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最終話




「ショータ君、おめでとう! 一番最初は確かに戸惑ったけど、もうここまで来たら心から言わせてもらうしかないわ! 本当におめでとう! 女王陛下といつまでもお幸せにね!」


「おめでとうショータ! お前と一緒にあんな大冒険ができたことはオレの人生の最大の誇りだ! これからもちょくちょく子供連れて顔は見に来るからよろしく頼むぜ!」


「おめでとうございますショータ君。まさか私と同じ所に就職してくれるとは完全に予想外でしたが、どうかこれからも同僚としてお互いに研鑽し合える仲でありたいものです」


「ショータ殿、おめでとうございます。私の方からも今後はケンのことをよろしく頼みます。そしてユキマミレ人の私も今日ばかりは女王陛下万歳という気持ちです。今日は最高の日です」


「セキーシさん、ブトゥーカさん、ケンジャーさん、コノウェさん、ありがとうございます!」


 ……ちなみにコノウェ殿はこの会話をした時点で既に四杯目ぐらいのグラスを握っていたらしい。オイオイ。




「ショータ様、おめでとうございます。いえ、新しいお義父様とお呼びしても……なんて、うふふっ……お母様と、いつまでも平和に幸せにお過ごしくださいね」


「私からも、おめでとうございますショータ様。ほとんどおまけのような立ち位置ではありますが、私も貴方の家族の一員になれたということを心から誇りに思います」


「しょーたさま、おめでとーございます」


「うー」


「アーネ王女様、イーテッシュさん、マーゴちゃん、マジテちゃん、ありがとうございます!」




「ショータサマッ、本当におめでとうございますっ! アタシも昔はアナタのことで結構色々ありましたケド、今はただただ純粋におめでとうって言わせてくださいっ!」


「おめでとうございますショータ様! 私が結婚できたのだってショータ様と一緒にトコナッツに留学した時が一番のきっかけだし、あの時は貴方にいっぱい手伝っていただきましたよね!」


「おうー」


「クロ王女様、イモト王女様、オレノ君、ありがとうございます!」




「いやーもうホント今日という日はウオデッカ王国史上最大の慶事なんじゃないかい!? おめでとうショータ君! 君ほどの快男児は見たことないよ!」


「チャラウォッジ様、ありがとうございます!」




「……おめでとう、ショータ殿。これからは、仕事の内容はそれぞれ違えど、同じ立場の者として共に陛下とこの国を支えていこう」


「ヨイダンナー将軍さん、今日は本当にありがとうございます! 愛してます!」


 夫への礼がまた一段とお熱いですね……。




「…………ショータ」


「あ、マッティー君」


「ほら……顔見せてあげなよ」


 ……未だにオコッサ殿はマッティーの懐に顔を押し付けてしがみついていた。マッティーの方も右手で彼女の後頭部を、左手で背中を抱きしめている。

 それにしても二人の身長差がすっかり大きく開いていて、オコッサ殿の小柄さが際立つ。そういう所もちょっと可愛いが。


「オコッサさん」


 …………ショータ様がお声をかけて数秒経っても返事は来ない。


「オコッサ」


 マッティーが彼女の髪を優しく撫でながら呼びかけても同じ。本当にサラサラと綺麗すぎて一回ぐらい私も触ってみたいわね、その御髪。


「……ごめんショータ、なんかもう、こうやって押さえつけとかないと今にも逃げ出しそうでさ」


「そうですか」


 ……実際問題、彼女は今どういう心境なんだろうか。何も言ってくれないから何もわからない。


「……オコッサさん」


 もう一度呼びかけても相変わらずだったが……ショータ様は構わず話を続けた。


「今日はこの場に来てくれただけでも嬉しかったです。2年後は貴女とマッティー君の番です。僕はその日が来る時も楽しみにしています」


 ……ここまで聞いて、彼女はようやく顔を横に向けて、流し目でこちら側を見据えた。

 予想通りと言うべきか、その目は涙にまみれて赤くなっている。


「…………ショータなんぞ呼ばん」


 そしてやっと口を開いてくれたかと思いきや……憎まれ口。


「わたしとマッティーの時はもっとしめやかにやる。こんなに観衆は要らん。多すぎて邪魔くさい」


 ……やさぐれすぎじゃない?


