おまけの後日談1 夏季休暇の前に緊急事態のようです。(後編)
駆け足気味ですみません…!余裕がある時に修正します。
キラキラと輝く天井では、豪華な細工が施された大きなシャンデリアが光りを放ち輝いている。
そして、この日の為に呼んでおいたのだろう演奏家達による、華やかだけれど会話の邪魔になる程には煩くない明るめの音楽が演奏されているハーシェル家のダンスホールで――…
「カレン・シュテナードと申します。ルルーシャ様、本日はお誕生日おめでとうございます。リリーシャ様には日頃から学園でとても良くして頂いており感謝しています。私は貴族ではありません。ですが、私はリリーシャ様が大好きなのです。リリーシャ様さえ宜しければ末永くお付き合いして頂けたらと思っています」
私は実の妹に挨拶をしている。まあ、今は身体は友達だから仕方ないんだけどね。
ちなみに。この挨拶はカレンが考えたもので、聞いた時には思わず『ふへへっ』と妙な声を放ち、ヴォルティス様に呆れた目を向けられつつも『良かったな、リリーシャ』と言われ、照れ笑いを浮かべてしまった。
私もカレンに――…
『ルル。カレンは、学園で出来た私の大切なお友達なの。ここだけの話よ? 他のご令嬢達と違って、カレンには嘘をついたり、見栄を張る事もしなくて良いから、一緒に居て楽しいし安らぐのよ』
…――と言ってね? と、言った時に。
『リ、リリーシャ様…! わ、私も! 私もリリーシャ様と居ると楽しいですし、お姉さんみたいで安心できるのです! う、嬉しい…』
そう言って貰い、先程述べた言葉をルルに言って欲しいと言われたのだった。
ちなみに。練習していた会話については、概ね同じ会話だった。ただ、義兄は最初に挨拶をしてからは、他の来客に挨拶に行ってしまった為、カレンとセルジュについては簡単な挨拶以外は名前だけ教えた…と言った感じだ。
「ありがとうございます、カレンさん。私の誕生日のお祝いの言葉も、姉様の事を大好きだと言って下さった事も。とても嬉しく思いますわ。宜しかったら、あまりお会いする機会はないかもしれないけど、私とも仲良くして下さいませ」
ルルは、ふわりと可愛らしい笑みを浮かべて返事を返してくれた。よ、良かったー!
「こ、こちらこそ! 宜しくお願いします」
思わず、どもってしまった。
そして、セルジュの方はと言えば。彼もルルに当たり障りなく挨拶を済ませた後。
「僕とカレンですか? ええ、少し前から交際しております。僕のカレンは幼少の頃から―――…」
何気に近くに居たのか。いつの間にか戻って来ていたらしい義兄とヴォルティス様と会話していたんだけど、何故そんな話になっている!? と言う感じの話をしていたけれどスルーしておいた。そっちは、男同士で会話しているのだし。とりあえず、セルジュが暴走しないよう…ヴォルティス様、任せた!
ルルの誕生パーティーも、もうそろそろお開きになる頃。
私達も次の日に学園の授業がある為、少し早めに家を出る事にした。父と母に挨拶をし、用意されていた馬車の前には、見送りに来てくれたルルと、義兄(今日は家に泊まり、明日の朝に学園に戻るらしい)がいるので二人にも挨拶をする。
「姉様、今日はありがとう! また、夏季休暇に帰省されるのを楽しみにしているわ! それから…」
そう言うとリリーシャ(念の為に言うとカレンね!)の耳元で、何かを告げて離れるとニッコリと悪戯っ子のような笑顔を浮かべていた。ルルよ、カレンに何を言ったんだ!? カレンがほんのり頬を赤らめているんだけど!
「え、ええ…」
小さく頷いたカレンは、私の方をチラッと見たかと思えば。恥ずかしそうに顔を逸らした。
「カレンさん」
「は、はい!」
おっと、今は私がカレンだったね!
