第14話 敵機襲来
対空戦闘の号令とともに、第二分隊の各員が敵航空戦力の迎撃のために備える。
敵航空戦力への主たる対抗手段は、あくまで艦載の対空兵器──艦の中央部に設置された十二・七センチ高角砲と、各所にある三連装ないし二連装の二十五ミリ機銃である。
対して、艦上守備隊の扱う火器は最大のもので、十二・三ミリ口径の重機関銃と、これと同じ弾薬を使っている対空迎撃要員の対装甲狙撃銃で、両者とも有効射程は一キロを超すが、高角砲や機銃には及ばない。
そのため、迎撃の順序としては、まずは威力と射程で勝る対空兵器が迎撃を行う。
その後、対空火器が撃ち漏らし、さらに接近した敵戦力を、艦上守備隊の火器で迎撃するのが手順となっていた。
バン!バン!バン!
『アマネ』の高角砲が砲撃を開始した。
砲弾が敵の航空機部隊に向けて飛来していく。
数秒後、遠くの上空で黒い煙がぼっ、と花開く。
砲弾についている信管が起動し、砲弾が炸裂したのだ。
だが、遠くに見える敵の航空機は、それより一瞬速く散開し、砲弾の炸裂から逃れていた。
(敵は雷撃機──?)
まだ点のようにしか見えない遠方の敵航空機部隊を睨みながらセーグネルは考える。
(──分かれた!)
散開したと見えた敵航空機部隊は、左右二手に分かれてそれぞれ群れを形成した。そのうち、右側の隊の敵機の数のほうがやや多い。
──近づいてくる……速い!
左手側の敵部隊より、右の航空機の群れの影が、次第に大きくなっていく。
(この速度──戦闘機か!?)
左右の敵航空部隊には、明らかに速度の差があった。
セーグネルが携帯式の双眼鏡を取り出し、敵機を覗く。
こちらに向けてぐんぐん近づいてくる敵航空機の機体の下には、魚雷や爆弾といった類いのものが何もついていない。
一方、左手側──まだこちらとは距離がある航空機群の機体には、機体の下部に何か長い影──おそらく魚雷が見える。こちらが、敵の雷撃隊だろう。
「敵の戦闘機が来るぞ!」
セーグネルが分隊員に警告する。
先行してくるのは戦闘機──爆弾も魚雷も搭載せず、代わりに敵の航空機を攻撃するための大口径機銃を装備する、速力や旋回性能に特化した機種──である。
おそらく、左手側の雷撃隊をここまで護衛してきたのだろう。そして、こちらの航空戦力による迎撃がないことを見て、手ぶらで帰るのではなく、機銃での攻撃を決定したと見える。
もちろん、機銃攻撃では艦は沈みはしない。だが、大口径の機銃掃射なら、甲板上の構造物や、とくに甲板にいる戦闘員を殺傷することは十分可能だ。
「迎撃する!撃ち方──用意!」
セーグネルは分隊に向けて叫んだ。




