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11悪役令嬢、少し光が見える

「お兄様の考える理由というものは何?」

「たぶん・・・魔力だと思う。」


お兄様の答えは私にとっては意外なものだった。


「魔力・・・ですか?」

「ああ。お前もよく知っていると思うけど、この国では魔力を持つ者か持たない者かと貴族か庶民かというものはほぼ同意義だ。なぜなら魔力は遺伝するから。はるか昔から力を求めた貴族たちが魔力を持つ者同士で子を作ってきた結果、貴族は魔力を持ち庶民は魔力を持たないという状況になった。」

「ええ、そうね。」


魔力は遺伝する、それは常識だ。魔力を持たない者同士の子が魔力を持って生まれる可能性はゼロに等しい。逆に魔力を持つ者同士の子が魔力を持たずに生まれてくることもないといわれているので、万が一そうであった場合は不貞を疑われるほどだ。

もちろん私もお兄様も魔力は持っている。


「特に僕とイヴは特殊だ。もともと魔力の保有量が多い家系のリンスレット公爵家とアヴァンス伯爵家の両方の血を引いているからな。僕たちは魔力の保有量だけでいえばこの国でかなり上位だ。」

「魔力は多いかもしれないけど・・・それって大切なことかしら?今までそんなに魔力を使うような機会もなかったし、得に感じたことは一度もないけれど。」

「まあ、たしかに・・・。僕も転生してから知ったけど、この国って生活魔法が発達してるから普段の生活で固有魔法って全然使わないよな。それこそ戦争みたいなものが起きない限りいらない気がする。」


私たちの生活には常に生活魔法と呼ばれるものがかかせない。簡単に火が付いたり、水が湧いたり、自動で灯りがともったりとあらゆる種類がある。それらは魔法道具と呼ばれる魔力をおびた魔石から作られた道具によってもたらされる魔法だ。最初から魔力が込められているため魔力を持たない者でも扱うことができる。この魔法道具は生活魔法だけでなく、軍人や騎士たちが所有する剣などにも活用されている。


「僕たちにとっては特に必要じゃないけど、王家にとっては大事な要素だ。年々王族の魔力保有量が減っているらしいし。」

「なるほど・・・。」

「あとは固有魔法。」


固有魔法とは魔力を持つ者が自らの魔力を使って生み出す魔法で、使える魔法は人によって異なるがこちらも魔力同様遺伝の要素が大きい。貴族の家系は代々受け継がれているその固有魔法を絶やさないために、受け継いだ子が生まれるまで子づくりをするくらいだ。まあ、よほどのことがないかぎり受け継がれるわけだが。


「リンスレット公爵家の防御魔法とアヴァンス伯爵家の氷魔法は希少価値高いからな。両方の固有魔法の遺伝子が欲しいんじゃないかな。」

「・・・それはおかしな話ね。私と結婚しても防御魔法も氷魔法もきっと受け継がれないわ。だって私がそのどちらも受け継いでいないんだから。」


お兄様の固有魔法はリンスレット公爵家特有の防御魔法だ。だけど私に発現したのはお父様ゆずりの防御魔法でもお母様ゆずりの氷魔法でもなく除去魔法だ。除去魔法は遺伝に関係なくどの血筋にも発現する可能性がある固有魔法で、特に希少性のあるものではない。自分が必要ないと判断したものを排除することができる魔法なのだが、あまり使いみちがなく、今のところ私が活躍するのは庭の除草作業のときくらいだろうか(庭師たちにはかなりありがたがられる)。


「隔世遺伝というものがあるからね。イヴの固有魔法は除去魔法だけど、イヴの遺伝子の中にはちゃんと防御魔法と氷魔法の情報も組み込まれているはずだ。それに除去魔法は遺伝しないからむしろイヴの子はきっと防御魔法か氷魔法・・・あとは相手の固有魔法を持って生まれるはずだよ。」

「そうなのね・・・知らなかったわ・・・。」


幼いころは自分だけ家族と仲間外れな気がしていて、もしかしたら両親と血がつながっていないのではないかと泣いたこともある。今となってはそんなことは思わないが、もし将来生まれた子が防御魔法か氷魔法ならやはり嬉しいと思う。自分は間違いなく家族だったのだと再認識できる気がして。


お兄様はとんっと指でテーブルをたたいた。


「・・・もしも王家がイヴを手放したくない理由が魔力の保有量と固有魔法の遺伝子なのだとしたら殿下とヒロインが出会うことで全部解決する。なにせヒロインは特異体質で僕たちよりも魔力の保有量が多いし彼女の固有魔法は誰よりも希少性の高い治癒魔法だから。」

「治癒魔法・・・!伝説の中の魔法じゃないの?使える方が実在するなんて・・・。」

「彼女はゲームのヒロインだからなんでもありなんだよ。国中を探したって彼女以外に治癒魔法が使える人はいない。王家は絶対に手に入れたいはずだ。彼女がいれば殿下がイヴと結婚するメリットはなくなるわけだし、さっさと婚約を破棄してくると思うよ。・・・なんだかイヴの価値が彼女より下だと思われるみたいで嫌だけど、この際仕方ない。」


お兄様は心底腹立たしそうだったが、私としては別に下に思われてもかまわない。それで私と家族の未来が守られるなら痛くも痒くもない。私の中で希望が見えた気がした。


「彼女はまさに殿下のお相手にぴったりね・・・!じゃあ、帰還式典で重要なのは殿下と彼女が出会うことと彼女が治癒魔法を使えることを殿下に知ってもらうということね!」

「そうなるね。彼女を招待する件は母上とおじいさまに任せて、僕たちはパーティーの中での作戦をたてよう。」

「はい、お兄様!」


こうして私たちは新たな作戦に動き出した。



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