「姉様の事、これからも宜しくお願いします。また、今度家に遊びにいらして下さいね」
ニコッと。今度は邪気の無い笑みを浮かべるルルに『はい』と。私も笑顔で頷いた。
「それでは、そろそろ出るか。リリーシャ、手を」
「は、はい。ありがとうございます」
ヴォルティス様がカレンの手を取り、カレンを馬車に乗せると。続いて彼が馬車に乗り込む。
「はい、カレンも。お手をどうぞ?」
「ありがとう、セルジュ」
私もセルジュの手を借りて馬車に乗り、それから、セルジュも馬車に乗り込んだ。
私の従者により扉が閉められて。ルルと義兄に手を振り(私とセルジュは会釈だけど)帰路に着いた。
学園に着いてから。カレンに耳打ちをして、私の従者を先に寮へと返して貰い、私達四人は学園のいつもの場所(裏庭ね)に来ていた。
「皆さん、今日はありがとうございました。本当に、助かりましたわ。そして、お疲れ様でした」
三人にペコリとお辞儀をし、お礼を言うと。それぞれから返事が帰ってくる。
ヴォルティス様は『まあ、無事に済んで良かったな。リリーシャも疲れただろう?』と、声を掛けて来て、カレンは『お役に立てたなら良かったです。お疲れ様でした、リリーシャ様!』と、ニコりと笑って答えてくれた。
セルジュは『貸し一つにしておきますね!』だってさ。確かに、お世話になったからね。何かあれば借りは返しますよー!
「なあ、リリーシャ。少し二人で話がしたいのだが良いか?」
そうヴォルティス様に言われ、カレンとセルジュを見ると、二人も頷いたので、ヴォルティス様と二人。カレンとセルジュから少し離れた場所に移った。
「この数日は忙しかったから、考えている暇もなかったが…早く、元に戻ると良いな。でないと、リリーシャ。俺様は、お前を抱き締める事も出来ないからな」
そんなのは辛すぎる。そう言い、眉を八の字にして悲しそう(に見えるんだけど!ヤバい。ヘタレな上にワンコ属性まで備える気か、この人!)な顔をするヴォルティス様に、無性に抱き着きたくなってしまった。
けれど、そんな簡単に今の私が彼に抱き着く訳には行かない。
「私も…ヴォルティス様に遠慮なく抱きつけないのは辛いですわ」
多分、今の私も彼同様に、しょんぼりとした顔をしていたのだろう。
「早く戻れるといいな」
「はい。早く戻りたいです」
ふと見上げた沢山の星が瞬く夜空で。一つ、星が流れて行くのが見えた。
…――そして、次の日。まさかの事態である。
「うそっ!?」
朝起きて、一言。恐らく、ほぼ同時刻にもう一人。今の私と同じ言葉を別室で発している子が居るだろう。
「も、戻ってる!!」
鏡を覗いてみたら、見慣れた自分の顔。あまりの嬉しさに私は寝間着を着たまま、部屋から出て行こうとした。向かう所はヴォルティス様の所。流石に侍女に止められたのは言うまでもない。むしろ、止めてくれてありがとう、だ。
いくら嬉しさにテンションが上がっていたとしても、後で別の意味でとんでもない事になるところだった!
きちんと身支度を整えて。今度こそ彼の部屋へと向かう。(きっと今頃、カレンもセルジュのところに向かっているんじゃないかな?)
コンコン! と叩く筈が、勢いがついてしまいドンドンドン!! と、荒々しいノックをしてしまって。警戒しながらドアを少し開ける彼の従者に謝り、私はヴォルティス様の部屋に通して貰った。
丁度、着替えを終えたのか学園の制服に身を包むヴォルティス様に――…
「ヴォルティス様っ! 私、戻りましたわっ!!」
「わっ!? リリーシャ、なのか?」
「はいっ! ですから、こんな事もできますわっ!!」
…――思いっきり。ギューッと抱き着いたのだった。
それしにしても。カレンと入れ替わってしまった原因は何だったのか…。それは、未だ不明のままだったりする。
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