならキッドのSM-2が50発もあるか」
「どっちみち足りませんけど」
身も蓋もない砲術長の言葉に艦長はがっくりと肩を落とす。
「抜けた分は各艦でどうにかしてもらうしかないだろ。射程の短いSM-1の艦隊防空艦も4隻いるんだ。なんとかなるなる」
幸いなことに艦隊にいるのは全て軍艦なのでなにかしらの武装はあるのである。
そもそも、艦長は考慮に入れていないが、クイーン・エリザベスのF-35Bのエアカバーもあるのである。
「その各艦の能力もまちまちですが」
空母や補給艦がCIWSしかないのは仕方ないとして(なぜか空母なのに4面8基のアクティブフェーズドアレイレーダーとVLSにESSMを積んでる奴もいるが)、フリゲートを名乗っているのに76mm砲しか武装がない艦もいるのである。
SM-6とアスター30は終末誘導がアクティブレーダーホーミングなので、中間誘導を行う艦のフェーズドアレイレーダーの追跡可能数が同時発射可能数となる。
対して、SM-1とSM-2は終末誘導がセミアクティブレーダーホーミングなので、母艦のイルミネーターによる誘導波の照射が必須である。
とはいえ、SPY-1レーダーを搭載するイージス艦の場合は中間誘導はSPY-1が行うので、同時着弾数こそ従来艦同様にイルミネーターの数に縛られはするものの、着弾時間をずらすことで対処目標数を増やすことができる。これが登場時にイージス艦を次世代の防空艦と言わしめた要素である。
「まぁ、技術格差80年の戦いだ。パーフェクトゲームを目指そうじゃないか」
画面上の光点でしかない敵機の大集団を睨み、これを目視距離にいれずに撃滅してこそ勝利だと気を引き締めるのだった。
いつまでこいつらの話続くんや?完全に想定外なんですが・・・。
次は土曜日か日曜日




