第16話 襲撃
攻撃開始の合図とともに、分隊の火器が敵機の群れに向けて火を吹いた。
──ダダダダダッ!
──ガン!ガン!ガン!
分隊の重機関銃が連続して銃声をあげ、またそのなかで、シーナの対装甲狙撃銃が断続的な発射音を響かせる。
排出された空薬莢が、金属音を立てて転がり、甲板上に散乱する。
「おおおっ!」
勇ましく掩体から身を出したシーナが、こちら目掛けて突入してくる敵戦闘機に、対装甲狙撃銃を撃ちかける。
──ガン!ガン!ガン!
弾薬を惜しまず、シーナはとにかく狙撃銃を撃ちまくる。
しかし、はるか遠方の敵の戦闘機群──編隊を組んで飛来する十二機の敵機に目立った変化はない。
──まだ距離が遠いため、発射した弾丸が命中していないのだ。
「ちっ!」シーナが舌を撃つ。
敵機との距離はまだ一キロはあるはずだ。
もっと敵が近ければ余裕で当てられるが、その距離では敵の機銃がすでに火を吹いているだろう。
──この遠距離で、やるしかない。
「弾ぁっ!!」
間もなく弾倉のなかのすべての弾薬を撃ち尽くしたシーナが、カウルに次の弾薬を要求する。
「はい!!」
カウルは用意していた次の弾倉を素早くシーナに渡し、シーナは手早く弾倉を交換する。
『アマネ』の対空火器も絶えず弾幕を張り、それに耐えかねた敵機が、一機、また一機と機首の向きを変え進路を『アマネ』から反らす。
しかし、まだ十機近いの敵戦闘機が『アマネ』への攻撃を敢行する。
(次の弾薬を──)
カウルは背嚢から新たな大型弾倉を取り出し、それに『心』を精一杯込める。
シーナは、掩体に隠れるカウルの横で射撃を続けている。
訓練のおかげか、あるいは今のシーナに余裕がないのか──とにかくカウルは、日頃の罵声を浴びることなく、遅滞せずに弾薬の補給をこなせていた。
(どうなってるんだ──)
しかし、状況が気になったカウルは、掩体から僅かに頭を出して、様子を覗き見た。
(あれが敵──)
向こうの上空に見える平らな形をした小さな影がいくつか見える。
──ブウウ……
敵の戦闘機のエンジンの唸りが、こちらまで届いてきた。
「くそがあっ!」
敵に狙撃銃を射かけるシーナが突然大声で怒鳴り、ビクッとカウルは驚いたカウルは反射的に彼のほうに顔を向ける。
──ガン!ガン!ガン!
狙撃銃を撃ちまくるシーナであったが、敵の戦闘機の編隊は依然として接近し続け、『アマネ』の右舷に迫る。
また、新たに一機が『アマネ』への攻撃を中止し、編隊から離脱する。
残る敵の編隊数機のうち、シーナの狙っていた敵戦闘機が、機首を引き上げ、回避運動に入った。被弾したか、危険を察知して『アマネ』への突入を断念しのだろう。
だがまだ他の戦闘機は残っていて、まっすぐこちらに突っ込んでくる。
「ちっ!」シーナは舌打ちした。
他の奴らは何してやがる!──敵を退けられないでいる味方に、心のなかで悪態をつきながら、すぐに他の戦闘機に狙いを変えたシーナであったが──
(間に合わない!)
「伏せろっ!」
危険を直感したシーナが、狙撃銃を構えながらいきなり叫んだ。
(えっ──)
驚いたカウルの見開かれた目端で、敵航空機の機首がキラリと輝いた。
次の瞬間、カウルたちの目の前──右舷正面の海面に連続して水柱が立った。
「!」
一瞬のうちに、水柱の列がカウルたちに迫る──
バババババッ!
鳴り響く銃声が、辺り一面を覆う。
「わあっ!」恐怖に耐えかねて、カウルの口から思わず叫びが上がるが、それも轟音にかき消され、その一瞬の後──
カウルのすぐ横で、積まれていた掩体の土嚢が吹き飛び、甲板を覆う木の板が#爆__は__#ぜ、あたりに火花が散った。
敵機の機銃掃射の一撃である。
直後、ブウンと音をたて、カウルたちの上空を敵戦闘機が飛び越えていった。
「げほっ!」
本能的に目を瞑り、身を丸めていたカウルが、辺りを覆う煙と塵にむせる。
──一体なにが……?
一瞬のうちの出来事とその衝撃に、呆然とするカウル。
爆発的な大音響のせいで、耳はキーンと鳴ってよく聞こえない。
辺りを見ると、それまで身を隠していた掩体の半分──カウルがいなかった側が、中から爆発したかのように形を失って崩れていた。
──なんだこれ……
今まで経験したことのない情景に、カウルは呆然とする。
(シ、シーナは──!!)
気がつくと、隣に立っていたはずのシーナの姿がない。カウルは慌てて辺りを見渡す。
周囲に漂っていた煙が晴れ、カウルの目に入ったのは、掩体のずっと後ろ──艦橋の壁際に倒れるシーナの姿であった。




