蒲田の踏切
JR蒲田駅から某私鉄線が2本伸びて並行している。ちょうどその2線の分岐点となる、とある踏切の話。
随分昔のこと。母が読んだ、ある記事。記事は投稿者の不思議な体験を科学的に解決するという内容だったという。
蒲田某所に住む投稿者は、息子の嫁との折り合いが悪く、それを苦に、嫁は子供を背負って踏切で自殺をした。以後、後ろめたさもあり、仏壇に供えた嫁の位牌を後ろ向きに置くようにしているが、気付くと勝手に位牌が表を向いている。自分以外、誰も触らないはずの位牌が、裏返しにする度に表側に戻っている。何度も何度も・・・
この相談に対して、学者と思わしき回答者は、線路沿いのご自宅ですから、電車の振動で動いているのでしょう、といった答えをした。
蒲田が実家である母は、私鉄2線の分岐点となる例の踏切りが頭に浮かんだという。似たような踏切事故があったし、そこでは不思議な話をよく聞いていたからだ。
母の妹は、下校時によく寄り道をして帰宅していた。例の踏切のまん前にある公園だ。
いつものように友人と座っておしゃべりしていると、自分の肩をトントンと叩く者がいる。友達がいる方向とは反対側から叩かれたので、なあに?と振り向くと、青白い手だけがぬっと伸びて、自分の肩に置かれていた。人の気配は手以外に何もない。
びっくりして友達とともにその場を逃げるようにして帰宅したという。
お隣さんの、個人タクシーを経営している旦那さんも、その踏切で不思議な体験をしたという。
乗客のいない昼下がりの走行中、例の踏切前で停車していると、急な眠気に襲われる。今までにないくらいの睡魔だったので、危険を感じ、道の脇側に車を寄せ少し休むことにした。ウトウトとしている状況でふと、バックミラーを何気にみると、旦那さんはぎょっとした。
タクシーの後方のボンネットに、ぺしゃんこに凹んだ車が乗っかっているのだ。何度かミラー越しに目を凝らしてみるが、たしかに乗っている。おそるおそる振り向くと実際には何も乗っていなかった。
その日、お隣の旦那さんは高熱でうなされしばらく寝込んだという。
私の兄もその踏切りで不思議な体験をした。終電後その踏切を渡ろうとしたとき、突然遮断機がカンカンカン!と音を鳴らして降りたという。終電過ぎ、線路には何も通らないまま、遮断機は鳴り終わると静かに上がった。
これらの話を聞くと、冒頭の記事内容についてつい考えしまう。本当に位牌は電車の振動によるものだろうか?もしかしたら、怪異の一種では?もしかしたら、この踏切は異界と繋がってる場所では?とオカルト好きとしては勘ぐってしまう。記事の踏切が、実際の踏切と本当に一致しているのかは検証のしようもないし、全てが見間違い、遮断機が降りたのも点検か何かだと説明はつくかもしれないが…
ちなみに、今はこの踏切のど真ん中には大きいマンションが建っている。まるで何かを防ぐ大きな位牌のように。




