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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
104/201

悪夢再び

新世界暦1年10月18日 ラストール王立海軍第一艦隊旗艦 戦艦「イヴ」


さて、時間は少しだけさかのぼる。

完全に想定外の人民統制委員会の潜水艦運用で奇襲を受けたラストール王立海軍第一艦隊だったが、一部の大型艦が被雷はしたものの、轟沈は無し、全速発揮ができなくなった戦艦が旗艦も含めて2隻出たが、全体の戦闘能力はさほど失っていなかった。


とはいえ、今発生している問題はそれどころではなかったが。


「なんだあの青い光の幕は!?」

「砲弾が弾かれています!」


旗艦の艦隊司令部は恐慌状態である。

敵艦隊はわけのわからない超巨大な半空母半戦艦が2隻で、こいつが40センチ砲を装備しているので最大の脅威である。

続航する6隻の戦艦がいるものの、革命前に建造された前弩級艦で、設計は堅実だが時代遅れの旧式艦であり、超弩級戦艦が主力のラストール王立海軍第一艦隊の脅威ではない。

そこで第一艦隊所属戦艦の攻撃は必然的に超巨大な半空母半戦艦に集中したのだが・・・


「ダメです!また弾かれました!」


あんな訳の分からない構造の艦だから装甲なんて弱点だらけだろう、と思われたのだが、それ以前に青い幕に弾かれてしまうのだ。

ただし、救いもある。


「敵の主砲は発砲間隔がかなり広いですね」

「散布界もバカみたいに広いうえに照準も的外れだ。どんな構造をしとるんだ?」


こちらの攻撃は通じないが、敵の攻撃は当たらない。

とはいえ、まぐれ当たりはあり得るのでこのままではまずいのだが


「しかしこのままだとその前にどちらも弾が切れそうだな」


戦艦の主砲は巨大なので、当たり前だが搭載弾も巨大で、搭載数には限りがあるのである。

ちなみに、参考程度だが大和型戦艦の場合は主砲1門あたり120発、装填が30秒なので1時間全力射撃すると弾切れである。もっとも、その全てが徹甲弾というわけではないうえに、戦艦主砲の破壊力と故障率を考えると撃ち続けるのは不可能である。


