も一つのエピローグ
(今は・・・今だけは・・・あの会社に恨みのメールを送り付けたい!)
とんでもない書類の山が乗った机に座りながら、セイルは頭を抱えていた。
あの戦争の後、名実ともに英雄として祭り上げられた彼は軍の再編成に駆り出されていた。
彼との婚約が決定した彼女たちも、それぞれできる分野で彼の手伝いをしている。
このあたりはいい。
帝国を併合することになり、それぞれの騎士団の編成や新規増員。
起動鎧も新しく作られるタイプがあったりで、新部隊の編制が急務だったりする。
先の戦いの後、決めることが色々とある。
あの時の的確な作戦立案などで、彼は作戦指揮官としても優秀だと思われているのだ。
最も・・・ゲーム内知識を含めてだった部分があったりする。
だが、今、彼はある事実を知って絶望していた。
(この世界、国が2つだけではなかっただけでなく、宇宙にまで広がってるなんて!作られることなく終わった続編まで完備してるなんて!この後の展開なんてわかるわけないだろうが!)
ゲームタイトル「スター・トルーパーズ」
確かに、第一作の発表時に「続編も作成予定、こうご期待!」という制作人のコメントがあった。
だが、ゲームは1作目でこけて続編は作られることがなかった。
元々このゲームは、惑星にある大国の一つが「宇宙からの侵略者がやってくる」と発表。
信憑性はそれほど高くなかったそうではあるが、ないわけではなかった。
それ故に、多くの国のトップが「我が国を主軸に一丸となって迎え撃とう」となった。バルガス帝国もその一つだ。
つまり、元々が「宇宙まで広がる物語」だった作品である。
それが1作品で終わり、続編が作られることがなかった。
だが、現実になったことによりその設定はこの世界では「すべて本当のこと」になった。
そして彼が知っているのは当然・・・1作品目だけのこと・
つまり「この後戦うことになる国や地形の情報」は何も持っていない。
(せめて・・・せめて、ノベルなりなんなりで続きの情報出しておいてくれ!)
そう思わずにはいられなかった。
「入りますよ、セイル」
そんな声とともに、部屋の扉が開きアーリアが入ってくる。
「書類整理は・・・そこそこと言ったところですか。やはり、こういう作業はあまり得意ではないようですね」
若干苦笑しながら、彼の隣にやってくる。
「まあ、ゆっくりでいいですよ。この書類は騎士たちの書類、これから作られる部隊用に能力で分けてくれるだけでいいですから」
「・・・すまない。ゆっくりでいいとはいえ、できるだけ早くやってみる」
「根を詰めないようにね」
そう言って、彼の頬にキスをして部屋から出ていこうとする。
そして扉まで来た時振り返り、笑顔で言った。
「そうそう。今晩はアスカが前線から一時帰国しますので・・・私と2人、お相手よろしくお願いしますね」
そう言って部屋をでていった。
昼間は仕事で忙しいが、夜は夜で忙しい。
何しろ自分は複数人娶っているし、貴族や王族の女性もいる。
王家入りや貴族の婿入りはしないが、それでも「世継ぎ」に関しては色々と言われている。
自分は「この国の英雄」なのだから。
「ハーレム生活を満喫したいだけだったんだけどな。英雄か・・・なれたらなれたで大変すぎるものだったんだ」
そんなことを考えながら書類整理を進めることにした。
大好きだったゲームの世界に転生しました。
そして、前世での願いがかない英雄となりました。
けれど・・・過酷な現実を知って絶望しております。
だが、どれだけ嘆いても現実が変わることはありません。
英雄セイルは、ゲーム内で得た知識と前世でやりこんだ他のシミュレーションゲームでの知識をフル動員してこれからの戦いに向かうのであった。
なお、当時の彼のその時書いたと思われる手紙があったそうだ。
一部の者には内容が理解できたそうだが、その者たちは詳しい内容を教えることはなかった。
「親愛なる同志へ
あの時みんなで話して盛り上がったことが懐かしいよ。
誰が英雄になるか、本当に何度も話をした。
けれどね・・・英雄になれたけど、ゲーム内知識だけじゃどうしようもない現実が待っていたよ。
この世界に生きる彼女たち、彼女たちから教えてもらえる知識を持って頑張っていこうと思う。
それでも思うよ。
同志たち、君たちの誰か一人でもそばにいてくれたらなと。
この苦労を分かち合いたいといういやがらせな思いもあるが、
それを分かり合えるとも思う。
だから、手伝ってほしい。
まあ、彼女たちは渡さないけど。
特に、リアルで何度もあった最も仲を深めた最高の同志。
ゲームセンターでの、異常な動体視力を忘れられないよ。
今どうしてるだろうな?
向こうで元気にしてるかな。
それならそれでいいんだが・・・
もしこの世界にいるなら、俺の手伝いしに来てくれ。
英雄 セイル・ルートヴィッヒ 改め 道永祐政より
「スター・トルーパーズ」でともに語り合った同志たち
そして
最高の同志 染谷大輔へ」
彼が、その「同志たち」や「最高の同志」と再会できたかどうかについては・・・一切の記録は残っていない。
ゲームがその後の続く壮大な作品になる予定だったのに、途中で続きが作られなくなった作品は何個か知っていたりします。中には、今でも続きを作ってほしいと思っている作品も。
そんな世界が現実になったことで、リアルで追体験することになった彼の行く末はどうなるのか。
※彼の今後を書く予定はありません。
これを持ちまして、この作品も完結とさせていただきます。
最後までお付き合い、ありがとうございました。