「なんならもう式自体が面倒くさい。ダラダラと長話を聞くばかりで、こんなに大げさで時間ばかりかかりおる、かったるい行事だとは思わんかった。

 マッティーの部屋の中で一日中ずっとずぅーっと一緒におるだけの方がよっぽど良いわ。わたしにはマッティーだけおれば良いんじゃ。マッティーだけ……」


 彼女は結局またマッティーの内側へと顔を戻して、目を背けてしまった。


 ……考えてみれば、いくら現在の彼女はマッティーと両想いになっているとは言え、

 かつて年単位の時間をかけて国をまたいででも求愛を続けてきた初恋相手が、いかに自分のことを最初から歯牙にもかけていなかったかを今再び見せつけられたようなものなのか。


 最近はもうすっかりショータ様への態度が物静かになり、ようやく以前までの想いを割り切ることができたのかと思い込んでいたが、

 いざ結婚式本番を目の当たりにしてしまうと、やはりどうしてもぶり返す物があったのだろうか……。


 ここからまたどうやって声をかければいいのかしら……と、思っていると。


「わかりました。じゃあオコッサさんの好きなようにしてください。

 オコッサさんのドレス姿はきっとすっごくお綺麗になるはずだったんでしょうけど、本人にやる気が無いなら仕方がないですね。ここは諦めましょうマッティー君」


「それもそうだねショータ。あー残念だなー、オコッサの晴れ姿はもう誰にも見せびらかすことはできないなんてさー。

 僕の部屋で一生ワンワン泣いてわがままを言うだけの赤ちゃん同然の女の子の世話に、僕は一生を捧げるしかないんだねー」


 二人でひっどい挟み撃ちを見舞った途端、彼女はマッティーの身体を振り払って、ようやく正面を向いた。


「おのれらァッ!! さっきから好き放題言わせとったらわたしのことを何じゃと思うておるゥッ!! 誰が赤ちゃん同然じゃッ!! 大概にせえェッッ!!」


 あ、随分久しぶりに見たな、大声で怒鳴るオコッサ殿なんて。彼女って元々こういう子だったわ、そういえば。


「あははははははっ!」


「笑うなァァァァァァァッ!!」


 ショータ様とマッティーが二人同時に大声で笑う。それにしてもさっきの連携攻撃、やたらと息ピッタリだったわね。

 ひょっとして貴方達が一緒にユキマミレ帝国に留学していた時も、こうやって二人でオコッサ殿をおちょくり回したりとかしてたの?


「……オコッサ殿」


「む……」


 とりあえず、そろそろこのあたりで私も声をかけておく。


「まだ少し先の話ではありますが、貴女とマッティーが結ばれた暁には、貴女もまた私の義理の娘という続柄になります。その日が来ることをとても楽しみにしておりますよ」


「ま……まぁ、そうじゃな、ヴィマージョ殿……」


 また一段どころか百段ぐらい我が家が賑やかになりそうな話だわ。


「とすると、つまりアレじゃな、アレ」


「と言いますと?」


 ……なんとか元気が戻ってきたんじゃないの、彼女。


「ショータはわたしの義理の父という続柄にもなるんじゃな。聞いておるかショータ、将来の義理の娘たるわたしに何か今のうちに言うておきたいことなんぞあるか?」


「そういえば確かにそうですね。オコッサさんが僕の娘ですか」


 確かにその辺もそうなるな……どんどん私の家族構成が濃くなっていく……。


「どうじゃ、そなたは娘としてならわたしのことを愛してくれるのか? どうなんじゃそこんとこ」


「なかなか難しい質問が来ましたねこれは」


 ……ここまで来て答えを渋るショータ様も結構意地悪ですよね。


「何が難しいんじゃ、ほれ。まぁ今のわたしはマッティーが紛れもなく一番じゃが、そなたもまた、お互いに二番目ぐらいの取り扱いに収まるんではないのか?

 いやそなたの二番目は将軍殿か? あんなに恥ずかしげもなく男同士で愛してる愛してると豪快に告白し合いおって。暑苦しいことこの上なかったわ」


 ……暑苦しかっただろうか。ショータ様が夫のことも愛すると堂々断言なさって、夫もその想いに快く応えてくれたのは、私としては非常に嬉しかった部分なのだが。


「大体何じゃ、そなたとヴィマージョ殿の惚気を聞かされるだけならばまだ覚悟を決めてきたつもりでおったのに、将軍殿とまで相思相愛とは聞いとらんわ。

 わたしに向かって『好きだけど大は付けられない』などと言い切りおった日のことを決して忘れはせんぞ。つまりわたしはオジサン以下か? え?」


 一番傷ついたのそこかい。いや確かにそういう観点から見ると彼女が納得できないのも無理はないのか……と思いきや。


「いやオジサンとか言ってるけど僕の実父だよ? こっちは義理じゃなくて」


「マッティー君と結婚したら、僕だけじゃなくて将軍さんもオコッサさんの義理のお父さんになりますよ? 貴女も仲良くするべきじゃないですか?」


「ぉうぐッッ……!」


 またしても前後から二人揃っての的確なツッコミ。


「いや……ま……まぁ、何じゃ、百歩譲ってじゃな、つまりわたしは将軍殿に次いでそなたの三番目ぐらいの立ち位置か?

