第16話 王国防衛部隊
「・・・王都に帰還?」
突然よくわからない命令が来た。
ライムが命令書を受け取ってきて開いてみたらこれ。
「なんでしょうね?敵国に動きがないので訓練だけの日々ですが・・・それでも防衛任務のはずですから」
「うん。変」
ユフィもリースも不思議に思っている。
「なんでも、別の部隊が派遣されるそうですね。その代わりに我々含めた部隊は一時後退らしいです」
意味が全く分からん。
とりあえず命令は命令。
荷物まとめて帰還するのであった。
ただ気になったのは、帰還中にすれ違った王都からやってくる部隊だ。
数が多い。
前の基地襲撃でかなり多くの騎士を失ったにもかかわらずだ。
王都からあれだけ派遣されたら首都防衛部隊をどれだけ削ったのか。
と思いながら帰ってきて聞くと、首都防衛部隊は全くと言っていいほど派遣されていないとのこと。
よくわからないまま、俺達には一時待機が命じられた。
それから1週間ほどしたある日、前線から連絡が来た。
「敵国からの攻撃あり。新設防衛部隊の活躍により被害ほぼ無し」と。
その日、監視していた騎士が影を発見した。
「・・・うん?・・・あれはっ!」
次の瞬間、警報を鳴らす。
「敵襲!敵襲!バルガス帝国の部隊を発見!数多数!」
以前の攻撃で強気になってるのか、その影はゆっくりと歩んでくる。
報告を受けた隊長が見張り台にやってくる。
「きたか。・・・よし!新防衛部隊、展開!」
その命令を受けて、一緒にいた騎士が兵舎のほうに合図を送る。
すぐにあわただしく動く音が響き、しばらくして多数の起動鎧が出撃していく。
だが、その部隊は通常とは違っていた。
「指揮官!敵国の起動鎧が部隊展開をしております!」
バルガス帝国側、正面にいた騎士が指揮官に報告を上げる。
「ふん!どうせ雑魚騎士ばかりだろう。気にするまでもない。そのまま進軍!一気に踏みつぶしてやる!
砲撃隊は、射程圏内に入り次第各自攻撃開始!」
戦う前から勝利を確信している騎士。
しかし、その顔は展開している部隊が目視できるようになってくると怪訝な顔に変わった。
「・・・なんだ?正面の起動鎧・・・なんであんな巨大な盾をもっているんだ?あいつらの鎧は確かにわが国より力はあるから持てるだろうが」
横一直線に並んでいる起動鎧は、その全機が巨大な盾を構えていた。
そうしていると、後方の砲撃部隊が攻撃を開始し始めた。
一斉に撃たれる魔弾。とにかく数を撃っているだけなので命中率はそれほど高くはない。だが、それでもいくつかは敵起動鎧に命中している。
最も、その全部が構えられた盾によって防がれている。
何発かは防御に失敗して起動鎧に命中しているが、元々の防御力を貫けるほど威力がでていないようだった。
そうして進軍していると、次の動きがあった。
その盾部隊の後方に別の部隊が展開。そいつらは長身のライフルを構えていた。
次の瞬間、一斉に発射される魔弾。命中率や威力が・・・と思っていたら、すぐそばの起動鎧が頭部を撃ち抜かれた倒れた。
それを皮切りに、自軍に着弾した弾によって被害が拡大していった。
「まさか・・・くそ!わが軍の鎧の防御力を計算して、それに合わせて作られた長射程砲ということか!
だが、命中率はそれほど高くはない・・・全軍突撃!一気に距離を詰める!盾部隊に接敵すれば奴らも攻撃はできまい!」
その号令を受け、一斉に走り出す起動鎧。
その数の多さによって巻き起こる土埃も合わさって、射撃による被害は少なくなってきた。
それでも、初動で受けた被害が多かったこともあり数はどんどん減っていく。
そして、もうすぐ盾部隊に接敵できるという時・・・新たな動きが起こる。
盾部隊の一部が後方に下がったのである。
そして下がった場所より、剣を持った起動鎧と短銃を持った起動鎧が現れる。
次の瞬間起きるのは、短銃による攻撃。今度は連射性をあげたもので数だけはあるが、一撃で倒せなくなってきた。
その内、エネルギー切れで撃てなくなるが・・・すぐに予備の銃を取り出して撃ち始める。
結果、さらに部隊には被害が増えていった。
そして接近できても・・・剣をもった起動鎧部隊によって迎撃される。
バルガス帝国部隊は、接近した時に剣部隊に少し損傷を与えただけで壊滅したのであった。
「・・・というのが、顛末らしい」
ライムが聞いてきた話は以上であった。
「なにやら、私たちの部隊と少し似てる部分がありますね」
「うん。遠距離と中距離担当が分かれているくらいで」
ユフィの発言に、リースがうなずく。
「なるほどね。そういうことだったわけか・・・」
話を聞いて、以前の疑問が解消した。
「ダイス。何か気づいたことが?」
ライムの発言に頷く。
「ルリスさんとアーリアさんに会った日のこと覚えてるか?英雄殿のことを聞いたとき『今後のことを話したあと』って言ってた」
「英雄は、この部隊運用について何か話をしていたと?」
「その可能性が高いかなと」
けれど、みんなの反応はあまり納得のいったような感じではなかった。
「我々の部隊について話を聞いていたとしても・・・ならば、あの騎士たちはどこから用意されたの?」
ライムの発言に、俺も首を傾げた。
確かに、あの数をすぐに用意できるものではない。
なお、その数日後に部隊のことは発表された。
あの部隊はやはり、俺たちの部隊運用をベースに英雄が考えた戦術だったそうだ。
それよりさらに1部隊追加した。
理由は、その部隊員の9割が「学生騎士」だからである。
そう、俺たちと同じ年の学生騎士で編成された部隊。
きっかけは以前行われた適正試験。
あれで、一部の能力にだけ特化して好成績をだした騎士がほかにもいたのである。設定した基準値に満たなかったので不合格になっていたが。
だが、それでも「待ち構えての防衛」という一点での運用を考えるなら大丈夫と判断された。
もちろん、部隊には数名「正騎士」も加わっている。状況によっての指示を現場で出せる立場の者を用意している。
選抜された騎士は、もちろん能力に差はある。
ある程度埋めるために、成績の上位者と下位者を混ぜ合わせてそれぞれの部隊では「平均値」になるように設定した。
賭けの部分もあったが、バルガス帝国の起動鎧の脆弱さがさらに有利に働いたのもあった。
結果、初回戦闘は大勝という結果になったのであった。
1部隊の人数が多いので、訓練マシーンを使っては不可能。
なので、前線に配置されている騎士団をすぐに援護に行ける状態で待機させつつ実践訓練になった。
もちろん、参加者たちは事前にその辺りも告知されている。その上で参加をするかどうかは個人の判断にゆだねている。
騎士団側からは指示も強制も命令もしていない。
その上で誕生した、前線防衛部隊である。
その彼らの頑張りに報いるための、大規模作戦が計画されているとのこと。
それを行うために、俺達には首都にて休暇を与えられることになった。
休暇が終わる時、この戦争の雌雄を決める最終戦が始まると伝えられて。
今回登場の部隊は、元々は主人公たちの所属する部隊の運用方法になる予定でした。
だが、前章の合格者数を考えると「無茶すぎだろ」と思ったのでこの形になりました。
次回、インターミッション。