「さて、どうしたものか・・・」


第一艦隊司令部は現状を打破する方法も思いつかず、状況は膠着し、双方の主砲発砲音だけが響くのだった。





新世界暦1年10月18日 人民統制委員会 航空戦艦「人民革命」 医務室


「押さえろ!」

「ああぁぁぁぁ」


敵戦艦の主砲弾は全て弾いていて全く被弾していないのに、医務室は負傷者で溢れていた。


「一体どうなっている!?ボイラーの蒸気でも浴びたのか!?」

「いや、航空機格納庫にいただけなんだが・・・」


まだ軽傷そうな1人が苦しそうに返事をするが、顔を含め、見えている皮膚が重度の日焼け、つまり火傷のように真っ赤になっている。


「おえぇえ」

「おい!医務室の中で吐くんじゃない!」


まさにカオスと呼ぶにふさわしい状況であるが、インテリを粛清しまくった人民統制員会にはもちろん正規の医療教育を受けた人材なんてほぼゼロである。

さすがに子供を医者にしたどこかの国ほど狂ってはいなかったが、どっちみちなんの医療知識もない人間しか医療関係者にいないという点では同等である。


「原因もわからないのに治療なんかできるわけないだろ!」


医務委員長は怒鳴っているが、別に原因がわかっても治療できないのだが。




新世界暦1年10月18日 人民統制委員会 航空戦艦「人民革命」航空機格納庫


格納庫を前後に分断する形で中央に設置された謎の装置は強烈な青白い光を放って稼働していた。

神聖タスマン教国が使用していた魔導炉と大型障壁発生器に似たようなものだが、こちらは常時発動で範囲が狭い。

そのうえで神聖タスマン教国のものに輪をかけて遮蔽が甘く、光を浴びた人間は一瞬で放射線熱傷を負うことになる。




新世界暦1年10月18日 人民統制委員会 航空戦艦「人民革命」艦橋


「わははは、見たか新兵器の威力を!」


ラストールの砲撃を弾いている障壁を見て革命管理委員は上機嫌である。


「しかし、こちらの攻撃は当たりませんな・・・」


人民統制委員会の砲撃が当たらないのは、兵員の練度が低いから。だけでは勿論ない。


まず、光学照準儀の工作精度が低く、測距の誤差が大きい。

次に主砲に砲安定装置(スタビライザー)がないので、艦の揺れで照準がぶれる。

そして、艦の左右のバランスが悪いので、大きさの割に揺れる。

主砲や各種装置の工作精度も低いので、きっちり揃わない。

極めつけは、揚弾筒こそ水圧動作だが、その他の装填作業が全て人力という致命的な構造で発射速度がめちゃくちゃ遅いのである。


結果、照準も合わず、散布界も広い、そして発射も遅いという踏んだり蹴ったりな状況である。

唯一の救いは、散布界が広いのでまぐれ当たりを期待できるということだが。


「艦委員長!航空機格納庫で原因不明の負傷が大量発生しています!」


艦橋に駆け上がってきて報告した整備班長の顔も火傷したように真っ赤である。


「なんだと!?被弾したのか!?それとも火災か!?」

「わかりません、次々に皆重度の火傷のような症状で、医務室ももうパンクしています」


その報告に艦橋はぎゃーぎゃーと喧しくなる。


「1番主砲塔旋回装置故障!2番主砲塔21番主砲俯仰装置故障!3番主砲塔32番、33番主砲、閉鎖機故障!」


さらに追い打ちをかける主砲の故障報告。

この結果、使用できる主砲は3門のみである。


「くそっ!面舵一杯!これより戦闘海域から離脱する!」

「艦委員長!逃げるな!」

「無茶言わんでください!このままでは戦闘不能になります!」


離脱して修理を優先することを考えた艦委員長に対し、革命管理委員は敵前逃亡を主張して離脱しないよう強要し、口論になる。


「後続の革命同志より発行信号!ワレ、全主砲故障!戦闘続行不能!」

「ここまでだ。いったん離脱する」


それまで黙っていた艦隊委員長がついに艦隊撤退の命令を出す。


「艦隊委員長!」

「攻撃手段が無いでは戦えません。いったん離脱し、修理を優先します。その間は航空攻撃を」


とはいえ、最初の航空攻撃の結果は散々な結果だったので、効果は期待できないが、後続の旧式戦艦がいくらか命中弾を出しているので、バイタルパートの貫通は出来ていなくても、高角砲や機銃には損傷を与えているはずである。


「潜水艦26号より入電、ラストールの別働艦隊を発見とのことです」

「ふむ」


艦隊委員長はどちらを攻撃するのか、という新たな問題に直面することになったのだった。





新世界暦1年10月18日 ラストール王立海軍第一艦隊旗艦 戦艦「イヴ」


「敵艦隊、離脱していきます。追撃しますか?」

「今のまま追撃しても無駄だろう。まぐれ当たりでも貰えばこちらもただではすまんしな」


艦隊司令は追撃はせずにそのまま離脱するよう指示を出す。


「第三艦隊と合流するか」

「しかし、第三艦隊は親善訪問の艦隊といるのでは?」

「だからだよ。知恵を借りるくらいは問題なかろう」


ちなみに、人民統制委員会にAPTO艦隊をぶつけようとしたのは第三艦隊の独断なので、第一艦隊は知る由もない。


「いずれにせよ、あの青い膜をどうにかせんことにはどうやっても引き分け以上にはできんしな」


なにか知恵があればいいがなぁ、と思うが、ふと思い出したので確認してみる。


「そういえば敵潜水艦は?」

「駆逐艦が捜索を続けていますが、雷撃後すぐに離脱したようですね。探知の報はありません」

「あのわけのわからん膜が水中にないのなら魚雷が有効だと思うんだが」

「とはいえ、腐っても戦艦ですから、白昼に駆逐艦に突撃させるのは無茶では」


普通、魚雷の射程は短い。下手をすれば駆逐艦の主砲よりも短いことがある。

整備性をかなぐり捨てて、戦艦主砲より射程が長かったどっかの帝国海軍がおかしかったのである。


「うーん、試してみたいところではあるがなぁ・・・」

「夜を待つしかないでしょうね」


そこまでつかず離れずで触接できればいいのだが。


「とりあえず今は損害の集計だな」


人民統制委員会とラストールの最初の海戦は、ややラストール不利の状態で双方大した戦果もなく終わったのだった。

次は・・・週二更新できるかなぁ・・・?

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかの子供の工作で本当に最強の戦艦作れちゃったwwwwww 原子力しゅごい
[一言] 悪夢再び・・・つかより性質が悪い
[一言] 今話の題名から封印が解けて二大怪獣が出現して競技場破壊したわけではないのですね。 というよりあのバリア装置拾ってきたのですか。そして艦内は地獄絵図。これ爆発とかしないか心配。
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