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未定  作者: 悠木サキ
20/66

第20 生存本能の反撃

「ハートクレア准尉!」

 セーグネルに指示を仰ぎたかったカウルは当惑した。

 その場に放置されたカウルはセーグネルに呼び掛けるも、彼女は銃座の機銃で応戦を開始し、自分たちのことなど眼中にない。

(どうすれば──)

 セーグネルから「ここにいろ」と言われただけで、他に明確な指示もなく、シーナは眼下で気を失ったままだ。

「スレヴィアス上等兵!」

 とにかくシーナを起こさなければ、と彼の肩を叩きながらカウルはシーナに呼び掛ける。

 ブロロロロ。

 しかし、そんなカウルの声をかき消して、敵の戦闘機のプロペラ音が辺りを覆う。

「っ!?」

 上空を見上げたカウルの目に、『アマネ』の周囲をまるでたかるように旋回する無数の敵機の機影が映る。

(来る──!)

 『アマネ』の対空砲火、そしてセーグネルの機銃が敵機を打ち落とすべく火を吹いているが、敵を撃退できていない。

 バババババッ!

「わあっ!」

 すると、カウルの右手側──『アマネ』の艦首から、破裂音とともに火花が散った。敵の銃撃である。

 敵の機銃掃射の流れ弾が、そのまま右舷前方の海面に水柱の列を立て続けに上げる。

 その衝撃に驚き、身を伏せるカウル。握っていた小銃が放り出され甲板の上を滑る。


(し、死ぬ……)

 ばくばくと脈打つ心臓の音が耳元に聞こえる。

「ハア──ハア──」

 手足に力が入らないカウルは、甲板に四つん這いになりながら、乱れる呼吸を落ち着かせようと試みる。

(こ、『鼓動』を──)

 カウルは胴体の防弾装具(ぼうだんチョッキ)に両の手のひらをあて、目をぎゅっと瞑り自分の両手に意識を集中させた。

 ぱあ、とカウルの手のひらが光り、防弾装具にカウルの『心』がこもる。

 生存可能性を高めるには、自身の身に纏うものに出来る限り『心』を込めて、その『存在』を他のものより優位にさせておく──つまり防御力を上げておくしかない。

 次いでカウルは、頭に被る鉄帽(ヘルメット)や戦闘服に手を当てて、これらにも『心』を注入した。

 『鼓動』に習熟した者なら、体表全体から『心』を放出することが出来るのだが、まだ新兵で『鼓動』が未熟なカウルは、自分の手からしか『心』を放出できなかった。


「ハア……ハア……」

 なんとか精一杯、装備に『心』を込めたカウルであったが、

──ブウウン!

 右舷の上空から、敵戦闘機が機首をこちらに向けて降下してきた。

「っ──!」

 息を飲むカウル。

 敵機は狙いを定めたように、カウルたちをいる右舷に真っ直ぐ突っ込んでくる。

──逃げ……

 身を隠そうととっさに辺りを見たカウルであったが、掩体はすでに半壊し、その陰にはシーナがいる。

──このままでは、自分も、倒れたシーナもやられてしまう。

 バッ!

 生存本能か──とっさにカウルの手が甲板に転がっていた小銃に伸びた。

 小銃を掴んだカウルは銃把を握り、すでに小銃に挿入されていた弾倉に左手を当てる。

 カウルの手のひらから光が漏れ、弾薬に『心』が注入された。

 そしてカウルは、ガシャン!と小銃の槓桿(コッキングレバー)を引いて小銃を構えた。

 銃口にある照星に敵機の機影が重なる。

「──ぉおおおおおっ!!」

 無意識のうちに腹の底から発せられた雄叫びとともに、カウルは接近する敵戦闘機に向けて、小銃を連射した。

 


 

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