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未定  作者: 悠木サキ
59/66

第59話 劣勢

──どういう状況だよ!

 敵の火線をくぐり抜け、第二分隊のところまでたどり着いたところであったが、すでに、味方が敵に攻め込まれている状況にシーナは焦りと苛立ちを覚えた。

 ダダッ!ダダダッ!

 シーナは右舷空中にいる敵に牽制の射撃をしながら前進する。

 状況は厳しかった。駆けつけたばかりだが、目に入った限りでは、槍を構えるセーグネルと、おそらくノベルも──彼も刀を手にしている──が甲板に乗り込んできた敵兵にあたっていたようだ。

 他の分隊員は掩体で、空中の敵に射撃をしている。しかし、人数は少ない。

(──あ?)

 シーナは掩体の陰にしゃがみこんでいるアビィに気が付いた。

 どこか負傷したのかと思ったが、外傷は見られない。しかし、怯えたようすで身を丸めている。

「おいっ!どうした!!」

 掩体の裏まで来たシーナは、小銃を構え辺りを警戒したまま、しゃがみこんでいるアビィに向かって怒鳴った。

 自分の前に現れたシーナに気が付いたアビィが顔を上げる。

 泣いていたのか、彼女の目は赤く腫れぼったくなっていた。

──なにやってんだよ!

 怪我をしているわけではない。彼女は単に怯えて泣いているだけだ。

(腰抜けがっ)

 アビィが戦意を喪失し、任務を放棄していることを悟ったシーナは憤った。

「てめえも戦えっ!」

 この状況で、いつからこうしていたのだろうか──?小銃を構えながら、シーナはしゃがんでいるアビィの肩を片足で押すように蹴った。

「きゃっ!」

 突然シーナに蹴られたアビィは掩体に体をぶつけた。しかし、アビィはさらに怯えたように体を丸めて震えるだけだった。

「ちっ!」

 ダメだこいつは──これ以上時間をかける暇はないと感じたシーナは、アビィを捨て置いて前に進む。

「シーナ!」

 加勢にやってきたシーナに向かって、セーグネルが彼の名前を呼ぶ。その声は歓喜の色を帯びていた。

 彼女に応じる余裕はない。隙を見せないよう、シーナは小銃を構えたまま状況を観察する。

(どうする…………!)

 セーグネルのそばには通信士のセトが倒れていて、今セーグネルが彼のもとに駆け寄ったものの、セーグネルの向こうには先ほどシーナが射撃した敵がまだ健在であるために、セーグネルは敵を警戒したままセトを介抱できないでいる。

 舷側のほう──海上の空中にも複数の敵がいて、こちらに射撃をしかけてくる。

 二方面からの敵の攻勢──素早くあたりに目を走らせたシーナがはっとしてノベルに向かって叫んだ。 

「うしろだ!」


「っ!」

 後ろを振り向いたノベルは、先ほど『アマネ』から弾き出した少女の敵兵が、自分に向かって飛びかかってくるのに気づいた。

 いつの間にか体勢を立て直したベルニカは、空戦機動で空中を駆けながら猛烈なスピードでノベルに迫る。

──はやい!!

 敵のスピードは、さっきよりはるかに速い。

 ノベルのまえに躍り出たベルニカが彼に向かって刃を振り下ろす。

 キン!キン!キン!

 ベルニカのすばやい斬擊をノベルが受ける。

 しかし、

「──ぐっ!!」

 ベルニカは、細剣による攻撃のなかに、体術を織りまぜてきた。

 直線的な横蹴りがノベルの胴体を打つ。

 防弾装具を以てしても内臓を揺らす威力の蹴りだった。

 そして、ベルニカが脇のホルスターから、何かの銃器を抜き取って、体勢を崩しかけているノベルに向けた。

──長い銃身をもった大口径の自動拳銃だ。

 まずい──ノベルがそれを避ける間もなく、

──ガァン!!

 大型自動拳銃が火を吹いた。

「──っ!!」

 とっさに、刀の刃を横にして銃弾を弾こうとしたノベルであったが──

 パキィン!!

 ノベルの刀が、細かい断片を散らして二つに折られた。

 ビシッ!!

「ぐあっ!」

 ノベルの刀を砕いた銃弾は、ノベルの体を直撃した。

 衝撃を受けて、後ろに吹き飛ぶノベル。


「くそっ!!」

 味方の危機に、シーナが小銃を撃ちながら果敢にベルニカに挑んでいった。


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