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1 穴に落ちる

 放課後に学校の音楽室でピアノを弾くのが私の趣味。家にもピアノはあるけど、音楽室は音の響きが良い。それに、家に帰ってもどうせ誰もいない。ショパンのワルツのイ短調は私の好きな曲。


 「悠歌(ゆうか)~」

 「…はいはい」


 声をかけてきたのは、私の幼馴染で、現在ただ一人の友達かもしれない真衣(マイ)。要件は分かってる。


 「遊びになら行かないわよ」

 「…冷たい」


 彼女が、私に色々気を使って誘ってくれてるのは分かってる。でも、私はみんなでカラオケで騒いだり、写真シールを撮ったり、ぬいぐるみを取ったり、スポーツをしたりして気分が晴れる性格じゃない。逆に疲れてしまう。確かに毎日何かつまらないけど、ピアノ弾いて本読んで、の方が気晴らしになる性格なの。暗くてごめんなさいね。


 「どうせ、この後は図書室で本でも借りようってんでしょ」

 「うん、金曜日だし。何冊か借りて」

 「あー、信じられない!あんただって、そのダサい眼鏡をやめてコンタクトにして、もうちょっとおしゃれをすれば結構見られるのに。金曜の夜に親がいなければ遊び放題じゃない!」

 「…」

 「…あ、ごめん」

 「ううん」


 じゃあ、また機会があったらね、と真衣は何か気を使いながら帰って行ったけど、別に気に障ったわけじゃない。真衣は私が最近元気がないのは親がいないせいだと思っているみたいだけど、そんなことはない。…と思う。ただ何となくやる気がないというか。

 あ、親は家にいないだけでちゃんと元気。ただ、仕事が忙しくて殆ど家にいないだけ。実家にいながら一人暮らし状態。人によってはうらやましく思うのだろうけど。私は嬉しくはない。悲しくもない。…と思う。


 何となくピアノを弾く気が失せてしまったので、図書館に移動。うちの学校の図書室は、蔵書数の多さが自慢。おかげで読む本には困らない。利用者はごく一部らしいけど。試験前以外に、放課後の利用者を見たことがない。

 文学全集の類はもう端から全部読んでしまったので、何か面白そうな変わった本がないか探す。まあ、大抵の本は読んだことはなくても背表紙は見たことがあるぐらい図書館には通っているのだけど。

 そうやってしばらく見て回ると、やたら装幀の派手な分厚い本を見つけた。昔の外国の本みたいな造り。これほど目立つ本なら、今まで見たことがありそうなものだけど、記憶にない。分厚いし週末の暇つぶしにはちょうど良さそうなので借りることにする。図書委員がいないけど、まあ良くあることなので、自分で貸出カードを記入して受付に置いて行く。


 私のことを書棚の影からじっと見ている女の子がいることに、その時は気が付かなかった。



 家に帰って、2階の自分の部屋でじっくりと読んでみると、その本は架空の世界の歴史書だった。主人公がいるわけでもなく、淡々とその世界の歴史を記す。そういうスタイルのファンタジーなのだろう。しかし、普通の歴史の本と違い、多くの神々や英雄たちが出てくるので、結構面白い。切りの良いところまで読み終わった時には、すっかり遅くなっていた。

 もう寝て続きは明日にしよう、と思った私は、ベッドの方に歩き出して慌てて立ち止まる。床に穴が開いている。危うく落ちるところだった。床が崩れたのか?と一瞬思ったが、穴の縁がぼんやりとしていて、境目がはっきりしない、見るからに異常な穴だ。異常を感じて一歩下がったが、そのとき後ろから「チッ!」という誰かの声がした。振り向く間もなくその声の主は、


 「ど~ん!」


 という緊張感のない声とともに、私を穴に向かって突き飛ばした。


 「ええっ?き、きゃああ!!」


 私はなすすべもなく、穴に落ちていった。


勢いで書いた。ちょっと反省している。

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