↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第2章 THE VOID

序文


誰も知らなかった。


あの日、ルヨコ・ナミネの中で――

何かが目を覚まそうとしていたことを。


それはただの夢だったのか。


それとも、遠い過去から呼び起こされた記憶だったのか。


ルヨコ自身でさえ、その答えを知らない。


ただ一つだけ、確かなことがある。


この瞬間を境に――

Ruyoko Namineの日常は、二度と元には戻らない。


そして、虚無は静かに彼を見つめていた。

ルヨコの呼吸が止まった。

「……」

死んだ男の目が――

まっすぐにルヨコを見つめていた。

「……ち、違う……」

声が出なかった。

その身体は瞬きもしない。

呼吸もしない。

ただ、じっとこちらを見つめている。

その時――

バキッ!

音が森に響き渡った。

死体からではない。

空からだった。

ルヨコはゆっくりと上を見上げた。

「……何……?」

青かった夕暮れの空が、まるでガラスのようにひび割れた。

紫色の亀裂が空一面へと広がり、雲を引き裂いていく。

月が消えた。

星が消えた。

そして――

闇がすべてを飲み込んだ。

突然、激しい風がどこからともなく吹き荒れた。

木々は、まるで古代の何かに頭を下げるかのように大きくしなった。

無数の葉が空中へと舞い上がる。

大地が震えた。

「な、何が起きてるんだ?!」

ルヨコは後ずさった。

死体が消えた。

木々が消えた。

森そのものが、無数の黒い破片へと崩れ始めた。

現実そのものが――

壊れていた。

静寂。

完全なる静寂。

風もない。

鼓動もない。

音もない。

ルヨコは、果てのない闇の中に浮かんでいた。

「……ここは、どこだ?」

彼の声が永遠に響き続ける。

「……誰かいるのか?!」

返事はなかった。

ただ、静寂だけが答えた。

その時――

かすかな紫色の光が現れた。

一つ。

それが十になった。

十が数千になった。

そして――

無数の紫色に輝く瞳が、暗闇の至る所でゆっくりと開いていった。

ルヨコを見ている。

あらゆる方向から。

上から。

下から。

後ろから。

すべての瞳が、ルヨコを見つめていた。

ルヨコの身体が凍りつく。

「だ、誰なんだ……?」

無数の瞳が――

一斉に瞬きをした。

同時に。

闇が波打った。

何か巨大なものが姿を現し始める。

最初に見えたのは――

巨大な手。

そして腕。

やがて、山よりも巨大な身体が姿を現した。

影で織られたようなマント。

その顔は見えない。

ただ、闇の奥から二つの白く輝く瞳だけが浮かび上がっていた。

その存在だけで、現実そのものが震えている。

ルヨコは本能的に片膝をついた。

身体が立ち上がることを拒んでいた。

「お、お前は……何なんだ……?」

巨大な存在がルヨコを見下ろした。

その声は、存在そのものを震わせるように響いた。

「ついに……」

その言葉は、声として発せられたのではなかった。

ルヨコの頭の中へ直接響いていた。

「幾千もの世代を経て……」

「血が目覚めた。」

「……血?」

ルヨコの手が震えた。

「何を言ってるのか……分からない……」

その存在は巨大な手を伸ばした。

指先に、暗紫色のエネルギーが集まり始める。

「ルヨコ・ナミネ……」

「お前は普通の人間ではない。」

ルヨコの目が大きく見開かれた。

「な、何……?」

「お前は最後の末裔……」

その瞬間――

周囲の闇が激しく震え始めた。

巨大な存在が顔を向けた。

まるで、別の何かの存在を感じ取ったかのように。

その声が変わった。

緊迫していた。

「よく聞け。」

突然――

ドォォォォン!!

虚無そのものが激しく揺れた。

ルヨコの足元に亀裂が走る。

「何が起きてるんだ?!」

無限の闇の中に、いくつもの声が響き渡った。

「後継者が目覚めた。」

ルヨコを取り囲んでいた闇が崩壊する。

現実が砕け散る。

すべてが、まばゆい白い光の中へと溶けていった。

ルヨコは叫んだ。

そして――

何もなくなった。

「……え?」

朝の光が寝室の窓から差し込んでいた。

外では鳥が鳴いている。

見慣れた天井。

ルヨコは勢いよく上体を起こし、荒い呼吸を繰り返した。

「はぁ……はぁ……」

シャツは汗で濡れていた。

心臓が激しく胸を打っている。

ルヨコは部屋を見回した。

何も変わっていない。

壁には学校の制服がきれいに掛けられている。

目覚まし時計は――

午前7時12分。

「……夢……?」

ルヨコは額に手を当てた。

「……妙にリアルだったな。」

そして、気まずそうに笑った。

「俺、ホラー映画見すぎたのかな……。」

あとがき

第2章を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今回の章では、ルヨコ・ナミネの前に現れた謎の存在と、彼自身も知らない「血」の秘密が描かれました。

これは、ルヨコの物語が大きく動き始める最初の兆しです。

果たして、あの出来事は本当にただの夢だったのでしょうか。

そして――

ルヨコの中で目覚めようとしているものとは、一体何なのか。

その答えは、これから少しずつ明らかになっていきます。

それでは、次の章でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。