 とにかくわたしが聞きたいのは要するにそういうことじゃ。どうなんじゃ、言うてみい『ショータパパ』よ? のう?」


 ……これ見よがしなショータパパ発言に噴き出しそうになるわ。


「とりあえずそのあたりは実際にマッティー君とオコッサさんが結婚してから考えることにしましょう!」


 やっぱり意地悪じゃないですか貴方。


「先延ばしにして逃げおるんか貴様ァァァァァァァァァッッ!!!」


 ……これも随分久しぶりに聞いたなぁ、貴様って言い方で怒るオコッサ殿。

 この高音の叫び声、また夜寝る時に頭の中で延々反響しそうだわ……。


「……さて、僕たちだけうっかり言いそびれる所だったよ。おめでとうショータ。名目上は義理の親子になっちゃったけど、今後も変わらず僕の友達でいて欲しい」


「ありがとうございます、マッティー君」


 無理矢理まとめに入っちゃってるし……。


「…………オコッサ?」


「……今度こそショータがわたしの手を握ってくれたら祝ってやっても良いぞ」


「じゃあ遠慮しておきます。僕に無茶な要求は二度としないって約束したはずですし、新婚早々女王様もマッティー君も見ている目の前で浮気をするわけにもいきませんから」


「そんなに嫌かァァァァッ!! もうええわァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」


「おいおいショータ、後でこれ慰めるのは僕だよ?」


「そんなこと言いつつマッティー君は嬉しそうじゃないですか」


「まぁそれもそうかもね、元々ショータにフラれた所を僕が抱き込んで付き合い始めた間柄だし。慣れたもんさ、ははは」


「あははははっ」


「二人揃ってわたしを笑い者にするなァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!」


 オコッサ殿を丸め込む流れが鮮やかすぎる……やっぱり阿吽の呼吸じゃないの、ショータ様とマッティー……そんなに仲良かったのね……。




 いやぁ、ほんと……素敵な旦那様が増えた矢先から、こんなに賑やかで可愛らしい娘が加わる予約まで入っちゃって……。




 世界平和に、心からの感謝を捧げるわ。




 * * * * * *




 ……魔王すら倒した世界最強の英雄。

 それはつまり、魔王すら超える世界最強の強敵。


 そんなことを考えていた時代もあったわね。


 結果はやはり私たち全員の惨敗。誰一人としてショータ様には勝てなかった。旅仲間のセキーシも、私の娘二人も、クロ王女も、オコッサ殿も、そして私自身も。

 本当に世界最強の強敵だったわ。こんなの勝てるわけないじゃない。


 そして全滅であると同時に私の一人勝ちでもある。私はこんなにもショータ様に愛されている。もう彼は誰にも渡さない。彼は私のものであり、私は彼のもの。


 彼とは28もの年齢差がある以上、私は彼よりもずっと早くにこの世を去るだろうが、それはつまりほぼ確実に私の最期の時まで彼は側についていてくれるということでもある。

 こんなに手厚く約束された幸福が他にあるだろうか。いいや、無い。あるはずもない。


 私以外の女性の身体には絶対に触らないという意思表明も、何もそこまで意固地になられずともと最初は思っていたが、ここまで徹底されてはその熱意に敬服するしかない。

 つまり彼の愛を最初からずっと独占できていたということに、私も本当は心の底で優越感を覚えてしまっていたのかもしれない。


 もし彼が、娘たちに風呂に誘われた時に普通にたじろぐような初心な男の子でしかなかったとしたら、恐らく私もここまで彼に入れ込むことはできなかっただろうか。

 生まれたての私の孫娘にすら触ろうとしてくださらなかったのはいくらなんでも説得したけど……流石に赤ちゃんは例外でいいでしょ……。


 何だかもう、今となってはどこを振り返っても笑えてくるわ……。


 ……ああそうか。要するに、この6年間の戦いは……。


 私のためだけに全ての道筋が最初から最後まで隈なく整えられた勝ち戦だったのか。


 そういうことなら私はこれから世界最強の勝利の美酒に思う存分酔いしれることにします。


 ええ……心から言わせてください。


 愛しています、ショータ様。


 どうか末永くよろしくお願いします。




 * * * * * *




「……ショータに……しょぉたに……ぅっ……おめで、とう、って……言えん、かっ、た…………っく…………わたし……いつも……いっつも……こんなっ……ぅ……うう……っ……!」


