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第1話 音と無

 人の命なんてものは息を軽く吹けば吹き飛んで消えてしまう、そんな弱く儚いものである。本当に僅かな判断の差であろうとそれは生死を分けることになる。誤れば死神はその鎌を容赦なく振り切る。あとほんの少し違えば命を落とさなかったのにと悔やまれる事件や事故、あるいは悲劇はこの世に何千何万とあるだろう。知っていた。そんなことは知っていたし、当然覚えていた。それにもかかわらず、今日愚かにも僕はそんな悲劇のうちの一つとなった。


 一瞬の出来事だった。捻れる。切れる。潰れる。裂ける。折れる。砕ける。何と形容すべきかわからない、限りなく多くの事象をこの身に受ける。何も聞こえない。何も見えない。何も判らない。唯、血の味を感じるだけ。頭も回らずじこのじょうきょうがり か い で   き    な    


 意識が途絶える瞬間、最期に唯一つだけ判った。



 僕は死ぬ。




 暗く、黒く、何も見えない。完全なる無。体には自分が死んだという感覚だけが残っている........体?何故だかはわからない。だがここに自分のものであろう体が存在している。触れられる。動かせる。なんなら呼吸だってできる....はたまた自分が現実を受け入れきれず、できていると勘違いしているだけか。これからどうなるのだろう、と考えながらぼーっとする。

「このままずっと何もないんだったらやだなぁ...」

 だったらせめて何かやろうと動き出してみる。歩く。歩く。果てはないように思えてもずっとまっすぐ歩く。本当に何もない。ただただ暗いだけ。何でこんな3億年ボタンの空間みたいな場所にいるのか。ただただ死んだってだけで......何で死んだんだっけ?色々思い出してみようとも何も出てこない。この空間に何もないだけではなく、自分の記憶も何も無くなっている。名前も。年齢も。生きていた時の住所も。自分の顔も。家族のことも。いたのかはわからないが友人のことも。なんかいなかった気もする。悲しい。性別はかろうじて体を確認すれば分かる。それは置いといて、じゃあ何で死んだって感覚はあったのか。わからないが本能的にそう感じたのかな、と結論づけた。まぁとにかく死んでいるのだろう。じゃないとこんな強烈に死を感じるようなことはないだろう。死後の強い念ってやつだ。多分使い方が違うけど。


 歩き始めてかなりの時間が経ったが、未だ何もない変な空間のままである。色々考え事をしていると、足元を気にしていなかったがためか足がもつれて、転ぶ。その瞬間、流れ込んでくる。捻れる。切れる。潰れる。裂ける。折れる。砕ける。何と形容すべきかわからない、限りなく多くの事象を、ありとあらゆる痛みを。

「なに.....これ......?」

 この空間には何もなかったはずだ。外傷も特にないように見える。苦しく息ができない。体の奥からありとあらゆる臓器が飛びだしてきそうな痛み。直感的に思った。この痛みを感じたことがあると。苦しい。苦しい。くるしい。くるシイ。

「あぁ、これで本当に終わりなのかな。」

 再び、意識は薄れる。



「......、またね」

 どこからか声が聞こえた。どこか懐かしいような聞き馴染みのある声。誰の声だかはわからない、忘れてしまった。優しく弱く小さな声だった。けどその声は自分の体に響き、意識を遠のかせる。

「うん......またね....」

 誰の声かもわかっちゃいない。また会うことがあるのかもわからない。けど返事をしたくなった。いやしなくちゃいけないと思った。自分が眠る最期の瞬間に僕は正体不明の声に返事をした。


どうも!初めまして。あんねーむです。まずは1話、読み切っていただきありがとうございます!これからも精進して定期的に投稿していこうと考えておりますので、よろしくお願いします!よければ感想等を残していただけるとありがたいです。次話も見てね!

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