第84話 唐突な招集(1)
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翌日。
俺はサーロンに呼ばれ、ロータス城の円卓の間にやってきた。
呼びに来たサーロンの後に続いて円卓の間に入ると、既に何人かが着座していた。
2位のクロチェティ・ノチス。
5位のメモリー・バフ。
7位か8位の、未だ名も知らぬ女性。
9位のリブ・ステイクス。
そして、国王のブルーノ・ロータス。
部屋に入ったサーロンと俺の姿を見るや否や、クロチェティのじじいは、その肥満気味――もとい膨よかな腹の上で腕を組み、不満そうに口を開いた。
「お前達はいつも来るのが遅い!」
「ガッハッハ! すまんな」
サーロンは朗らかに笑う。
しかし俺に至っては、さっき部屋に呼びに来たサーロンについて来たんだ。
俺への文句はよしていただきたいものである。
「悪いな! 急に呼び出して」
サーロンはそう言って、自分の席についた。
俺は若干むすっとしながら、先日の十位会談で座った席と同じ席に座る。
「今日呼び出したのは、他でもない。
――昨日、このロータスの城下町に現れた魔物達についてだ」
「……その前に、まだ全員集まってないんだけど」
当たり前のように話し始めるサーロンに対して、未だむくれ面を浮かべながらそう問いかける。
さっきのクロチェティは、さも俺らが遅刻したかのような口調だったが、実際にはまだ来ていない者達がいるのだ。
「ああ、すまない。マルヌにはまだ言ってなかったか。
3位のナナ。
4位のアレックス。
6位のラウダ。
――彼らについては依然、魔力濃度の高い『ガンリーモ山』、『ナリルピス岳』、『ドーシアチ山』を調査してもらっている」
「あれ? ナリルピス岳はクロチェティが行ったんじゃなかったっけ?」
サーロンの言葉に、ふと浮かんだ疑問を口にする俺。
――曰く、ガンリーモ山には、ナナが。
ナリルピス岳には、アレックスが。
ドーシアチ山には、ラウダが。
それぞれ向かったらしい。
しかし、俺が先日リブから聞いた話では、確かナリルピス岳に向かったのは、クロチェティだったはず。
アレックスでは無かったはずなのだ。
するとサーロンはバツが悪そうに「ああ、それは……」と呟き、クロチェティの方に視線を逸らす。
クロチェティはただでさえ不機嫌そうな眉間の皺をさらに深めて語り始めた。
「あのバカ、『俺が行く!』と言って癇癪を起こし始めたのだ!
いつものやつだ!」
そんな彼の言葉を受け、俺は昔を懐かしむように遠い目をしながらも、呆れてしまった。
「ああ……いつものやつね」
――それは決していい思い出ではない。
大斧使いのアレックス・ケイン――彼は自分の興味が向いたことに対して真っ直ぐな男だった。
それだけならば聞こえがいいが、端的に言えば自己中心的な性格だということである。
『お前は体が小さいんだからそんなに食わなくて大丈夫だ。
だからその肉は俺によこせ』
そういえば食事時、彼はそう言ってよく俺の分の肉を横取りしてきたっけ。
普通は逆じゃないか?
『お前は体が小さいんだから、俺の分までいっぱい食って、でかくなれよ』
とか言うところじゃないのか? と、幼いながら怒りに震えたものである。
俺が未だにこんなに小柄なのは、アレックスのせいだと言っても過言じゃない。
……過言か? いいや、違うね! 過言じゃないね!
そんなアレックスが『俺が行く』と言い出したんだ。
現実主義のクロチェティは、彼に何を言っても無駄だとすぐに悟った事だろう。
かくいう俺も、そんな彼らの様子が浮かび、すぐさま納得できた。
これ以上深く聞くまい。
「じゃあ……もう一人は?」
俺は残りの一人について訊ねた。
この場にいないのは、先日の十位会談で6位のラウダと同じく俺に嫌味をこぼした魔法使い風の女性――通称『嫌味女』だ。
尤もこれは、俺の中だけの通称だ。
彼女は紫のローブに紫のトンガリ帽子という、『ザ・魔女』と言わんばかりの風貌だったと記憶している。
ギルドランキングは7位か8位。
この場にいる、もう一方の未だ名も知らぬ女性とは正反対の見た目だと言える。
この場にいる方の女性は全身純白のローブに身を包み、いかにも『ザ・聖職者』という風貌。
この女性も順位が分からない。
だからこの二人の内、どちらかが7位で、どちらかが8位。
まあ、正直どっちでもいい。
「ああ。彼女については、これからの話の中で伝える。
とりあえず始めさせてくれるか?」
「わかった」
サーロンの言葉を受け、俺は頷く。
しかし、クロチェティは未だ不満そうにサーロンを睨んだ。
「まったく、この小僧にも先に伝えておけ!」
このじじいは、相変わらずの口うるささだな。
ただ、言っていることは間違っていないのだ。悔しいが。
「ガッハッハ! 全くもってその通り。すまなんだ!」
サーロンは全く気にしていないようで、先程と同じように朗らかに笑った。
うーん……少しは気にしような?
こうして、12年前の魔王討伐以来決して開かれることの無かった十位会談――その第二回目は、ありふれた休日に、欠員を出しつつも、唐突に開催されたのであった。