「いいんだよ」


「まってぃー…………まってぃぃぃいっ…………っ!!」


「今日も好きなだけ泣きな」


「うあ゛あ゛あ゛あ゛ぁ…………っっ!!」




 * * * * * *




















「おばーさま、ほんとうにこのなかにあかちゃんがはいっているの?」


「ええ、そうよ。マーゴも最初はお母さんのお腹の中にこうやって入っていたの」


 私の胎も随分重たくなってきた。

 なんともまぁ久しぶりだわ、この感触。


 今まで末っ子だったマッティーが今年でとうとう20歳になるから……そうか、丁度20年ぶりなのか。


「お母様、イモトの二人目の子の出産予定日もそろそろだと聞いています。めでたいことが続きますねぇ」


 隣からアーネが、マジテをあやしながら語りかける。


「つまり私はもうすぐ四人目の孫と、六人目の子をほぼ同時に授かるのね」


 いざ言葉に出してみるとなかなか凄まじい状況だが……今の私には素直な幸福感しかない。


「アーニとウォルもあちら側でさぞかし驚いていることでしょう。姪っ子甥っ子ならまだしも、まさか下のきょうだいがまだ更に増えるなんて」


「そりゃあ、私自身も大概驚いてるしね……」


 ……私のこの年齢での妊娠出産だなんて相当に骨が折れる仕事になるのではないかという話だが、実はその点についてはあまり心配をする必要は無い。


 何せ、この子の父親は世界でも指折りの回復魔法の達人なのだから。




「ただいま帰りました」


 噂をすれば何とやら……いや、頭の中で思っていただけだが。


「お帰りなさい、ショータ」


 私の二人目の愛しい人。


「お腹の具合はどうですか、ヴィマ」


「大丈夫よ、今は落ち着いてるから」


 こうして喋っていると、横からアーネがクスクス笑う声が聞こえてきた。


「なんだか……お二人が『ショータ様』『女王様』って畏まった呼び方をし合っていた頃が、もう随分と昔の話になっちゃったみたいですよねぇ」


「確かに……そんな気もするわ」


 ショータが私のお腹を優しく一撫でしていく。


「考えてみると、この子はマーゴちゃんたちの叔父か叔母という続柄になるんですよね」


「うふふっ、確かにそれはそうなんですけど、多分本人たちはきょうだいぐらいの感覚ですよ、いくらなんでも」


「それもそうですか」


 なんだか私の家族構成がどんどんややこしいことになっていくという話を、ずっと繰り返している気がする。

 何せ来年にはまだ更に私たちの義理の娘、アーネたちの義妹、マーゴたちの義理の叔母として「オコッサお姉ちゃん」が加わる予約まで入っているし。


 ……ここで、部屋の扉をコンコンと叩く音が響く。


「陛下、失礼します」


「どうぞ」


 入って来たのはセキーシだった。


「ショータ君、大ニュースよ。ケンジャーのとこもコノウェさんのお腹の中に赤ちゃんが出来たことがわかったって!」


「本当ですか!?」


「いやーケンジャーはこーゆーことをちゃんと言ってくれるから助かるわ」


 おやまぁ……今度はそっちでも、か。


「本当、次から次にめでたいことが続きますねぇ、お母様。今年も良い一年となりますね」


「そうね」


 私も自分のお腹をさすりながら、側に立つマーゴの頭を一撫でする。


「おばーさま、はやくあかちゃんみたいね」


「焦らないの」


 ……そういえばマーゴと、いずれ言葉が喋れるようになったマジテには私は「おばあ様」と呼ばれるとしても、

 私のこの新しい子には「お母様」と呼ばれることになるんだろうか。なかなかややこしいわね。


 これまた気の早い話ではあるが、なんなら程なくしてマッティーの子供まで更に加わる可能性もあるし。露骨に催促するような真似は決してしないけど。


 なんともまぁ……楽しそうなことで。


 私の老後はまだまだ、なかなか忙しそうで……退屈しないわ。




「ヴィマ」


「ショータ」


 名前を呼び合うだけでも心地良い。

 ヨイダンナーと結婚したばかりの頃を思い出す。当然、あなたのことだって今も昔と変わらず愛してるわよ。彼と同じぐらいね。




 ああ……平和って幸せだわ。




 * * * * * *



















 そうして、私が47歳にして新しく産んだ男の子には、ショータによって

「ユウ」という名前が与えられ……。




 その翌年のマッティーとオコッサ殿の結婚式は、それこそ式本番の前後の日々からして一波乱どころか百波乱ぐらい吹き荒れる慌ただしさとなり……。


 その後もオコッサ……もう正式に私の義理の娘になったんだから敬称は要らないか……彼女の子供が出来るのもあっという間だったし……。


 補足しておくと生まれてきたのは女の子だったわ。




 更にそのまた翌年には、トコナッツ王国の方でクロギャール王女がとうとう本当の運命の相手を見つけたなどと言い出して、

 25歳にしてようやく正式に結婚を果たし、もうこれ以上他の男性と付き合うことはやめると決意した、という話が流れてきたり……。


 ちなみに過去に彼女の恋人として三人同時デートとかやっていたという二人の男性は、クロ王女との関係をすっぱり割り切って同性婚したらしい…………え?


 いや、三人同時デートはクロ王女の胆力がすごいから出来たとかじゃなくて、そもそも男性二人に元からそういう感じの素養があったから……ってこと?


 ……お、おめでとう……。









 …………というわけで。


 結局セキーシ一人だけが最後の最後まで独身ですか?


 と、ツッコもうとしているそこの貴方。


 


 更にまた時を経て彼女が30歳になった頃にね。

 10歳も年下の若い新人男性騎士が突然セキーシに愛の告白をかましたんだわ。


 勇者ショータ様と共に戦った英雄の一人である彼女に憧れて、自分も騎士になったんです、なんて言い出してね。


「いやいやいやいやちょっと待って待って!? こんな売れ残りのオバサンなんかからかってんじゃないわよ!?」


 セキーシ本人は慌ててこう返していたけど……。


 それに対して新人君が一体どんな言葉をかけて彼女を口説いたか……大体予想がついた人もいるんじゃないかしら?


 そう。




「ショータ様なんて28歳も年上の女王陛下を口説き落としたじゃないですか!!」




 この通り。




 本気で笑ったわ、あれは。




 * * * * * *



















――――……これは、ウオデッカ王国とユキマミレ帝国の国境に作られた貿易都市の市長となったオコッサマミコ29歳が、夫と娘と共にウオデッカ王城を訪れた時の出来事。




「誕生日おめでとう、ユウよ。そなたもとうとう12歳じゃな。まったく、顔を合わす度に男前に育っていきおるわ、そなたという奴は。

 あーんなに小さかったそなたも、最早わたしの身長を追い抜く日はそう遠くはなかろうて。


 ところで前にも話したことがあったはずじゃが、12歳といえばそなたの父が見事世界を救って帰ってきた時の年齢じゃ。

 あやつは当時からそれはそれはいい男でのう……何、わたしも丁度その頃にはそなたの父と、それはもぉぉーう語りきれぬほど沢山の大変なことがあってな。


 わたしはのう、あの頃はそなたの父に恋焦がれておったんじゃ。

 見ての通りわたしが結婚したのは結局こちらのマッティーの方じゃが、そのきっかけを得られたのも何だかんだであやつのおかげじゃった。


 あやつの心だけは最後までわたしには掴めんかったがな、あやつには本当に、数えきれぬ程の沢山の物を貰った。どれもみんな、みぃんな素晴らしき思い出じゃ。


 くははっ、聞きたいか? 山ほどあるぞ、あやつとの思い出話なら。好きなだけ聞かせてやろう。と言うかむしろ聞け。語らせろ。片端から全て念入りに詳しゅう喋るぞ今から」


「おねえちゃん」


「うん? どうかしたか?」


「ぼくは今日の誕生日におねえちゃんにどうしても伝えたいことがあるんです」


「ほほぉ、それは一体何じゃ、言うてみい。可愛い弟の頼みとあらばおねえちゃんは何でも叶えてやるぞぉう?」








「大好きです。ぼくはオコッサおねえちゃんを愛してます。結婚してください」








「は?」









――――おしまい。


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― 新着の感想 ―
皆ハッピーなエンドになってよかった……!!! 途中からちまちまと読もうと思ったのですが、9話目のあたりからどうなるのか気になって夜のうちに最後まで読んでしまいました。 ショータ君はもちろん、女王陛下が…
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